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古本屋日誌
2020-06-09 14:41:00
川崎彰彦が編集工房ノアから出した「夜がらすの記」は人気の私小説だ。
1984年に出たすぐに増刷となったから当時から面白がられていたわけだ。
作者とおぼしき人物が京阪電車の牧野駅近くの学生下宿に住んで、定職には就かず文筆生活に勤む模様が描いてある私小説だ。
著者は40代で、結婚していたが数年前に「あなたは結婚に向いた人ではありません」と言われて手切れ金もなく離婚となった。
下宿で一月に一回しか風呂に入らない生活態度で冬場外出すると涙が止まらなくなる症状もかかえているが、それでいて自暴自棄にもなってないし、すさんだそぶりもない。
近所の主婦が芙蓉の花の名前を何度も間違って発音するのを耳にすると、「出ていって教えてやりたい衝動」にかられるし、会社紹介のパンフレットの校正を、貧の苦しさから止むを得ず引き受けるんだが、自分とは正反対の青雲の志を抱く若者へのやっかみなどはさほどない。
ないことはないんだがツッコミは健康的だ。東大出身と思える社員のコメントで「〜に互してやってまいりました」とあるのを見つけて快哉を叫び「伍して」としっかり訂正するぐらい。
まああれですね、大正時代の藤澤清造みたいな作家ですが、時代が平成なのでゆったりしているのかもしれない。
でも大抵の人間にはさしたる才能なんかないから、劣等感にさいなまれ、なんとか認められたい‼️と無理な努力に励むわけだ。
川崎にはそのような現代人的な苦しみはないようで、つげ義春みたいだなあ。
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