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古本屋日誌

2020-11-13 12:29:00

このところ野坂昭如は全然売れない。

以前は新潮文庫の「てろてろ」は人気があってすぐに売れたし、文春文庫の「文壇」の帯付きも欲しいというお客さんがかなりいた。

同じく文春文庫の「エロトピア」1、2は根強い人気があって「あれ探してんねんけど、ないねん、見つけたらゆうてや‼️」と頼んでくる人もいた。中公文庫の「1945夏神戸」も人気の作品だった。20世紀の末にでた3巻本の「野坂昭如リターンズ」はでた当初は「あれ全部揃えて送ってくれ‼️」というお客さんがいた。

野坂の扱ってる題材がエロに関するもので、また小説の文体がねちっこく、汗臭いものだからレオドラントで、除菌、自粛の今日に合わないからだろう。

でも「てろてろ」はエロスには暴力的な芽があることを哲学的に追求した作品だし、一読して全然エロではないよなあ。



男女のあれこれをつづったエッセイの「エロトピア」にしてからが壮大な思考実験で楽しく大笑いができるギャグでエロさはない。ラブホテルでの営みの話があるけど、「男がしゃかりきになるなんてどうなんだと思うよ、女の身体て見てみたらかなり奇妙な形だろう」と話を進めてベットに男が仰向けになって、天井から吊り下げられた女があれこれを致すてな話で、まあ男の方が手抜きをしたい場合の面白い手法が書いてある。

野坂は思考実験が好きで自伝的長編の中で戦時中、神戸の神社に住民が集まって「さあ‼️今日はお宮さんの神さんが出征されるぞ‼️神さん御自ら鬼畜米英を撃つわけや‼️ありがたいことやなあ‼️」と盛り上がったんだが、その直後B29の空襲で神社は全焼してしまう。

さて盛り上がっていた大衆は「神さんは沖縄でヤンキーとたたこうてはるんや、ちょっとお住まいが手薄になってもそりゃあしゃーないよなあ」となるのか「神さんゆうたかてこんなもんや」と目が覚めるのか、それとも「…………………」ひたすら沈黙を決め込み時流に流されていくのか興味深いですな。

野坂とは対照的に村田基の「フェミニズムの帝国」の方はえらい人気があって、とりわけ文庫本が欲しいというお客さんが多い。この本は以前は全く人気がなく俺がお客さんに「これ面白いですよ、ぜひ読んでくださいよ‼️」と勧めて読ませても「なんやこれは‼️女を襲う男の話を女に置き換えただけやないか、工夫が一個もないよなあ」と全否定されてがっかりした。

でも男がやるくらいの事はとうの昔に女もやってるわけでそれを赤裸々に描いたのは画期的だと思うけどなあ。




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