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古本屋日誌
今朝は典型的な冬空でどんよりと厚い雲が垂れ込め陽の光は差し込まず気温も低い。ただ例年に比べると風も強くはなく、気温もまだ高いのでしのぎやすいことは確かだ。
去年吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」が思わぬベストセラーとなり、漫画化もされこちらもヒットとなった。人生の局面局面で人として正しく行動したいと思うコペル君にまだ東大の学生風情ではあるが老成した感のあるおじさんがあれこれアドバイスするというものだ。ケンカやいじめで弱い子が迷惑を被っているのを見ても、何とかしてはやりたいが、その場に居合わせたら足がすくんで傍観者になってしまい、後で悔やむことはよくあるわけだがおじさんのアドバイスはかなり細かい。修羅場に臨んで行動できる子は日頃から少し乱暴な両親とか兄弟、近所の人たちに囲まれて生活しているから、ケンカやもめ事はそれこそ日常化していて、だから学校で似たようなケンカに遭遇してもサラリと対応できてしまうんだ。対してコペル君は恵まれた生活環境ゆえに日常にはもめ事やいざこざがないので、ケンカに直面しても慣れてないからとっさに対応できない。そこで日頃から想像力を働かせて、ケンカや刃傷沙汰にも対応できるトレーニングを積極的にしていかないといけないという。
まあ無理ですね。
こういう古いけど、真剣で真面目で人間性に全幅の信頼を置く作品は他にも下村湖人の「次郎物語」が有名です。次郎の親は結核で治療中なんだがその薬を主治医のところにもらいに行くのだが、薬局には春子という薬剤師がいて、かなり年上なんだが次郎はすっかり舞い上がってしまう。薬を取りに行っていつも春子と話し込み、母親の病状をわざと大げさに伝えて春子が「まあまあ、それは大変‼️」と同情してくれるのも嬉しい。春子には竜一という弟がいて、次郎のクラスメートなんだがこの竜一が姉と示し合わせて次郎をいたぶってくる。学校で次郎に「夏休みにな、姉ちゃんが東京に行くんや、親戚ができるんや」とか言い始めて次郎がもしやとザワザワっとすると「でもすぐに帰ってくるよ」と安心させるようなことを言う。「でもまたすぐに東京に行くんだよ」次郎も気になって最後の最後まで聞いて見ないと済まない気になっていていると竜一は「姉ちゃんは東京の人と結婚するんだから」とニヤニヤしながら言う、次郎は登っていた木の幹が急に折れて真っ逆さまに突き落とされるような気がしたとある。
春子もそうだが竜一も人が悪いな、次郎の好きな気持ちを十分分かった上でいたぶるんだからろくな死に方はしないだろう。ただしばらくすると次郎も春子のことは気にならなくなって行くと書いてあるから人間の心理の奥の襞にまで分け入ったいい小説ですな。
今年は「次郎物語」にはぜひともブレイクしてもらいたい。