日記

2023-08-03 22:46:42

熱中症と百会穴

 まだまだ暑い日が続いており、熱中症に対する警戒は引き続き緩めることが出来ない状況です。

 

 経絡の概念上、太陽がもたらす「陽の気」は通常は天から地、頭から足元に流れますが、この季節は外気の熱により足から頭上に上昇し、頭頂部に集まります。

 頭頂部で陽の気が停滞し、下降していかない事で頭痛、めまい、不眠、高血圧などの所謂熱中症と共通する症状を引き起こすとされています。

 この頭頂部に設定されている有名な経穴が、「督脈」という脊椎や頚椎に沿って設定されている経絡の頂点にあります「百会」です。頭痛の特効穴として古来よりよく用いられる経穴ですが、熱中症の症状に対する簡単な予防、手当てとして利用することが出来ます。

 停滞する熱気を分散し、下降しやすくするために頭部にタオルなどの布をあて、その上から熱気を分散させるイメージで軽くさすります。併せて、頭部前面、髪の生え際近くにあります「神庭」辺りも巻き込んで大きく、軽くさする事で頭部の停滞を緩和することが出来るとされています。

 熱気を分散させる目的で行う施術ですので、この場合はさする技(瀉法)が有効であり、熱を集める押圧技(補法)は適さないと考えます。

 

 この時期、頭頂部を軽く押してみて圧痛感があったり、ゴリゴリとした不純物が溜まっているような感触がありましたら上記の方法を試してみて下さい。

 

2023-07-10 21:56:17

夏らしい暑い日が続きます

 暑い日が続いておりますが、皆様におかれましてはご健康にお過ごしでしょうか?

 

 暑くて寝づらいので、睡眠時間を削られて体力が低下するのは防ぎたいですので、エアコンや扇風機による温度調整はやむを得ない事ですが、冷やしすぎると今度は朝方手足が痛かったり全身が重だるかったりといった症状が起きやすくなります。

 また、室内で冷房に当たりながら仕事に集中していたりすると、ついつい水分摂取を怠ってしまい、頭痛が発生したり尿がやたらと濃くなってから気付くというケースも多くなります。

 

 毎年のことながら対処方法としては、軽い発汗(熱を放出する為なので、カロリーの消費などを狙って激しくやる必要は無し)、汗を放出する為に辛味のある食事をとる、水分摂取(失った汗の成分を補充する為なのでミネラル成分を含むもの)、暑すぎない程度のお風呂によく浸かる(身体の芯を温め、自律神経を整える為)、などの対処方法が推奨されています。

 

 手足のむくみに関して、簡単な方法ですがそれぞれの指先の爪を一つずつ左右から軽くつまみ、10秒ほど止めてみると末端から戻ってくる水分の流れが促せますので、浮腫みが多少軽減します。

 また、鼠径靭帯の外側の端辺りを軽く押さえながら、開脚する動きを軽く行うことで足全体の浮腫みを軽減することが出来ます。

 朝、寝起き前に手足が重い時に試してみて下さい。

2023-06-17 16:57:09

経絡上の膀胱とは

 先日、東洋医学における経絡としての「腎」と、現代解剖学の臓器としての「腎臓」の違いを書きましたが、腎と常に表裏一体のものとして扱われるのが「膀胱」であり、これも東洋医学と現代医学で解釈が割と近いものの一つです。

 紀元前から研究が始まっている経絡系の臓腑の認識が、科学が発達した現代の認識と一致する部分が多いのも考えてみればすごい話です。「脾臓」など、細部の認識は違う部分もありますが、化学物質の分析などなかった時代なのですからその辺は分からなくて当然です。現代の知識も補完しながら応用すれば、整体院の範囲であれば十分に役に立つと考えます。

 

 この「膀胱」ですが、腎で作った尿を蓄積して排出する、というシンプルな機能ながら、身体に蓄積した余剰な水分の出口として極めて重要な器官と認識されていました。

 膀胱経の経絡は「太陽」という陽の臓腑の中でも重要な役割を持つことを表す名前を冠していますが、背中側、背骨横の脊柱起立筋を挟んだ背骨側と外側の二本のラインが全て太陽膀胱経であり、足裏迄続いていることから経絡の中でも最大の範囲を持ちます。

 すべての余剰な水分の排出に関わる門である「膀胱」に、身体中の気血津液の流れを整えて排出しやすい状態を作っていくのが、経絡系整体の施術の基本概念であると言えます。

 

 膀胱炎やその症状の一つである頻尿など、尿に関わる症状を併せて古代では「淋」と呼んでいたとの事です。淋を引き起こす主原因をストレスと過度な疲労としていたようですが、これは現代でもそれほど変わらない原因ではないかと考えます。

 過度な湿気で「腎」が疲労しやすいこの時期、それと表裏一体にある「膀胱」の調子に気を配るのも大事だと思いますので、尿の状態をよく観察しながら気を付けてお過ごしください。

 

2023-06-04 20:01:54

例年より早いですが、梅雨入りかも知れないとの事

 梅雨の時期、手足の浮腫み、冷え、重怠い腰痛(神経に響くような鋭いものではない)などを訴える方が多くなるようです。

 

 東洋医学上は、この時期不調をもたらす主な原因として「湿邪」が「脾」を侵す為、としています。ただし、脾臓の解釈が現代と大きく異なるので、もっと共通部分が多くて解釈しやすい「腎」(経絡)および「腎臓」(臓器)に注目します。

 

 腎も腎臓も水の流れを司る、という大まかな面は一緒です。

 

