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古本屋日誌
ちくま文庫から出ている三島由紀夫の「恋の都」は反米をモットーにする美人が出てくるケッタイな小説だ。1954年の刊行なので、戦争直後の世相が描いてある。
劇団を主催してアメリカ人との付き合いも多いまゆみは恋人の五郎が戦争中、愛国の右翼結社の構成員だったこともあって、日本の敗戦を悔しく思い、原爆を落として無辜の民を虐殺したアメリカを憎んでいた。
美人で魅力的なまゆみに言い寄ってくるアメリカ人は多かったが、まゆみはそのことごとくをなんとかなりそうと思わせておいて、最後に肘鉄を食らわせて振り、その時男が見せる何とも言えない苦悶に満ちた表情を見るのが生きがいになっていて、それがアメリカへの復讐でもあった。
五郎は敗戦の日、同士とともに切腹して果てたと思っていたが、実は密命を受けて上海に飛び生き残っていて、終戦後は得意の語学力を活かしてアメリカの施策の立案に携わるようになり、アメリカ国籍を取得していた。
9年ぶりに日本に舞い戻った五郎はまゆみに連絡して結婚を申し込むが、まゆみは以前の国粋主義者だった五郎のあまりの変貌ぶりにショックを受ける。五郎は「ずっと君を愛していた」といい、結婚してくれとプロポーズするのだが、さてまゆみの返事は………。
昭和も20年代、30年代ならアメリカに肉親を殺された人や酷い目に遭わされた人もたくさんいたから、経済はアメリカの庇護で潤って生活は楽になってはいるものの、割り切れない思いを持つ人が相当数いたことは間違いない。
三島由紀夫もそれを背景に話を作っているのだが、冷静に読んでみて三島が反米女のまゆみに感情移入して書いてるとは到底思えない。
むしろ滑稽な、周りから浮いてしまうような女として描いている。
でも三島由紀夫は1970年11月に自衛隊にクーデターを起こし、アメリカの召使であるのはやめろと叫んで自殺してしまったよなあ。
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