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古本屋日誌
古本屋でもっとも肝要なのは、もちろん仕入れだ。
いい本があればとにかく手元におきたいものだ。
うちが扱う本はそんなに高価なものではないから、資金繰りに難儀するようなことは起こらない。
しかし古文書や作家の直筆ものなんかを扱う古本屋では事情は違う。
例えば来月開催の『四天王寺古本まつり』の目録には次のようなものが載っている。
明治45年から収集された高山植物の標本が100万、「東京名所寿語六」という錦絵が55万などとなっている。
こういうものは仕入れ値も張る。
いいものが突然現れて、なんとしても入手したいが手元に金がないということが起こってしまう。
ではどうするのかというと、もちろんサラ金などからカネを引っ張ることになる。
ところが値のはる品物はいつ売れるかわからないものだ。
何かの拍子に立て続けに高額商品が売れることもある。
しかし逆に待てど暮らせど一冊も売れないこともしばしばあるのだ。
もちろんサラ金は支払いなど待ってくれないから、当面金を用意しなければならない。
じゃあどうするのかといえば、古本市にどんどん参加するのだ。
例えば下鴨の古本祭り、谷町の古書会館での月いちの即売会などにどんどん出る。
もちろん高額なものは売れないから、適当な文庫本や単行本を持っていく。
サラ金には「あれや、今度の古本市でな、ようさん売れるよってな、おまはんらはな、会場まで金、回収に来たらよろしやん」てなことを言っておく。
ややこしい連中が古本市に連日やってきて金を奪い取っていくことになるのだが、これは心がタフでないと到底つとまらない。
先日亡くなった佐野眞一の代表作とされている『東電OL殺人事件』はブックオフを何軒か覗いてもないなあ。
赤い新潮文庫で、以前はよく見かけたのだがどうしたのだろうか。
売れないので店の方でつぶしに回したか、訃報を受けてみんなが買いに走ったのか、よくはわからない。