見過ごされがちな胆の働き

 現代医学においては「胆」は胆汁を貯蔵して、必要な時に胃に送り、消化を助ける補助的な器官の一つ、という扱いです。

 東洋においては少し扱いが異なり、心、気持ち、やる気を司るとされています。

 

 胆汁が充分に送られる正常な働きをしている時、消化がスムーズに行われるのでストレスの原因になる様々な物質も除去されやすくなる。結果として心を助ける働きになる。現代の知識から分析すれば、恐らくこのような仕組みから説明されるかと思います。

 

 上記のような経緯がある事が、経絡の図において胆経は頭の側面全体という、神経図から見れば自律神経を司る場所とほぼ一致している、という面からも見て取れます。

 この胆経経絡の下半身部分は、臀部と大腿骨の境目辺り、梨状筋に沿った個所にある「環跳」を始め、腸脛靭帯の底面、脛の長脛骨筋の外面内側など、姿勢矯正療法の際に「腰痛」の治療に常用される箇所に広く分布していることが分かります。

 

 消化器官であり、精神や心に関連するはずの胆と、姿勢の負担がかかりやすい腰に繋がる筋肉や靭帯との間に一見して何の繋がりもないように見えますが、経絡図として配置されている以上、古代の人は恐らく手探りによる経験からこの繋がりを見出したのだと思います。

 胃の働きを支配しているのも自律神経なので、頭部側面の神経集合箇所とも関係していますので、ここから「心」の疲労と「腰痛」と「胆」を結び付けて考えを発展させていったのだと考えると面白いですね。