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ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の電子申請システムについて Vol1
第16次ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金のオンライン申請について陥り易いミスについて記載します。
①
事業計画書その1,その2、その3のPDFファイル名には 最後部に 事業者名を記載しないといけません。
ちなみに誓約書や決算書なども同じく、PDFファイル名に事業者名を記載する必要があります。
オンライン申請する前に公募要領P29をよく読みましょう!!
②
オンライン申請に添付するのは、事業計画書その1,その2は合体して添付。事業計画書その3は単独での添付となります。
事業計画書は10ページ以内にまとめる必要があります。
少し冗長に書いたり、写真のレイアウトを間違うとすぐに10ページを超えてしまいます。
申請書内に定められた記載内容をもれなく、簡潔に記載するのはかなり大変です。
文章力はもちろんなのですが、ワードやエクセルを使いこなせないと申請書はまず無理です。
さて本題なのですが、貴重な10ページですので、その1,その2は8~9ページ、その3は2~1ページに記載した方がいいです。
その1,その2で9枚+@を使ってしまうとその3は書けなくなります。
無理したらその3は1ページで記載できますが、1ページをフルに使うことになりますので、できればその1,その2は8ページ、その3は2ページで書き上げるのがベターと思います。
事業再構築補助金とものづくり補助金はどちらが有利か
新型コロナの影響で事業再構築補助金に大きな予算が振られてきた関係で、申請するなら迷わず事業再構築補助金という方も多かったのではないかと思います。しかし、新型コロナが落ち着いてきたことから、これまでのビジネスの売上が急激に回復してきている方々も増えており、既存事業の生産プロセスの改善の為の設備投資やシステム開発を行いたい方も増えてきているようです。
事業再構築補助金の申請には事業再構築指針に従った取り組みが必要になりますが、事業再構築指針が以前のものから変更になっており、これまでのように顧客を変えずに単に製造方法や提供方法を変更しただけでは要件を満たさず、申請できなくなっている点にも注意が必要です。
事業再構築補助金とものづくり補助金の採択率の違い
補助金は競争があるため、事業計画を作成したうえで申請を行い、採択されなければ受給する事ができません。事業再構築補助金の第8回公募は、応募件数12,591件中6,456件の採択となりましたので、申請があった件数のうち何件採択されたかを示す採択率は51.27%となります。ものづくり補助金第13次締め切り(一般型)は、応募件数3,261件中1,903件の採択となりましたので、採択率は58.35%となります。採択率はものづくり補助金の方が高くなっています。
応募件数は予算や補助上限が大きく、世間から注目されている事業再構築補助金の方が多く、ものづくり補助金は申請件数が低調な状態が続いています。その影響もあり、最近は採択率が事業再構築補助金と比べて比較的高めに推移しており、いわゆる「穴場」になっている可能性が高い状態です。
ものづくり補助金が有利な場合
事業再構築補助金とものづくり補助金では、機械装置やシステム構築が補助対象になる点で似ていますが、事業再構築補助金より、ものづくり補助金で申請した方が、採択率が高いため有利な場合がありますので簡単にまとめてみました。
事業再構築補助金の特別枠が使えない場合で、常時使用する労働者数20名(商業・サービス業は5名)までで小規模事業者に該当する場合、ものづくり補助金では補助率が2/3に引き上げられるため有利です。
これまでとは違う市場での新規顧客開拓を行わない場合は、既に取引がある既存顧客に販売できるものづくり補助金の方がリスクも低く事業の成功確率が高くなります。
補助対象経費の金額が小さいか、常時使用する従業員数が小さいため事業再構築補助金の高い補助上限を使い切れない場合は、採択率が高いものづくり補助金の方が有利になることがあります。
事業再構築補助金で認められる建物の改修や、広告宣伝費などの支出予定がなく、機械装置やシステム開発のみの申請の場合、採択率が高いものづくり補助金の方が有利になることがあります。
事業再構築補助金で申請できる「事前着手の承認申請」が不要で、交付決定後に事業を開始する予定の場合、採択率が高めのものづくり補助金の方が有利になることがあります。
いかがでしたでしょうか。複数の補助金を活用できる方も多くいらっしゃいますので、しっかりと検討したうえで、自社の取り組みにぴったり合った有利な制度をご活用頂き、生産性向上や事業成長に繋げて頂ければと思います。
1 on 1の具体的な進め方を教えてください
1 on 1の具体的な進め方を教えてください。
前述しましたが、1 on 1では相手に7割話をさせることが理想です。特に関係構築の段階では、コミュニケーションの頻度と密度が重要です。月に1回1~2時間話すよりも、2週間に1回15分程度の頻度でコミュニケーションを取ることをおすすめします。
成功している中小企業では、リーダーや経営者が対話の時間を設けていることが多いです。例えば朝にコーヒーを飲みながら会話するだけの15分でも十分です。中には食事をしながら1 on 1を行うケースもあります。2週間に1回というスケジュールがどうしても難しい場合は、月に1回15分程度でもいいので実施しましょう。
1 on 1を実施する時間帯は各々の行いやすい時間帯でかまいません。ただし午後4時ごろになると左脳(論理的思考)が疲れてしまい、深く考えられなくなるため夕方などの遅い時間は避けましょう。
どうしても1 on 1を継続するための時間が作れない、という場合にはどうすべきでしょうか?
