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古本屋日誌
寺町二条の三月書房がそのうちに閉店するという新聞記事が2月に出て、昨日お客さんのところに買い付けに行ったついでに寄ってみた。
少しずつ店休の日数を増やしていってさりげなく店を閉めるとの話だ。
いつもはほとんど客はいないのに、昨日は常に数人店で本を見ている人がいたから、売上もかなり増えているだろう。
ここは編集工房ノアの本がそれなりに揃っていて今回も川崎彰彦の本があった。
川崎は早大の出で五木寛之とも親交のあった作家だが、1970年あたりに北海道から大阪に引っ越しして来て面白い私小説をたくさん書いていた。
短編集「冬晴れ」には開催中の万博に無関心でいつも通りに続く日常が描いてある。
万博に殺到する人混みを尻目に会場に面する池に隣接したボロアパートに主人公は住んでいて、住民がゴミを遠慮会釈なく、屎尿も垂れ流している中、のんびりと釣竿を垂れてフナなどを釣り上げて、それをサカナに飲む。
相方には突然やってきて泊めてくれという長身のヒッピー風のアメリカ人、「万博には一回行ったが、もう行くかはしない」とたどたどしい日本語で言う。
この短編集にはガラス片が散乱する歩道橋をサンダル履きで会社に急いでいた主人公が強風の中、万博警備中の警官の職質に遭いえらい目にあう話も収めてある。まあ確かにリーマンがサンダル履きで歩道橋を歩いてたら笑うよなあ。
警官はカバンを開けてくれと頼むのだが、主人公は自分では頑として開けようとはしない。
「中をみたいんやったら、自分でチャックを引っ張って開けたらええやんか」とあくまで自分で開けることは拒む。激昂してカバンをポリに押し付けたら拍子にチャックが開いて強風に書類が宙を舞う展開となる。
警察に変にたてついてイライラしたり、長髪でヒッピー風のわざとこぎたないなりを選ぶとか、まあ今から考えたらバカバカしい。でもまあ70年代はそういう時代だったのだ。川崎彰彦の小説は時代の息吹は感じさせてはくれるが、では江湖に受け入れられるかといえばそれは難しい。
それはそうとして、この小説はラスト、大変なことになる。
川崎は心を込めて痛みを表現しようとして心打たれる。まるで内田百間の「王様の背中」のような読後感を抱く。
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