日記
人間本来の関節の動き
気候もだんだん寒くなり、筋肉の収縮による不調を訴える方が増えてきているように思います。
もし寒さという条件が無かった場合、首や腰の筋肉が硬直する原因は主に姿勢にあることが多いですが、主に何処がどのように固まるか意識する方は少ないと感じます。
首後ろ、頭骨と頚骨の境目は本来、約90度後ろに曲げられる関節の筈ですがここが自由に動かせる人はあまりいません。上を見上げる習慣が現代人に無い為です。事務仕事など、前傾姿勢が多くて硬直していることが多いため、無理に後ろに反らせようとすると怪我の原因になるので危険です。必ず十分に準備運動をしてから後ろに反らせる動作を行ってください。
腰の後ろ、仙骨と腸骨の境目である仙腸関節は、そこを起点に足を90度後ろに反らせることが出来る関節です。これも、現代人ではバレリーナさんぐらいしかこの動作をやっている職業の人がいないのでほとんどの人が動かせなくなっています。
腕を横から真上に上げる動作は本来肩が耳につくものです。また、腕を前から後ろに引いた時、肩甲骨はその動きに合わせて背骨側に滑るように動く筈です。
股関節も、本来何も怪我がなければ90度真横迄簡単に開く筈です。
上記の例はいずれも、本来の人間の構造としては自由に動かせるようになっている箇所で、現代生活の中で使われることが無い為に動かなくなっていることが多い箇所です。ゆっくりとした動作で、限界位置で止めながら無意識下の警戒状態を解除していく事で少しずつでも動かせるようになりますので、お時間のある時に試してみて下さい。
四十肩、五十肩の対処法
当院へ見えられる方で肩回りに痛みや張りを訴える方は非常に多いです。外気が冷たくなる昨今は猶更その傾向が強いと感じます。
腋を開けながら腕を横側から頭上に上げようとすると、肩と水平な辺りで動きが止まる人が多いです。この時点で痛みを伴う方もいますが、もし痛みの刺激があまりにも強い場合は肩回りに何らかの怪我が潜んでいる可能性があるので、動かすような手技は中止して滾法や擦法などの刺激の少ない技に切り替えます。
この動作は、本来何も問題が無ければ肩が耳につく筈です。この位置で動きが止まるという事は、普段あまりにも腕を持ち上げる動作が少なすぎて、無意識にその動きを警戒しているからです。
肩上部にある三角筋の真下には、肩関節があり、その関節の隙間には関節包というクッションのような組織があります。普段はそこに十分な水分が供給され、腕の上げ下げによる負荷を和らげてくれる仕組みになっています。
例えばパソコン姿勢などが続き、腕を前方の一定位置で突き出したまま固定していると、その位置をキープするために三角筋が硬直し、この関節包を押しつぶしていってしまいます。そうなりますと、段々と補充されている水分が減っていきます。この水分が減りすぎますと関節間に負荷があった時にクッションの役目を果たせなくなりますので関節同士が接近しやすくなります。この事態を防ぐために、身体からは臨時で血管からカルシウムを充填させて関節を固めようとします。この結果、関節がカルシウムで固められて動かなくなったのが四十肩、或いは五十肩です。
カルシウムが多く供給され過ぎて物質的に固められ、まったく動かない状態になってしまいますと、これは外科的な手術に頼るほかなくなります。その前の、水分が不足しがちになって腕が上がりにくくなった段階までなら、整体の施術で緩和することが出来ます。
施術対象の方の真横から両掌で三角筋を挟み、腕から引き離すように持ち上げます。そのまま10秒ほど待って離す、また持ち上げる、という動作を何度か繰り返すと、三角筋の下側に血液をはじめとした水分の流れが出来、やがて三角筋そのものも柔らかくなっていきます。
この段階で最初の横から持ち上げる動作をしますと、最初は水平の位置で動きが止まりますが、止まった位置で10秒キープして腕を下ろして再度持ち上げる、という動作を数回繰り返す事で、肩が耳につく位置まで可動域を回復させることが出来るかと思います。
手足の冷えに
外気も寒くなってきましたが、この季節、手足の冷えを気にされる方はとても多いです。