1 on 1の時間を捻出するためにおすすめなのが、社内会議や打ち合わせの見直しです。これらを効率化することで時間を節約し、1 on 1に割り当てられます。
中小企業の成功パターンとしては、会議時間を1時間から45分へ短縮する企業が多いです。余った15分を活かして、部下との1 on 1の時間を設けます。
1 on 1で話す内容はどのように決めたらよいのでしょうか?また、従業員に質問すべき項目があれば教えてください。
話す内容は状況に応じて聞きながら決めましょう。最初はやはり雑談から入るとスムーズです。定番なのは「天気」「時事ネタ(ニュース)」「飲食」「家族」に関する話です。
ただしその中でもネガティブな話題は避けましょう。 例えばスポーツ選手の金メダル獲得や気持ちの良い天気などのポジティブな話題を選び、新型コロナウイルス感染症の感染者数の増加や好きな野球チームが負けた話などの話題は出さないようにします。
また飲食に関する話題は、共通点を見つけやすいことがわかっています。例えば午後の1 on 1で「昼に近くにできた新しい店にオムライスを食べに行ったけど、とても美味しかった」と話すと、部下も食べ物について話すかもしれません。
なお家族の話題は相手と良好な関係が構築されてからにしましょう。よくある話題ではありますが「一般的な中小企業の従業員のうち24%が家族の話を避けたいと感じる」という統計があり、相手に不快感を与える可能性も高いことも事実です。
そして従業員に質問すべき項目についてですが、関係構築と行動支援の2つの段階それぞれにあった対応が必要です。
まず関係構築の段階では、部下との信頼関係を築くために仕事に関係ないことも含めて共通点を見つけるための質問をしましょう。内容としては、好きなビールやラーメンなどのような話題でかまいません。
一方、行動支援の段階では、2週間や1か月というような一定期間の行動の振り返りを行うことが重要になります。部下に対して「この前の○○、やってみてどうだった?」といった質問をしましょう。
このとき重要なのは、結果がうまくいかなかった場合でも、相手の行動を承認し、失敗ではなく学びがあったかどうかを尋ねることです。「どうだった?」「何がうまくいって、どんな学びがあった?」といった質問を通じ、一緒に振り返りを行います。
そして「次はこういうことを試してみようか」といった提案をしましょう。例えば「僕も経営者としてこういうことを実践してみるから、あなたも少し行動を変えてみてはどうか」といった具体的なアクション改善を次の1 on 1までに実施してもらうようにします。
1 on 1の効果を高めるための4つのポイント
1 on 1を実施する際に気を付けるべきことや効果を高めるためのポイントを教えてください。ポイントは4つあります。
1. 「よろしくお願いします」を使わない
1 on 1の開始フレーズとして「よろしくお願いします」と言っていませんか?実はこれは、最も避けるべき言葉なのです。理由は2つです。
まず1つ目は「よろしくお願いします」と上司が言うと、部下は対話ではなく面談や面接であると感じるためです。面談になると部下は言葉遣いに気を配り「ヘタなことは言えない……」と感じ、腹を割って話してくれなくなる可能性が高まります。特に上司が「よろしくお願いいたします」と敬語を使った場合、部下はますます話しにくくなるでしょう。
2つ目の理由として「よろしくお願いします」には引っかかる部分が多いのです。例えば上司から「よろしくお願いします」と言われると、部下は「何を頼まれているのだろう」「週報の内容について言及しなければならないのか?」などと考えてしまいます。
チームミーティングなどではもちろん問題ありませんが、1 on 1で「よろしくお願いします」を使うことは避けましょう。
2. 深くうなずく
話を聞く際に首を使ってきちんと「うなずく」ことは大変重要です。共感を作るのは目や鼻ではなく首の動きです。首でうなずくことで、同意と合意形成の意思を表示できます。また部下が話しているときにゆっくりうなずくことで、部下に安心感を与えることが可能です。
優れた経営者や上司がうなずくのは部下に同意するときだけではありません。部下が変なことを言っていてもうなずく傾向があるのです。これは意見を述べてくれたことに対して「ありがとう」と感謝を示しているのです。その意見を採用するかどうかとはまた別の問題です。
意見を出しやすい雰囲気を作るためには、部下の発言に対してしっかりとうなずくことが重要ということです。
