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古本屋日誌
集英社新書から三上智恵の「証言沖縄スパイ戦史」が出た。三上は沖縄に通いつめてこれまで知られていなかった「護郷隊」の実像を映像化した監督だ。三上が行ったインタビューを中心に構成されたのがこの本で700ページ以上ある大冊。
「護郷隊」は15才くらいの子どもを赤紙で召集して作られたスパイ部隊で、陸軍中野学校出身のその道のプロに率いられてスパイ、敵の補給基地の破壊、交戦、狙撃などを受け持っていた。
何といってもこの本の白眉は次から次へと繰り出されるインタビュー記事で90近いたくさんの元の隊員があれこれ当時の模様を話してくれる。
三上はよほど人たらしなんだろう。
沖縄戦のこれまでの回顧録では帝国陸軍の装備は貧弱だし、火器もアメリカのものと比べると性能も劣るし、何より補給も行き届いていないので銃砲弾がすぐに尽きてしまい、それこそ勝負にならないみたいな話が多かった。
しかしハラスの「沖縄シュガーローフの戦い」を見ればすぐわかることだが帝国陸軍の装備や弾薬もあるところにはあるもので、全くアメリカの物量に引けをとらない。
この三上の本でも多くの証言者が「アメリカーが上陸してこれはすぐに負けると思った、だって火炎放射器はあるし、機関銃もすごいし、こちらは数発撃ったらまた弾込めしないといけないし、手入れしないとすぐに銃身が赤くなってしまう」みたいなことを言う。
しかし三上のすごいところは「あれはあまり信用できない。だって戦争が終わってから自分がアメリカ兵を殺したというのは言いにくいし、言っても何の得にもならないからね」と冷静に分析できるところだ。
もちろん戦後の風潮に背を向けて正直に「俺は米兵を100人は狙撃して殺したよ。子どもだったからあやしまれないし、普通の格好して向こうの基地の様子を調べてまた帰ってきて隊長にその模様を報告してたよ」と話してくれる老人もいて三上もビックリしている。
しかし笑わしてくれるところもある。
地上戦では沖縄の無辜の大衆がたくさん犠牲になった。「戦争になると軍隊は住民を守らない、自分の保身で精一杯、住民を置き去りにして逃げてしまう」とのステレオタイプがある。
三上はたくさんの証言を集めてそれを実証していく。しかしある意味それは当然なんだと言う。
彼女がルポした「護郷隊」はスパイ部隊なわけで「ほんま助かりましたわ」「食べるもんもないんですわ、なんとかなりませんか?」と言って頼ってくる大衆を守ろうとしたらそれこそ米軍に所在を知られることになってしまうから、住民を切り捨てていくしかない。
そのリアリティを三上はしっかり描いて、ではどう考えれば良いのかとなって、さてどんな考察があるのかとグッと期待してしまう。
その答えは「それは戦争などしないことだ」
あんた、そりゃないでしょう、そんなことはわかりきっていることで、今現在の視点で断罪しても何の意味もない。
住民をかばおうとしたら「アフガン、たった一人の生還」みたいになってしまうこともある。だからといってソンミ村みたいな蛮行はありえない。そこでどうしたのかだろう。