手偏が付いた技を2つご紹介します

 

私は普段、相手の症状や状態を見ながら、解決する為の施術方法を考えて、組み立てていますが、

今回は視点を変えて、技の名称からどのような施術が出来るのか見ていきたいと思います。

 

見ていきたいのは「握」という字がついた2つの技です。整体、針灸、エステサロンなどの、癒しを生業としたどんな職種でも、

手を用いなければほとんどの「技」は使えません。

 

技という字そのものが手偏であることからもそれは解ります。

手を用いた動作の内、もっとも簡単なものが「握る」という動作です。

 

その単純な動作である「握る」を使った動詞に「把握」と「掌握」があります。

 

どちらも日本語では、本来の動詞的な意味合いから離れた意味で使われていますが、

ここでは大元の動詞の意味に立ち返って見ていきたいと思います。

 

   把握

 

「把」とは、(取手などを)しっかりとつかむ、という意味の漢字です。

 把という字そのものに取手という意味もあります。

 把握は、日本語では認識や理解の度合いを表す言葉として使われていますが、

元の動詞はこのような「しっかりとつかんで握る」という意味です。

 整体においても、把握は、このようにしっかりと握る技になります。

しっかりと、というのは強く握り絞めることではありません。

足首や腕をつかむイメージをするとわかりやすいですが、両手で施術箇所全体を覆いながら、

出来るだけ掌をぴったり対象の形状に合わせて、空気を挟まない真空状態をイメージしながら握っていきます。

この時、腕力はできるだけ抜きます。

 っかりと掌でつかめていれば、対象箇所がどれくらい通常よりも硬くなっているか、血液などの流れが滞っているか、

体温に異常は無いか、などが自然と手を通して伝わります。(これは、日本語の把握に近いですね。)

 また、皮膚下の筋肉までしっかりと捉えられていれば、腕力を使うことなく、わずかに方向を決めるだけで、

皮膚ごと動かせるようになります。

揉み返しなどの反動を起こすこと無く、施術箇所の力を抜いて、筋肉を解すことが出来るので非常に重宝する技です。

  

   掌握

 

日本語での掌握は、状況に対する支配度合いを表す言葉ですが、本来の動詞の意味は手の平で覆って、抑えること。

 背中などの広範囲を施術するときや、お腹などの柔らかい個所を施術する必要があるとき、

指圧のようなポイントの技では間に合わなかったり、または強く押すことが出来なかったりする場合が多いです。

 そんな時、手の平がうまく使えると非常に役に立ちます。

 1の「把握」に似ていますが、両の掌をぴったり対象に当てて、出来るだけ空気を抜いて、真空をイメージしながら掌全体で軽く押します。

コツとしては、出来るだけ力を抜きながら押すのがポイントです。

 背中や肩、お腹などが張っているとき、普段の姿勢や動作のクセなどが影響して、部分的に相手の力が抜けていないことがあります。

そう言った箇所は硬直していて、強く押そうとすると痛みを訴える方が多いです。

 その硬直している部分に、誤った力を入れ続けるように指令を出しているのは脳です。

上記のように、掌全体の平面で軽く押さえていると、まず最初に「触れられている」という信号が脳に送られます。

その刺激が警戒する必要があるものなのかどうか、確認する信号が逆に送られてきます。

 そのままじっと押さえていると、「警戒の必要なし」という信号と一緒に、脱力するような指令が来ます。

 大体、手で押さえ始めて30秒から1分ちょっとぐらいで、これらのやり取りが終わります。

 その後であれば、対象箇所の硬直が取れていますので、簡単に周辺組織を解すことが出来ます。

掌で握るから「掌握」ですが、文字通り「対象箇所を解す」という一連の流れを「掌握」する技です。

 

今回は「握る」をテーマに技をご紹介しましたが、これ以外にも「押す」「たたく」「転がす」「摩擦する」など、

手の動きだけで様々な技を作り出す事が出来ます。

整体院に行くとき、この辺を注意して見るのも、面白いかと思います。