3. 皆平等に行う
従業員の中には「自分に1 on 1は必要ありません」と言う方もいるかもしれません。しかし、実はそういう方に限って1 on 1を実施しないとへそを曲げたり、急に退職したりする可能性があります。
コミュニケーションの頻度を人によって差別するのは避けるべきです。年齢・経歴・役職に関係なく、すべての従業員に均等に接しましょう。特に関係構築の段階では、必ず1 on 1を実施するべきだと考えてください。
4. 部下に対して「私はあなたに興味があります」と伝える
これが一番のコツです。「自分に対して興味関心を持ってくれるかどうか」は、部下のモチベーションの源泉となります。
1 on 1を行う際、優秀な経営者は部下に感謝や労いを伝えることから始めるスタートする傾向があります。具体的な内容をあげて感謝することが、相手に伝わりやすい方法です。例えば「先週は残業が多くて大変だったけれど、ありがとう」「今日は忙しい中、15分取ってくれてありがとう」など、具体的な内容について感謝を伝えましょう。
さらに最も効果的に1 on 1をスタートしたい場合には、間接承認を利用することがおすすめです。具体的には、第三者を使って相手を褒めます。例えば「経理部の●●さんが、君のことを褒めていたよ」「お客さんが君に感謝していたよ」などと伝えれば、部下はテンションが上がるでしょう。名前を使われた第三者も嬉しいですし、部下が喜ぶようすを見る経営者も嬉しいので、だれもが幸せになります。
1 on 1に臨む前には、ぜひ間接承認のネタを準備しておきましょう。 1~2分でも構わないので、1 on 1を行う前に部下のことをよく考えてみてください。前回の対話や会話の中で印象的だったキーワードを思い出してみましょう。その中から相手の興味を引く言葉や、フィードバックを考えるだけで最初の一言が変わります。
これは4,000人の一般社員に匿名アンケートを実施した結果から得られた知見ですから、ぜひ参考にしてみてください。
業務でトラブルが発生しているさなかでも、1 on 1は予定通り実施するべきなのでしょうか。
トラブル対応が必要な場合は、それに集中することが最善です。必ずしも1 on 1を実施する必要はありません。重要なイベントが目前に迫っている場合も、そちらに優先順位を置きましょう。
経営者は皆さん忙しいため、例えば第2週と第4週の月曜日の午後3時半など、定期的なスケジュール設定しておくのはよいでしょう。ただし条件次第で、スキップや変更ができるルールを設けることも必要です。 このルールを最初の1 on 1の設定段階から明示しておきましょう。そうすることで、部下に気を遣わせることなく柔軟に対応できる環境を整えられます。
先ほどあったおすすめの雑談内容の他、1 on 1の場をほぐすのに有効な話題があれば教えてください。
好きなことの話は1 on 1の場をほぐし、経営者と部下の距離を縮めるのに大変有効です。ただ、経営者からいきなり好きなことを聞かれると部下は緊張してしまうかもしれません。そこで優れた経営者は「自己開示の返報性」という原理を活用します。
「自己開示の返報性」とは、自分が知りたい内容があるときにまずは自分のことから話す方法です。例えば「私は趣味でオートバイに乗るのが好きですが、あなたはモータースポーツなどの趣味はあるの?」「私は片付けが苦手なのですが、あなたはどうですか?」などといった具合です。
共通点が2つ以上ある人と関係を構築することは心理的安全性を確保しやすいということが、我々の調査によってわかっています。仕事以外の部分も含め、共通点をみつけるようにしましょう。
「よろしくお願いします」はNG?効果の高い1 on 1を行う方法 前編
近年1 on 1を導入する企業が増えています。従業員が少ない中小企業においては、経営者自身が実施するケースもあるでしょう。しかし1 on 1は適切な方法で実施しなければ、大きな効果は期待できません。
今回は『トップ5%リーダーの習慣』の著者であり、株式会社クロスリバーの代表取締役社長である越川 慎司さんに、経営者が従業員との1 on 1を効果的に進める方法などについてお話を伺いました。
目次
· 1 on 1はどうあるべき?理想は「部下の話す時間が7割」であること
· 1 on 1は経営者自らが実施するべき?効果的な1 on 1の進め方
1 on 1はどうあるべき?理想は「部下の話す時間が7割」であること
改めてになりますが、「1 on 1」とはどのような取り組みなのでしょうか?
