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古本屋日誌
今日は昨日行けなかった、京都の丸善地下二階の古本市に出向いた。
ここは嵐山のロンドンブックス、一乗寺のマヨルカ、中京の待賢ブックセンターなんかが出店していて、文学書や美術書がたくさん並んでいる。
高橋たか子、河野多恵子の著作多数、『夢声自伝』の揃、山田稔、寺山修司、『岡本かの子全集』、井筒俊彦の著作集、畑中純の『どんぐりと山猫』、SL本、雑誌『国鉄時代』がたくさん。
その中に昭和53年から55年あたりの『きょーとにか』という情報誌の束があった。
月刊の、80ページくらいあるもので、京都市内各所のイベント情報に加えて、キャンディーズの伊藤蘭や映画監督の大森一樹、漫才師のオール阪神巨人のインタビューなんかも載っている冊子で面白かった。ビックリしたのは京都市内各区のモーニングサービスの内容と値段を一覧にしたものが載っていたことだ。
ひまな学生の調査によるものだが、およそ半世紀前でもモーニングは300円以上していた(コーヒとトーストだけでだ)こともわかるし、興味深い。
この当時は大阪の『プレイガイドジャーナル』が有名なんだが、京都には同じような雑誌『京都かわらばん』が出ていたのは知っていたが、さらに『きょーとにか』というのもあったのか‼️
こないだから大阪、京都、神戸、三都の古本市を回ったのだが、改めてブックオフチェーンの凄さを実感させられる。
文庫本のラインナップなど、他の追随を全く許さない一人勝ちの状態となっている。
古本市以外、店舗売りでも例えば大阪のトップはもちろん天牛書店だ。
その天牛ですら、店舗に並ぶ文庫はブックオフの競争相手ではなくなって久しい。
天牛書店は、仕入れた、価値の高い文庫本は店頭には並べず、自社サイトで販売していることも、その一因だ。
(他にも客から買い取る本のジャンルが限られているので、客が面倒だと判断して売らなかったり、出張買取に行く範囲が限られていたりするために本があまり仕入れられていないことも原因ではないかと思っている)
当然店頭の本にはビックリするようなものは無い。
しかし、ブックオフはそういうことはしていない。
全く見たこともないような本も並んでいることがある。(もちろん店舗売りでは動かないと判断して、ヤフオクに出品して捌いている店もあるけどね。)
京大の吉田寮の学生に寮の引き渡しを大学が求めた裁判の判決が、先日京都地裁であった。
基本的に寮生の主張が認められて、出て行かなくてよい、となったのは結構なことだ。俺は前に三条河原町で、吉田寮生が大衆にビラをまき、京大当局への批判を訴えるアジ演説をしているのに遭遇したことがある。
学生を裁判沙汰に巻き込んで追い出そうとするのは不当だとか、耐震対策はこぼたいでも出来るとか、自治寮は大切だとかの主張だ。それらの主張はもっともではあるが、大衆からしたらどうでもいいことだ。
築100年を超える住居にお住まいとはねえ、バカじゃないのか、テレビで見たけど、どの部屋もこぎたないよね、私は住みたくはない、寮費が月に2500円とはね、ちゃんと勉強せなあかんよ、自治寮てなんなんや❓そんなもんあんのか❓このあたりがごく普通の大衆の意見だ。
吉田寮生の主張なるものは、いかにも弱いし、そもそも普通の人の感覚から大いに乖離している。
でもその非常識な、訳のわからない、浮世離れした主張を堂々と三条河原町でスピーカーを使ってしゃべるのはよい。聞いていて楽しかったからな。
しかし月額2500円程度の家賃で学生を住まわせてやっているのは、きちんと勉強をして、世のため人のためになる人物になってもらいたいと考えているからだ。
そもそもこの大学は毎年毎年2500名を超える学生を入学させているが、大半は大した才能もなければ、努力を積み重ねられる資質も持ち合わせてはいない。
そのような連中に、さらに吉田寮といった居心地のいい空間を確保してやると、ドンドン堕落してしまう。
俺はかなり長い間、熊野寮に住んでいたが、御多分に洩れず、快適な環境に安住して、まともに勉強もせず日々を送っていた。
熊野寮の出身者では東大の安冨がいるが、まともな学問的業績はない。
また阪大の牟田和江も出身なんだが、当然ながら評価に値する人物ではない。
今日から大阪、神戸、京都の三都で同時に古本市開催。これはかなり珍しいことなのだ。
少し開催時期をずらして欲しいところだが、主催団体としては張り合うところもあるのだろう。
大阪は谷町四丁目の古書会館で、さほど規模が大きいとはいえず、それでも3万冊くらいはあるだろう。
