歩くための足の仕組み

 

  足の指の間には深横中足靭帯という、普段あまり聞き慣れない名前の靭帯があります。

 

足指の付け根を支える「中足骨(5)と、足指を構成する「趾骨(14)の間には「中足指節関節(MTP関節)という、一見目立たないものの上下に多少稼働する関節があります。この関節を横に繋げている靭帯が上記の「深横中足靭帯」です。いわゆる水掻き部分の付け根に当たります。割り箸を5本横に並べて、その間を繋ぐ留め具のようなものを想像するとわかりやすいかと思います。

 

  人の足は親指から小指までの骨の間に全てこの「深横中足靭帯」があるので、足指全てが前方を向きます。これは「歩く」という目的の為に前方を向くように進化しており、親指の骨がこの靭帯から先は趾骨2個分しか大きく稼働しません。この構造は前方に素早く歩いたり、咄嗟に方向転換をすることが得意ですが、物を掴む動きは苦手です。

 

  一方で猿の足は親指と人差し指の間にこの「深横中足靭帯」がないので、人の手と同じようにある程度自由に動きます。「木に掴まる」という動作の為に手と同じように動く必要があり、親指がこの靭帯の影響を受けない仕組みになっていますので、中足骨と趾骨2個の3つの骨で稼働しています。この構造の場合、掴むという動作は得意でも、自分の体重を素早く前方へ移動させ続けるという歩く動作には向きません。

 

  人の足が本来備えているこの歩く為の構造と機能は、使わないとそれを構成する筋肉が弱っていきます。特に事務職など長時間座りっぱなしの場合、足指を使わないまま位置を固定している事も多いかと思います。足指の機能が弱りますと、姿勢を真っ直ぐに保つ筋力が出し辛くなりますので、立ち上がった時に姿勢が前傾し易くなります。

  

姿勢を真っ直ぐに保ち続ける為に大切なのは、人本来の足の機能を保つ事であり、その為にはやはり歩く習慣をつける事が基本だと考えます。