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古本屋日誌
2021-04-09 12:21:00
編集工房ノアが年一回出している「海鳴り」の最新号、33号を入手しました。
90ページにも及び、さまざまなエッセイが掲載してあり、面白い。
山田稔はかつて同僚だった生田耕作の話を書いている。
生田は京大の仏文の大家で映画「恐怖の報酬」の原作やセリーヌの「世の果てへの旅」の翻訳で知られている。
その生田が1979年に出した「バイロス画集」が猥褻だとして神奈川県警に摘発された。
生田は「猥褻であるわけがない」と争う姿勢を示したが、職場の京大ではフランス語教室で山田も含めて会議が開かれて教室主任のSは「このまま有罪とでもなってしまうと退職に追い込まれるかもしれない。
そうなると退職金も出ない。ここは辞職することで手をうった方がいいだろう」と官僚的なことなかれの対応を生田に迫った。
生田は1980年春に退職に追い込まれた。
その後生田は鴨川の景観を守る住民運動に携わり、自らのコレクションのなかから、鴨川のかつての風景を描いた作品の展示会を自ら手がけ、やってきた山田には「こんなものこさえたんや」と「京都大学名誉教授 生田耕作」と記された名刺を渡してきた。
さらに1994年には古希記念と称して神戸の出版社から、限定150部の落款とシリアルナンバーの入った高額な画集を出版した。
生田はその直後ガンで亡くなってしまう。
山田はこういった内容のディテールを抑えた筆で淡々と描いていて心打たれる。
山田の感想やら解説やらは全く書いていないのだが、それがかえって生田の妄執を際立たせることになっていて「そういうやり切れなさはわからなくもない」とため息が出そうな感慨を抱くわけだ。
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