・体内に溜まった老廃物を濾過した上で必要な物質は再利用するために吸収し、残った余分なものと余剰な水分を合わせて尿を作り、排出するための器官に送る。

・血液を作る指令を伝える為のホルモン物質を骨髄に送る。

・骨を形成する物質を作り出す。

この辺りが知られている腎臓の大きな働きです。

 

・生来のエネルギーを貯めているので、人の老化や生殖に関わる。

・恐怖という感情に関わる。

・髪のツヤや皮膚の黒ずみに関わる。

・耳の働きに関わる。

これらは、経絡上の「腎」の働きとして足されているものです。

 

 何となくでも、腎が弱れば必要なものを運んだり不要なものを除去したりする水分の流れが滞りやすくなる、というイメージで捉えれば良いと解釈しています。

 不純物が溜まって疲労感が大きくなる事で若々しさが発揮しづらくなり、不安感が大きくなったり、耳の周りや体の表面に不調として現れるのも何となく繋がりがイメージできます。

 

 湿気の多い梅雨時期、体内の余剰な水分も多くなり、その排出の為に腎臓も働きっぱなしになります。結果として、手足の先や負担の多い腰関節周辺まで老廃物の処理が追いつかなくなっているのがこの時期の浮腫み、腰痛の原因と考えます。

 

 個人でできる対処方法として、軽い運動や軽めのサウナ、岩盤浴などで発汗を促す事と、水分(この時期は夏場の熱中症対策のような塩分を意識したものでなくて可)をまめに摂取する事。生姜やニンニクなどの発汗作用を伴う薬味を多く取る事。なるべく手足を冷やさない事、などが挙げられます。

 また、腎の経絡は足の裏やくるぶし内側、ふくらはぎ内側などのつりやすい部分に配置されているものが多いです。強く刺激すると激痛を伴う事も多いので、なるべく布を隔てた上で摩ったり、足首を軽く動かすなど、血行を促す感覚で対処するのが適切だと考えます。

2023-06-01 18:31:04

筋紡錘と腱紡錘

 筋紡錘と腱紡錘。

 一般の人には聞きなれない言葉かと思いますが、骨格筋の隙間、或いは筋肉と腱の隙間にあって、筋肉が伸張したり腱が引っ張られるのを感じ取る為の受容器です。

 過剰に引っ張られた時に、そのことを察知して脳に信号として送り、筋肉を収縮させることで身体を怪我から守ろうとする有難い器官です。ただし、その働きは生真面目であり、時として過剰なほどです。

 

 例えば、デスクワークを長時間続けると、股関節を前側に曲げる状態が続きます。この時、大腿部後面や臀部の筋肉は反対側に引っ張られる状態が続きます。大腿骨骨頭周辺にある腱や筋肉の中にもこの筋紡錘と腱紡錘は存在しますので、自然界では有り得ない長時間大腿の筋肉が引っ張られるという状態が続きますと、余程の危険があるのではないかと脳に信号を送り続けます。結果、脳からは腰周辺の筋肉に安全のために収縮させる指令を出し続けることになります。

 これが、姿勢が原因の場合の「腰痛」の発生原因です。

 筋紡錘と腱紡錘という受容体にいかに緊張を感じさせないか、がこの場合の腰痛の発生を防ぐ方法になります。また、筋紡錘と腱紡錘が既に過剰に緊張しているのであれば、そこにかかる刺激を弱め、緊張を緩めれば腰痛の痛みも緩和できるかと思います。

 直ちに何かの治療に使える、という知識ではないかもしれませんが、この二つの受容器の存在を覚えておくのは面白いかと考えます。

 「筋紡錘」と「腱紡錘」。

 体育大学などの授業で出てくる言葉ですので、一般の人には耳慣れない言葉かと思います。

 東洋医学を学んだ人でも通常のマニュアルだけではあまり出てきません。

 

 いずれも、筋肉の中、或いは筋肉と腱の境目にあって筋肉の伸張や、筋肉が腱を引っ張る力を感じ取る為の受容器です。

 過度に身体に負荷がかかり、筋肉が伸ばされた時にそれを察知して身体の安全のために収縮させる信号を脳に送る、というのがその働きです。通常なら筋肉が過剰に引き延ばされて怪我をする事が無いように守ってくれる有難い存在なのですが、この二つとも過剰なほど働きが生真面目です。

 

 例えば、デスクワークで座り続けた時に、股関節は常に前側に曲げられていますので臀部や大腿後面の筋肉は反対側に常に引っ張られていることになります。その間、大腿骨骨頭にある腱と筋肉の隙間に存在するこの「腱紡錘」は、通常の自然界では有り得ない、ずっと大腿を引っ張り続けられる、という刺激を受け続けます。

 危険かもしれない、という信号を脳に送り続けるのですから、それを受けて脳は腰周辺の筋肉を収縮させて、この引っ張る力から身体を守ろうとします。それも長時間。

 これが、(姿勢が原因である場合の)「腰痛」の発生原因です。

 逆に言えば、この筋紡錘と腱紡錘の二つの受容器が受け取る刺激を緩めれば、危険を感知する事が少なくなる為、腰痛やこむらがえりなどの反応が起こりにくくなると言えます。また、過剰に反応しているこの受容器を落ち着かせ、緊張させる信号が発せられなくなればこの場合の腰痛は治まるという事です。

 

 直ちに何かに利用できる、という知識では無いかもしれませんが、このような受容器がある、という事を知っておくのは面白いと考えます。

 

 

 

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