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古本屋日誌

2024-04-22 19:44:00

中公新書から先ごろ萬代悠の『三井大坂両替店』が出た。

 

徳川時代の大阪の両替商が、金を貸す時に、身元調査をどのようにやっていたかを詳細に調べたもので、さすがは碩学、大したものだ。

 

徳川時代でも担保の価値を厳格に査定していたのは当然なんだが、家屋についてもやはり、予想通り「新築」であるのか、「築浅」であるのか、手抜き工事はされていないか、堅牢さはどうか、などといった、今日と全く変わらない価値観で査定されていたというのが書いてある。

 

 

近世の大阪でも、伝統的な建築だとか、古い様式を残しているとかいうのは全然重んじられていない。

 

 

今日のスクラップ&ビルドの価値観が貫かれているということだ。

 

 

例の小泉八雲がエッセイで「大阪ほど、伝統を重んじる街は見たことがない。この後何百年経とうとも、今の街並みが変わるとは思えない」と書いていた。

 

 

俺はそれを読んで、(明治は遠くなりにけり、だよなあ。今の価値観とは逕庭大きいよなあ)と思っていたのだが、その感想は間違いだったのだ。