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古本屋日誌
下田将美は長らく芦屋に住んで「東京と大阪」という文化比較論や煙草への愛を語るエッセイを書いた人です。
昭和15年に「銃後の大阪」に書いた「銃後市民と市政」でも東京と大阪そしてその他の地方での戦時体制への取り組みの違いを論じていて興味深い。
戦時体制ですから、単に中国大陸に兵隊を送るのではなく、働き手がいなくなった家族をどう支えていくのか、不幸にして英霊となり、残された家族のたつきはどうするのか、男手が減り工場にせよ、交通機関のせよその担い手が不足して生産活動に支障をきたす現実をどうするのかと問題は山積している。
これらへの取り組みは地方が大阪よりも「緊張している」「大阪よりも東京の緊張度が薄い」という。
あれですね、下田の面白いのはこういうちょっとドキッとするまとめ表現です。
つまりは防空演習一つとっても大都会は徹底していない、出征軍人の家族がどんな生活状態か大都会の住民はそれぞれ無関心だということを言っているわけです。下田の話によると地方は要するに田舎だから向こう三軒両隣との付き合いも濃密で誰それさんが出征していて、その家族は何人残されているとか皆知っている。ところが大阪や東京では隣は何をする人ぞの状態だから、いくら困っている人がいてもその情報が伝わってこない。
下田はそこで考え出されたのが「隣組」制度だとして上からではあるけれど住民の紐帯を生み出そうとしていると可能性を感じているようです。
まああれですね、下田の言っていることは的外れで隣組などで都会の緊張は回復されません。だいたい隣近所のややこしい関係なんか嫌だと思うのがわれわれなのに、誰がそんなものを復活させたいんでしょうかね?
それはそうとして下田によれば東京は地下鉄の建設工事では地下で工事を進めたのに、大阪は地上の道路を封鎖して地表から掘っていったために、商業活動を妨げること甚しかったが、結局出来上がった地下鉄は大阪の方が優れている。東京の市電は各駅停車しか運行されていないのに、大阪のは「急行」が導入されて止まらない駅がたくさんあって便利。東京では考えられもしないことだが、大阪ではいわゆるサマータイムや朝の通勤時間の混雑緩和を狙って企業の始業時間をそれぞれ変更する試みが考えられている。などという話はなかなか興味深い。