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古本屋日誌

2020-02-10 11:04:00

編集工房ノアは中津にある老舗の文芸書の出版社でその歴史は1975年にさかのぼりすでに50年近い歴史を刻んでいる。

なんといっても美しい装丁の造本、グリーンの帯、推薦文、奥付の後にある目録、これは一つ一つ本の梗概が手短に記してあって興味をそそられる。

その出版社の代表、涸沢純平が関わりのあった詩人たちの最期を丹念に追想した本が出た。

たとえば港野喜代子の話、港野は新しく出した詩集を持って涸沢と一緒に在阪の新聞社を訪ね歩いてPRに努めた。死ぬ前日のことだ。

その時港野はぽつりと「こうして回ってもむなしいだけや」とつぶやいたという。

まああれですね、出版のPRなんだからむなしいことなんかないし、新聞社の文化欄担当記者が心に留めて記事にでもしてくれたらありがたいことは間違いない。

そんなことは港野にも十分わかっていながら、親しい涸沢にはふと弱気なことばをつぶやいた。後から考えたら「この世とはもうおさらばなんだよ〜〜」てな伏線だったのかもしれないわけだ。

司馬遼太郎は頼まれもしないのに港野へのレクイエムをしたためて、自ら朝日新聞社に電話をかけて「載せてもらいたい」と話をしたのだが朝日の記者は「できない」と答え、理由は「港野喜代子が無名で知られていないから」だったという。司馬は読売新聞に持ち込んでもちろん掲載された。