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古本屋日誌
買い物はそもそも楽しい。
このところ心斎橋や新京極のグラニフにしばしば出向いて、猫をモティーフにしたカーデガンやTシャツを買う。
7.8千円程度だし、嫁もこのブランドを気に入っているので二人で好きなものを選んで買うのは愉快だ。
また商売は古本屋なので、好きな本をいくらでも買うことができる。(といっても俺が気に入った本や、評価する本を売ってくださるお客様は少ない)
俺はすごくいいと思っているのにもかかわらず、古書価が安い本がある。その一つは杉浦幸雄の漫画だ。
代表作の『淑女の見本』は箱もついて1000円くらいで買えてしまう。
バカでどうしょうもない女の図鑑で、素晴らしい。
出てくる女どもは我欲にまみれていて、清々しいくらいで、鳥山明の『Dr.スランプ』のアラレちゃんの読後感とよく似ている。
『Dr.スランプ』が売れるなら、『淑女の見本』もヒットするはずなんだが、世間はバカばかりなのでそうはならない。
これは悔しい。
それにしても、長年仕事をしてお金を貯めていると、それをいつ、どう使うのか考えいなかったことに気がつく。
若い頃は給料も安いし、金も貯めないとと思うから、喫茶店に入らず、職場に置いてある、ただのインスタントコーヒーで済ませたり、三足500円の安い靴下をこうたりしていた。
でもそれは若かったからで、今はそれなりに収入もあるし、貯蓄もしているとなれば、例えば1000円以内の出費なら、300円であろうが、1000円であろうが何も変わらないことに気づいた。
このところ大人気の川瀬巴水の版画は初刷とかなら一枚20万くらいしているものがある。
俺は川瀬は好きではない。(どうだ‼️きれいだろう‼️そう思うだろう‼️)みたいな計算した人工物感が目につくからだ。
それよりは『浪花百景』の方がいいな。
これなら500万くらいで揃いの、いいコンディションのが手に入るだろう。
その程度の金額なら買えるだろうけど、さて、手に入れた後、今のおうちに並べても感心しないな。
狭すぎて並べきれないし、浮世絵はもっと薄暗い灯と障子や襖で囲まれたしっとりした空間に馴染むものだ。
そんな部屋はない。
またネコ様がおられるので、油断しているとバリバリと爪研ぎのグッズになさるやもしれない。
そう考えると、新しい大きな家が必要になるのだが、当然ながらそういう資力はない。
それにしても、おそらく世間の老人たちも、ある時点で「もうこれ以上稼いでも使われへんし、残したかてしゃあない、なんか好きなことにつこてまお」と決心する分岐点があるのだと思う。
子どもがいる人たちは、そいつらに財産を残してやろうと思うのかもしれないけど、それは子どもにとっては、完全な不労所得であって、褒められたことではないよな。
人間は人様のために、ひたいに汗して働いてお金を儲けるべきなのだから。