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古本屋日誌
2020-08-19 13:08:00
編集工房ノアからは山田稔の本がたくさん出ているが、2018年に出た「こないだ」は覆棺録みたいな著作で齢90になんなんとする著者の身の回りから消えてしまう友人の思い出をあれこれ綴っている。
なかでも同い年の福田紀一との細かいやりとりは心打たれる。
福田は「神武軍、大阪へ上陸す」などの奇想小説で知られた作家だ。
福田とはよく電話で友人の消息やどうでもいい話をしていた仲だったが、ある時から福田はパソコンにハマり山田が旧友のあれこれをやりとりしたいのに、福田の方はパソコンの新しい機種の話を延々とし続けるといった具合で、やりとりが山田には負担に感じられるようになった。
山田はこのチグハグなやりとりを(こちらが)「酒を飲みたいと思っているところにコカコーラをだされたみたい」とたとえていてなかなか面白いのだ。
それでも福田は電話を切るときには必ず山田の嫁のことを気にかけて「ほな奥さんによろしく」と付け加えるのを忘れなかった。
やがて福田との電話のやりとりは間遠になるのだが、代わりにハガキで近況を伝え合う。消費増税のためにハガキが50円から52円になる直前に山田は「これが最後の50円」てなのを出したところ折り返し福田は「大兄が2円の節約、小生も2円、あと1円でご縁で何が買えるだろうか」というハガキを送ってきた。
しかしまもなく福田は亡くなりご縁はこなかった。
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