Welcome

古本屋日誌

2021-02-01 17:16:00

歌舞伎の「女殺油地獄」の放送がNHKで先日あった。片岡仁左衛門が与兵衛役を務めた2009年の歌舞伎座の舞台だ。

この作品は徳川時代のものとしては珍しい特徴があって、それは極めて分かりやすいことだ。

とんでもない人物である与兵衛に注目が集まる向きもあろうが、やはりなんといっても殺されるお吉の問題ある人物像が白眉だ。

今の世の中にもバカはたくさんいる。

仕事ができない、人のせいにする、努力しても続かない、失敗しても学べないなどいくらでも特徴を挙げられるが、それとは全く次元の違う元からダメで、殺人をも厭わない異常者の問題もある。

その問題を扱いつつも実はこの作品はその周りの人間を分かっていない連中にスポットをあてているのだ。

殺されるお吉は与兵衛が放蕩ののらくらもので親からも勘当されているのも承知していながら野崎参りの参道で呼び止めて世話を焼く。

与兵衛が侍に泥をひっかけて大騒動になった時も泥まみれの与兵衛を隠しどころに連れて行って泥をぬぐってやる。

与兵衛の二親もお吉に勝るとも劣らないバカ揃いで、家から追い出した与兵衛の身を案じてお吉に金をことづける。

こういう死んでしまうほど長らく人生を送ってもまるで人間がわかっていないおかしな連中ばかり出てくるのだ。

唯一お吉の夫はまともな人間で、いちいち与兵衛の世話を焼くお吉に「人の世話などせんでええ」とにべもない。これが普通だよなあ。



iPhoneから送信