「1 on 1」とは上司と部下が行う1対1の対話です。決められた議題に対して、徹底的にアクションを行うことによりミッションの成功や部下の成長を促すことを目的としています。
一般的には「1 on 1ミーティング」と呼ばれますが、実際に行うのは対話であるため、正確には「1 on 1トーク」という表現が近いでしょう。つまり1 on 1の定義は、上司と部下もしくはリーダーとメンバーが1対1で直接対話をすることです。
1 on 1には2つの段階があります。1段階目「関係構築」で、2段階目が「行動支援」です。
関係構築ではお互いに心を開いて話し合える関係を築くことが求められます。チームミーティングや会議ではなかなか実現できない1対1の対話によって、お互いの思いや考えを素直に伝えられるようになることが目標です。
関係構築ができたら、2段階目の「行動支援」に移ります。ここでは部下が主役となり、部下自身が積極的に話すようにすることが重要です。目安として、部下の話す時間が全体の7割を占めることを目指しましょう。
部下に話す機会を与えるコツは、質問ではなく発問させることです。上司が答えを知っていない状態で傾聴や共感の姿勢を取りながら、お互いに答えがわからない状況からの中で部下に考えさせることがポイントです。ティーチングではなく、部下自身の気付きを引き出すコーチングを行いましょう。
1 on 1は一方的に話す場ではなく、共感や共創のためのツールです。感情を共有し腹を割って話す場であるとともに、行動支援や共創を行う場でもあります。近年は経営者や上司、顧客が主導権を握る時代ではなくなってきたため、一緒に寄り添って共感し、一緒に解決策を見つけられるフラットな関係を築くようにしましょう。
1 on 1によって中小企業が得られるメリットを教えてください。
近年、特に中小企業は圧倒的に人手不足のため、言われたことだけをやる「待ち受け組織」ではなく自分たちで考えてやる「自立組織」を作ろうとする企業が多いです。1on1を行うことで心理的安全性が確保でき、自立組織を作りやすくなるというメリットがあります。
逆に1 on 1を実施しないことによるデメリットとして、下記5つがあげられます。
1.唐突な退職
まず優秀な人が「来月辞めます」と突然言ってくる「ビックリ退職」です。
2.メンタル疾患増加
近年、歴史上最も増えているといわれるうつ病などのメンタル疾患が増えます。
3.行動支援不足による部下の意欲減退
1 on 1を実施しない場合、部下の行動支援ができないため育成機会も減っていきます。
4.嫉妬や愚痴の増加
上司・部下で良好な関係性が築けないことにより、嫉妬や愚痴、メンバー同士の足の引っ張り合いなどにもつながるでしょう。
5.疑心暗鬼による離職率増加
1 on 1や対話が少ない場合、部下が良い評価をもらっていても「なんでこんなに良い評価なんですか?」と疑心暗鬼になり、離職率が上がるケースも散見されます。
自立組織を作るためには心理的安全性の確保が必要、ということですね。では、心理的安全性が確保できている場合とそうでない場合では具体的にどのような違いが出てくるのでしょうか?