寝るときの湯たんぽの使用や靴下を厚くするなど、温めるという対処方法が一般的ですが、自力で仕事中などの時にも場所を選ばずに経穴の刺激で対処できれば、手軽に対処出来て楽だと思います。
膝の内側、やや上側にある太陰脾系の有名な経穴である「血海」、肘のすぐ内側の少陰心経の経穴である「少海」、肘内側と腋の中間地点辺りにある同じく少陰心経の「青霊」などが、手足の冷えに効果的な経穴として知られています。
いずれも指圧すると激痛が走る場所です。
タオルなどの布を当てた上から、軽い力で軽快にさする事で数秒で手足の先まで温まってくるかと思います。
手足に血行を促して温まっているだけで、外気が暖かくなっているわけではないので実際には他の暖房手段も必要ですが、取り合えず手足が冷えてたまらないのですぐに何とかしたい、という時の一時的な対処方法として有効と考えます。
姿勢と吹き出物の関係
吹き出物といっても脂質の過多、毛穴の汚れ、アレルギー性のものなど原因は色々ありますので、一概に全部に効果があるとは言い切れませんが、もしその原因が姿勢にあるとすれば改善するのは割と容易です。
日常の前傾姿勢が原因で吹き出物が出る場合、お通じが悪くなっている可能性があります。
また、首を常に前に倒すために首横にある胸鎖乳突筋が張って血行を妨げていることも考えられます。
骨盤の上端、上前腸骨棘から親指第一関節分内側辺りに腸腰筋(腸骨筋と大腰筋の境目なので腸腰筋という名前がついています)があり、日ごろの前傾姿勢が続くことでこの周辺が硬直します。
腸腰筋の右側は大腸の上行結腸、左側は下降結腸があります。大腸の動きが上行も下行も圧迫されていればお通じが悪くなるのは当たり前です。特に左側の下降結腸はそのすぐ内側にS字結腸があり、直腸に繋がりますのでこの部分は特に筋肉がスムーズに動いている必要があります。
正確でなくても構いませんので、仰向けで軽くこの辺りに触れ、腿を鳩尾方面に上げ下げする事で、足の筋肉とお腹の筋肉が連動して動くようになります。姿勢から来る便秘はこれで改善する筈です。
また、首横の胸鎖乳突筋は頭の前傾姿勢が続くときか、冷やされたときに硬直します。
寝るときに首の後ろに丸めたタオルを挟んで顎を持ち上げるようにする事で前傾から来る硬直は緩和できます。
冷えで硬直する場合はお風呂などで良く温め、湯上りに冷えないようタオルなど、布一枚巻いて冷風を防いで下さい。
お通じ面、血行面に吹き出物の原因がある場合は上記のやり方である程度改善できるかと思います。
東洋医学の脾と脾臓(milz)
東洋医学における臓器の概念が生まれたのが紀元前という事もありますが、当然ながら現在の概念とは大きく異なります。
現代医学における脾臓はドイツ語のmilzを指し、リンパ球や血液の貯蔵、運搬を司る循環器として重要な役割があります。
ところが東洋医学においては脾臓は消化器に分類されています。消化された食べ物から気(エネルギー)を取り出して貯蔵し、他の臓器と連携しながら各器官に運搬する役割、とされます。
この差異に関して、ドイツ語から日本語に翻訳する際に誤った解釈を用いたから、とする説が有力ですが、そもそも片方は気の遠くなるほど大昔の知識なので差異がでて当然だと思います。正確な解剖学もなかった時代でもあります。
寧ろ、血の運搬と気(エネルギー)の運搬、役割として似たところを見つけ出した事は凄いことだと感じます。
この、東洋医学の概念における脾臓は、各器官に栄養素を運ぶ役割があるとされますので、ここが弱るとエネルギー不足になります。
片足で立ってみてうまく立てないときは送られてくるエネルギーが不足していることが考えられるため、脾臓が弱っているとみることが出来る、というのがこちらの脾臓の考え方です。
現代医学の方の脾臓も血液を運搬する力が弱れば筋肉がうまく動かず、片足で立てなくなるのは一緒です。
何となく元気がでない、声を出したくても大きな声が出ない、という時、東洋医学上は脾臓が弱っていることが考えられます。
経脈では太陰脾経にあたり、大腰筋や腸腰筋などの体幹系の筋肉のそばを通ります。
また、足では腿の内側、膝の内側、足の親指の内側までつながっています。
強い刺激だと激痛が走る箇所も多い為、太陰脾経は全体的に優しく擦るような手技が有効と考えます。