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古本屋日誌
雑誌「フリースタイル」に連載中の山上たつひこの「大阪弁の犬」は2017年に単行本化となっていて入手できた。
山上は「がきデカ」や「喜劇新思想大系」などで知られる天才漫画家なんだが1990年に引退してから小説やエッセイをよく書いている。
徳島の生まれだが幼い頃大阪に移り住んで貸本漫画の出版社の日の丸文庫の社員になり作家デビューをしたことはよく知られている。
この本では初めは旭区の大宮町に住んでいたことを知った。
家の前を小さな川が流れていたが、ドブ川で真っ黒な異臭のする水に発泡スチロールやらゴムまりやらが浮かび、徳島の清流を見て育った山上は世紀末的な無常観を植え付けられたようだ。
やがて日の丸文庫に就職するが住処は心斎橋の大丸とそごうの間の道を西に歩み阪神高速道路を超えたあたりで、勤務先の日の丸文庫のほん近くだったのだが、高速から排気ガスの異臭が漂い、これも山上にはこたえたようで、いつも40分かけて靱公園まで歩いて行き癒しを求めたという。
まああれですね、農本主義のような、自然回帰、ソローみたいな感性は高度成長期をまたいで生きてきた人にはありがちな感覚ですな。
山上は日の丸文庫の同僚編集者だった山松ゆうきちのことも書いているが、彼が背も低く、足も短く肥満なのに、クリクリした大きな目や太い眉毛が魅力的なのか、イケメンの自分を差し置いて女にモテていたと悔しそうに書いていて面白い。
また日の丸文庫が出していた「魔像」を振り返り辰巳ヨシヒロをその当時読んで評価できなかったことを悔やんでいるのだが、辰巳ヨシヒロて今読んで面白いでしょうかね?
「少年マガジン」に短編連作で描いていた「東京姨捨山」とかはまあありかも知れないけれど、現代的な価値は感じられない。
この辺が天才の面白いところでものを評価する基準が歪んでいる。山松ゆうきちなんか、どう考えても天才作家でしょう。貸本時代から「チャンピオン」を出版して、人物的にも魅力的なんだけど、山上たつひこには単に女にモテる変なやつでしかないとはね〜〜
山上たつひこはその後「チャンピオン」に「がきデカ」を連載して一躍時代の寵児に躍り出るのだが、鴨川つばめが始めた「マカロニほうれん荘」に衝撃を受けた。「こんなハイビートのギャグは俺には到底無理だ」とショックに打ちのめされ、絵柄も影響されてこまわりくんのみならず西条くんやジュンちゃんとかまでえらい頭でっかちの体型になってしまったという。
のみならず表紙に「がきデカ」が採用されなかったり、表紙の「がきデカ」の文字が小さかったり、4色刷が2色刷になったりした時、編集長を呼びつけてネチネチ文句を言いつづけたとあるから、天才でもわからないものだ。