目標の達成率や離職率に大きな違いが出ます。
例えば先ほどお話しした関係構築段階において、心理的安全性が取れているチームを「チームA」としましょう。チームAでは上司と部下が2週間に一度、1 on 1を行っています。そんなチームAは会議が少なくて研修時間が多く、結果的に目標達成もしやすい状態になります。
一方1 on 1や対話を行わない「チームB」は、資料作成の時間が仕事の大半を占めたり、精神疾患を患う人が多くなったりしています。離職率もチームAと比較してかなり高いことがわかります。
このような調査結果から、人手不足の解消につながる自立組織を作るためには心理的安全性を確保する必要があるといえます。そしてその心理的安全性を確保するのに、大いに役立つのが1 on 1なのです。
正しい方法で1 on 1を継続的に行うと、現場から経営者に対して「今ちょっといいですか?」という声かけが増えるようになります。これは調査でわかったことですが「今ちょっといいですか?」という声かけは事業開発の機会につながります。廊下や会議室の前でこのような声かけが頻繁に起きる企業では、新商品の開発などもうまくいっている傾向があるのです。
人材定着率を上げるには? 今日からできる経営者がすべき3つの対策
人材にまつわる課題は、業界を問わず多くの企業が直面していることと思います。特に、せっかく採用してもすぐに離職してしまうなどの事象に頭を抱える経営者も多いのではないでしょうか。
目次
人材定着率の低さが、会社の成長を妨げる
直近の日本における人材定着率について教えてください。
厚生労働省の雇用動向調査結果によると、近年における日本企業の離職率は約13〜15%、逆に言えば定着率は約85~87%です。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、離職率は低めの傾向が見られました。とはいえ、中小企業では1人の退職だけでも大きな影響があります。企業の安定と成長、従業員の安心のためには、定着率を上げる施策が必要です。
例えば、今年の4月に10人が入社して、翌年3月までに2人が退職している場合、計算式は「(10-2)÷10×100」となり、定着率は80%、離職率は20%と割り出すことができます。
人材の定着率が高いと、どのようなメリットがあるのでしょうか。
人材の定着率が高いことによるメリットは、採用コスト・教育コストが削減できることです。両者のコストを回収するためには、少なくとも従業員に3年間は就業してもらう必要があります。また中小企業では特に、退職者が多いと残っている従業員の不安感につながってしまうのです。定着率を高めることで従業員は安心でき、仕事へのモチベーションも維持できるようになるでしょう。
一方で、定着率が低いことのデメリットは、メリットの正反対です。離職率が高いと採用コスト・教育コストが余計に掛かりますし、従業員が不安を感じることも多くなります。それ以外にも、定着率が低い企業では、優秀な人材がすぐに辞める一方で、あまり優秀ではない人材が残る傾向にあるのです。優秀な人材が定着しないと会社の成長が鈍化します。これは非常に深刻な問題です。アクセルを踏める人材が不足することで、新しい事業などに取り組むことも難しくなるでしょう。
定着率を上げるために経営者がやるべき3つのこと
人材定着率を上げるためには、何をすべきなのでしょうか。
大きく分けて、対応すべきことは「社内コミュニケーションの活性化」「評価制度の見直し」「キャリアパスの明確化」の3つがあります。順番に解説していきましょう。
社内コミュニケーションの活性化
コミュニケーションを適切に取れていない会社では、従業員がパフォーマンスを発揮しにくくなったり、人間関係が悪くなったりするケースがあります。その結果、定着率の低下につながってしまいます。そのため、上司との1 on 1やグループでのミーティングなど、1対1と1対多の両方でコミュニケーションを取れる、雑談ではないオフィシャルな場を準備することが重要です。最初は1日に5分だけでもよいので、積極的にコミュニケーションが取れる機会を作るようにしましょう。
評価制度の見直し
仕事の成果がしっかりと評価につながる仕組みを整えることは、従業員と会社が共に成長できる健全な企業体質の土台となり、従業員の定着率アップにもつながります。人事評価は本来、給与や賞与を決めるためのツールではなく、従業員の成長を促すためのツールです。そのため、業績評価と能力評価という2つの評価を実施する必要があります。
