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2021 / 02 / 05
13:12

八木重吉 詩集「秋の瞳」より

「はらへたまつてゆく かなしみ」

 

かなしみは しづかに たまつてくる

しみじみと そして なみなみと

たまりたまつてくる わたしの かなしみは

ひそかに だが つよく 透きとほつて ゆく

 

こうして わたしは 痴人のごとく

さいげんもなく かなしみを たべてゐる

いづくへとても ゆくところもないゆえ

のこりなく かなしみは はらへたまつてゆく

 

不思議なリアリティーを感じて、昔から好きだった、

八木重吉の詩を思い出した。

この一年、感染拡大防止のために

コンサートとリハーサルが消えるたびに、

言いようのない「負」の気持ちが

身体にたまっていったようだ。

重いなあ・・・と思った時、

「はらへたまっていく かなしみ」

を、思い出した。

 

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「秋の瞳」にある

もうひとつの大好きな詩

これを読むと泣きたくなる。

 

「うつくしいもの」

 

わたしみづからのなかでもいい

わたしの外の せかいでも いい

どこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのか

それが 敵であつても かまわない

及びがたくても よい

ただ 在るといふことが 分りさへすれば、

ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ

 

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