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古本屋日誌

2020-09-15 10:47:00

明治末年の「新人国記」に安治川の河口の景色を讃える話がある。

「両岸の人家の裏口、殊に二階の窓口、あるいは物干などに山炭の煙、海潮の飛沫、あるいは都市の塵埃など、あらゆる汚塵に黒みたるなかに、盆栽の草花、朝の光を帯ぶるを見るときは、言うべからざるの趣味あり。しかして併せて大阪の大都会たるを想望せしむるに足るものなくんばあらず。」

公害で薄汚れた中に咲く花は実に美しい、そういう都市美をもつところは大阪ぐらいやでという話だ。

小野十三郎の「大阪」とか百田宗治の「怒っている海」は真っ黒に汚れた埋立地からコンビナートの煙突が遠望される風景をたたえているけど、かなり前からその手の話はあったんだなあ。


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2020-09-14 16:30:00

古本業界の雄「ブックオフ」はこのところいい本をたくさん扱うようになっている。

以前もそれなりにいい本を持っていたが、我々市井の古本屋の方が問題なくレベルの高い本を持っていた。

しかしコロナ騒ぎを経てみなさんの足は小規模な古本屋よりも大きな店舗を構えるブックオフに向いている。

自分が探している本を見つけるのはネットの検索が断然便利なので、古本屋にわざわざ出向くのは暇つぶしとか、昔からの人間関係に引かれてということになる。

コロナのバカげた自粛騒動でそもそも出歩く機会が減少して、「行くならディスタンスの取れる大きなブックオフかな」となってしまった。
いい本をたくさん抱えている老人層はとりわけ縮み上がって今までは足を運ぶこともなかったブックオフに行くようになり、行ったら行ったで、なかなか面白い本もある。店が広いので時間つぶしにも好適だ。

「もうついでに要らん本もここで売ってまうか‼️」となってブックオフはこれまでにない良書を手にすることになっている。

ところが街の古本屋はもう一つ危機感がない。「コロナでな去年よかえらい売り上げ落ちてもうて給付金申請したらすぐに100万くれたわ」とか「コロナでなえらい通販が儲かってな」みたいな呑気な話をしている。

客が通販に流れていて、もう店舗に帰ってこないということはそもそも店舗を構える意味が失われたということだ。

客は嬉々として大規模なブックオフに行って本を買い、なおかつ本を売ってしまうわけだから、実は大変な地殻変動が生じていることになる。

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2020-09-13 20:55:00

さいとうたかおの「ゴルゴ13 」は依然として若々しい東郷がテロを続けていて面白い。

最新の「別冊ゴルゴ13 シリーズ209」には南米ボリビアの児童労働組合の話がある。
なんでもボリビアでは深刻な労働力不足や貧困ゆえ10歳以上の子どもの就労を法律で認めている。

7つに達したら就労させる事業所もあるくらいで、法律で10歳と縛りをかけたのは一定の意味があるようだが、そうなると児童といえ、立派な労働者だから労働組合を組織しているのだという。

漫画の方ではその17歳の指導者が高速道路建設反対運動からカリスマとなり国を混乱に陥れようとしているとの筋で、おさだまりの狙撃となってしまう。

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2020-09-12 21:03:00

明治末に出た「新人国記」には大阪の寄席の話がある。

なんでもひいきの噺家におひねりを遣わすとのことで「現金をそのまま高座に披露す」とある。

「見台の前、左右などに紙幣あるいは50銭銀貨などをあるいは、楊枝にはさんで突き立て、あるいは梨、柿の実などに挟んで突き立てるのを例とする」とある。

東京の寄席では楽屋に持っていくそうで大阪のように衆人環視の高座にこれ見よがしに飾ることはないのだそうだ。

なんかストリップ劇場とかゴゴーバー見たいな感じですね〜

著者の黒頭巾は「大阪は現金主義で下品」と主張するが、噺家は大阪タイプの方が嬉しいのではないのかな。

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2020-09-11 19:57:00

明治44年に敬文館から出た「新人国記」は徳川時代の「人国記」を襲うもので東京と大阪、京都を対比してあれこれ論じている大冊だ。
この中に「大阪は食い倒れでない」との主張がある。

その理由だが、大阪のうなぎや牡蠣は旨くない。大阪の人は刺身を食べない。生菓子もまずい。食事は量が多いだけだ。市内に「極めてツマラヌ菓子その他の飲食商を以って充満」しているので食い倒れと言っているだけだ。

著者は「黒頭巾」となっていて、主張からして東京の人だとはわかる。

理由として挙げている「大阪の食事はまずい」との主張はかなり珍しいものではなかろうか。谷崎潤一郎にしても小島政二郎にしても大阪の食への憧れを語っている。


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