神戸は三ノ宮駅前の阪急百貨店9階の催し物会場で、参加店も16あるからかなり規模は大きそうだ。それに百貨店開催だから所場代も高かろうから、いい本がたくさん並んでいるのではないかと思うのだ。
京都は丸善店舗の一角での開催で、一番規模も小さく、本も1万くらいだろう。しかも開催はロングランなので、初日にいい本が集中することはないのではなかろうか。
俺としては神戸が1番素晴らしい品揃えではないかと予想して、朝イチ神戸阪急に行くことにして、先輩にも助っ人に来てもらうことにした。
先輩は67になるのだが、中学受験の進学塾の日能研関西で長年社会の先生をしていた。
この塾では60を超えたら、仕事は全然変わらないにも拘らず、時間給は2割減、勤務時間も2割減にされてしまう。
先輩は腹を立てて、また後に続く人のためにとも考えて神戸地裁に異議申し立ての訴訟を起こしたが、負けてしまった
それはそれとして、神戸で1時間くらい本を見た。
サンコウはいつものようにたくさんの単行本を並べていて、その横には、おくだ書店が興味深い絶版文庫を持ってきていた。
また大阪のシアルという古本屋はこれもいつも通りたくさんの岩波文庫、中公文庫を持ってきている。
花森書林はいろんな漫画を出している。
それはそれとして、先輩とさんちかのKYKでトンカツを食べた。飲食店はどこも人手不足で、店員さんは大変そうだ。
阪神電車で梅田に出て、谷町線で古書会館にも出向いた。
真木書店がたくさんの100均の文庫本を出しているほか、ディックもきれいなSF文庫、横丁はいつも通り和本、シルヴァン書房は200円均一の新書、寸心堂はやはり海外の興味深い小説を、唯書房も興味深い現代教養文庫、新書を並べていた。
俺の趣味としては大阪の方がよかったな。わからんものだ。
1995年に東京堂出版から尾形界而の『古書無月譚』が出た。
この人は一冊しか書いてないんだが、初版版を専門に扱う古本屋の駆け引きを細かく記したフィクションだ。
取り上げられているのは立原道造の『萱草(わすれぐさ)に寄す』。
この初版本が東京の大市に出た。
大市というのは古本屋が特選本を持ち寄り、業者仲間内の競りで取引をするイベントのことなんだが、ここには免許を取得した古本屋しか参加できないので、どうしてもその本が欲しいお客さんは、懇意にしている古本屋に頼み込んで入札してもらうのだ。
相場としては400万くらいなんだそうで、頼まれた古本屋は頼んできた客に「400でいけますわ、出せますか❓」てなやりとりをして入札に臨むのだ。
小説の中では、元は神田に店を構えていた老舗の古本屋の4代目が出てきて、無茶な高額入札をして掻っ攫って行く展開となる。
そのへんのやりとりも面白くはあるのだが、俺が興味深かったのは、初版本を扱う古本屋の収支だ。
なんでも初版本専門のお店では、1日10時間店を開けて、仕事は10分程度で、30万くらいの本を1冊売るのだという。
後の9時間50分は予習、調べ物をしたり、キャバレーやソープランド、時にはハワイに遊びに行っているというのだ。
店主が言うには「20万以下の買い物する客はゴミだ、相手にしなくていい。だいたい文庫やアダルトとかあつこうてる(例によってこういうタイプの方は大阪出身となっているのだ)店は5流だ。そんなやっすい本売って、30万、1日に稼ごう思たら、腱鞘炎なってまうで」
この小説では5階建ての自社ビルを建てたことになっているのだから、大したものだ。
なるほど、古本屋の経営者に多いタイプはこういう人なんだよなあ。
つまり一山当てて大儲けしてやろうという思いを抱き続ける山師みたいな人たちだ。
ハヤカワ書房が去年「ハヤカワ新書」というレーベルを立ち上げ、新書本の刊行を始めた。
その巻頭を飾るのが塩崎省吾の『ソース焼きそばの謎』だ。
従来焼きそばは戦後、大阪で生まれたとされていたが、塩崎は資料を博捜して、昭和10年ごろの浅草にすでに焼きそばがあったことを突き止めた。
なんでも中華料理のパロディとして、出来たのか焼きそばなんだそうだ。
そうなのか。
でも東京の連中は1923年の関東大震災のどさくさに紛れて、たくさんの朝鮮人や中国人を殺しているよね。
大きな自然災害の時には、一時的に周囲の人との間に連帯感が生まれて、助け合うことも多いと聞いている。
それにもかかわらず、殺してしまうんだから、日頃から相当な差別意識があったのだろうよ。
そんなバカバカしい大衆の心の中に、シナ由来の文字通りの支那そばをゆがいて、新しい料理にしようという気持ちが生まれるのだろうか。