業績評価では、目標を数値で設定することが望ましいものの、無理に定量化する必要はありません。例えば、営業職では売上などの数値を目標にしやすい一方で、事務職などでは成果を数値にしにくくなります。後者の場合、新システムの導入や業務マニュアルの作成、後任への引き継ぎ完了など、成果が可視化できる目標を設定するとよいでしょう。もちろん、業務を何%効率化する、ペーパーレス化するといった目標があれば、数値化してもかまいません。一方の能力評価では、業務のプロセスを評価する必要があります。業績目標の結果を鑑みたうえで、ドライに判断するという社内風土を作らなくてはいけません。
目標設定を行う際は、基本的に上から与えるのではなく、従業員本人に考えてもらうようにしましょう。自分で目標を考えられないと、従業員が自発的に動けなくなり、評価制度自体が形骸化してしまいます。評価制度が正しく機能しないと、あまり優秀ではない従業員がいつまでも社内に残ってしまうリスクが高くなります。
経営者がワンマンすぎる企業では、従業員の定着率が低くなります。上からすぐに答えを言いたくなっても我慢して、コーチングを意識することが大切です。まずは自分なりに考えてもらった後、軌道修正したい部分を、コミュニケーションを通じてフォローするようにしましょう。どうしても期待した内容が出てこない場合は、「君の考えは良かったけど、少しだけアドバイスさせてもらっていいかな」「君にはこういう人材になってほしいから、こういう目標を持ってほしい」などと伝えて、本人に納得してもらってから目標を設定しましょう。
キャリアパスの明確化
従業員のキャリアパスを明確にすることも、人材の定着につながります。これは特に若手の従業員に対して効果的です。「この会社に入ったらどのように成長できるのか」を可視化することで、将来に対する不安を減らすことができるからです。キャリアパスを設定する際には、「マネジメント」「スペシャリスト」など、業種によって複数のコースを準備しておきましょう。
若手従業員のキャリアパスを設定する際は、3年目・5年目・10年目といったステップごとに設定しましょう。ポイントは、どのような人材になってほしいのか従業員本人と意識合わせを行うことです。なお、中堅・ベテランの従業員に対しては、経営理念や事業方針を共有したうえで、自身の仕事がどのように会社や世の中と結びつくのかを明確にすることがポイントになります。
評価は「フェア」と「ケア」のバランスが重要
対応をするなかで、留意すべきポイントがあれば教えてください。
特に、評価制度の適正に関しては「フェア」と「ケア」の概念を意識しなくてはいけません。成果を出した人材が高く評価され、成果を出せなかった人材がそれなりに評価を下げられることは、従業員にとってフェアな状況です。また、すべての従業員に対して、チャレンジする機会を均等に与えることもフェアだと言えるでしょう。
すべての従業員が優秀なわけではないため、会社側がフォローする仕組み作りも大切です。ただし、従業員ができないことを代わりに実施するヘルプという形ではなく、コーチングやティーチングといったサポートを心掛ける必要があります。
例えば、メンタルヘルスの不調などが原因で長期間病欠した従業員に対して、「病気だから仕方がないよね」と接することは、フェアではありません。「病気によって結果を残せていないよね」と伝えたうえで、「どのようなサポートがあれば、結果を上げられるのか」「どこまでであれば働けるのか」をたずねて必要なサポートを提供することが、フェアな対応だと言えるでしょう。
フェアとケアのバランスを取ることが、非常に重要です。ケアだけを手厚くして結果を大事にしない会社は、従業員の居心地は良くなる半面、成長が見込めません。
社内にどのように展開すると従業員に受け入れられやすいのでしょうか?
定着率を上げるための施策に取り組む際、いきなり「1 on 1を実施しましょう」「キャリアパスを設定しましょう」などと伝えても、思いつきで始めたと受け取られる可能性が高く、説得力に欠けます。そのため、近年の時代背景なども踏まえて経営理念の見直しを行い、事業計画を作ったうえで、アクションプランの1つとして展開すると、従業員に納得して受け入れられるでしょう。
また、世間的にリスキリングが推進されていることもあり、従業員の教育に注力することも大切です。この場合も、場当たり的な教育制度ではなく、長期的な教育プランを策定したうえで、適切な研修やeラーニングなどにお金を掛けましょう。