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古本屋日誌

2020-01-31 10:30:00

「週刊文春」の「この文庫を狙え」で坪内祐三はごく最近山崎三郎の「消えゆく横丁」を紹介していた。

高架下や狭いエリアに立ち並ぶ雑居ビルにある小さな店で膝付き合わして酒を飲む昭和の空間が失われていっているわけだが、往時の写真と更地やテナントビルに建て替わってしまった現状とを対比させる形で集めた本だ。

なんでもJRの神田から新橋駅間の高架は2020年の東京オリンピックを前に「耐震工事」の名目で立ち退きが進み、横丁情緒は一掃されたという。

そういえば坪内も東京オリンピックを奇貨としていらぬ改造が街並みに加えられることを危惧していた。64年のオリンピックの時も東京はその姿を一変させたが、今また同じことが起きているわけだ。

まああれですね、これはナオミ・クラインのいう「ショックドクトリン」の発動ですよねー。

大地震なら「また大津波が来て家が流されるかもしれないからこの地区は全部取り潰して新しいビルに建て替えましょう」てな感じで天災を利用して住んでいる人を体良く追い出して金儲けをたくらむ資本主義の常套手段のことです。

オリンピックも全く同じなんですね。「オリンピックを成功させるため」などと言って立ち退きを強要する、協力するのは当たり前だろうと言わんばかりの無礼な振る舞いは驚くばかり。

その上で著者は「若者は打ち合わせの後に酒を飲む習慣をもっていない」「以前は会社でも企画の打ち上げで先輩と遅くまで飲んで翌朝はみな二日酔いで出社していた。もちろん作業効率は低下してしまうのだが、高度成長期の上げ潮でそれが許されていた」と書く。

だから横丁の未来は明るくない、10年後はもうなくなってしまっているところが多いのではないかと悲観的な話になっている。

天神橋筋商店街、天五にある「天満酒蔵」は朝から酒が飲める横丁風の店で、店主が境川部屋の大阪後援会をやっているせいで春場所の時にはバイトで大勢の力士がせわしなくたち働く面白い店だ。

ある昼下がり先輩と商店街をぶらぶらしていたら、なぜか「天満酒蔵」は閉まっていて半分くらいシャッターが降りている。 

店主がシャッターから顔を突き出してきょろきょろしてるから「どないしました?珍しいね」と尋ねると「今日は休みなんやけどよかったら飲んでいくか?」と招き入れてもらいましたよ。

何でも休みの日も適当な馴染みの客は入れて飲ますんだそうだ。よっぽど仕事が好きなのか、大したものだ。