2023/02/16 05:00
同族企業の強みは長期視点で戦略を考えられること
4月に会長になるトヨタ自動車の豊田章男社長には在任期間中、曲げなかったことがある。「数値目標」を口にしないことだ。
トヨタにはかつて「グローバルマスタープラン」という社外秘の長期指針があり、細かく数値目標を規定していた。
だが数字が会社と社員を縛り、さらには拡大路線に拍車をかけてリーマン・ショックでたいへんなしっぺ返しを受けた。
もっとも周囲は大変だった。同氏は数字の代わりに「もっといいクルマを」とだけしか語らず、当初は「何をしていいのかわからなかった」という社員も多かった。
だが、トップが細部を語らないことで「末端の社員が自分の頭で考え、働くことができたのも事実」とある幹部はいう。
同社は典型的な同族企業だ。
同族経営の利点は短期主義の弊害を免れ、長期の視野に立ったかじ取りができることだとされる。
豊田氏以外の歴代創業家出身者もスタイルは同じで、「自分は会社と一生のつきあいになる。来年、再来年の利益より、立派な会社に育てて次の世代に渡すのが役目」と考えてきた。
持ち時間の長さと構想の遠大さこそ、同族経営の強みだとのこだわりだ。
長期経営を貫くには四半期ごとの成果を求める株主や取締役会の追及から戦略を守り、一方で社会の要請にもこたえる必要がある。
研究者の調査によれば、同族経営がいわゆるサラリーマン経営より財務的な成果を出しやすいとのデータがある。
京都産業大学の沈政郁教授が日本の上場企業を対象に経営の効率性を表す総資産利益率(ROA、利益は営業利益を採用)を追ったところ、直近の17年実績に基づく調査(3492社)で同族企業は平均5.25%、非同族企業は同4.77%だった。
一時的な現象ではなく、データがある1956年からの61年間でも非同族企業が同族企業を上回ったことはない。
「わかりやすく一貫したビジョンと意思決定の速さが理由では」と沈氏はみる。
日本の上場企業といえば、6割が採用しているとされるのが中期経営計画だ。
中計といえば多くは期間が3~5年。うまく使えば成果は出るが、サラリーマン社長の任期と連動していることが多く、連続性に問題が起きがちだ。
ある種の短期主義だろう。もちろん同族経営でも優劣の差は大きいのだが、調査の結果から教訓を引き出すなら、長期経営の強さと良い点は映し鏡のように参考にして、「学ぶべきところは学べ」ということだ。
オランダの経営学者ポール・ルイ・イスケ氏の著作「失敗の殿堂」に、米テスラや宇宙ベンチャーのスペースXを率いるイーロン・マスク氏が事業で何度も失敗しつつ、巨額投資を続ける理由の分析が出てくる。
「マスク氏が失敗を恐れない人物だから」というより「失敗で集まる長期のデータが財産だと考えるから」だという。
日本で技術革新が生まれなくなって久しい。
重要なのは長期の視点で失敗を許容し、成長にこだわる経営があるかどうか、ではないか。
同族企業と言えば、あまり良くないイメージもあるが、長期的視野にたって物事を見るということなら、とても素晴らしい組織なのだということがわかりました。
日本電産は「同族企業にしない」とはっきりと言っている。短期的、長期的両方での成長を求められるので日本電産の社長は大変だと思う。
トップがぶれなければトヨタのように長続きするし、トップがぶれると長続きはしないでしょう
2023/02/15 05:00
拾ったロストボール 「持ち帰ったら窃盗」の真偽
ゴルフのプレー中に、キャディーさんが「ロストボールを拾いました。
きれいだからお客さんどうぞ」と声を掛けてきました。
受け取ろうとしたところ、同伴者から「ロストボールを持って帰ったら窃盗罪になるのでは」と言われました。本当でしょうか。
林や深いラフの中にボールを打ち込んでしまうと、なかなか見つかりません。
ルール上、ボールの捜索時間は3分以内と定められていますので、見つからなければ見つからないボールをそのままにして別のボールでプレーを継続します。これがゴルフのルール上の「ロストボール」です。
捜索断念で所有権は放棄
さて、ロストボールの「所有権」は誰にあると考えるべきでしょうか。
もともとは各プレーヤーが持参したボールであり、所有権はプレーヤーにあります。
ルールや時間の関係上、一定の時間で見つからなければ捜索を断念し、新しいボールで打ち直すことになります。
その場合、捜索を断念した時点で法律上、ボールの持ち主は所有権を放棄したものと解釈されます。
では所有権を放棄されたボールの新たな所有者は誰になるのでしょうか。
実際、ゴルフ場は人工池などの底に沈んだゴルフボールを定期的に回収し、併設された練習場の練習用ボールにしたり、ロストボール業者に販売したりしています。
ロストボールの回収を断念したときのプレーヤーの意思は、そのボールを将来、発見し拾得するであろう不特定の者に対して黙示的に贈与する旨の申し込みの意思表示を含んでいるとする考え方がありえます。
これを発見し拾得した者はその申し込みを承諾してその所有権を取得する関係に立つというわけです。
次に、民法には「無主(持ち主のいない)の動産」は所有の意思をもって占有することにより、その所有権を取得するとの規定があります(「無主物先占」といいます)。
これに従い、一番先に占有した者がその所有権を取得するという考え方があります。
その場合、「一番先の占有者」は誰かが問題になります。
ロストボールを最初に見つけた人が「一番先の占有者」なら、発見者がボールの新たな所有者になるという解釈になります。
最高裁判決の事件は悪質
実は、ゴルフ場内の池からロストボールを盗んだとされる件について最高裁まで争われた刑事事件があります。
人工池に打ち込まれたボールはゴルフ場が回収・再利用を予定しているものであって、所有権はゴルフ場にあるというのが1987年に出された最高裁の判断です。
なお、最高裁は「本件ゴルフボールは、無主物先占によるか権利の承継的な取得によるかは別として、いずれにせよゴルフ場側の所有に帰していたのであって無主物ではなく、かつ、ゴルフ場の管理者においてこれを占有していたものというべきである」としました。
前述の無主物先占か黙示的な贈与かの判断はしていませんが、少なくとも、最高裁はロストボールの「一番先の占有者」がボールの発見者であるとの解釈は採用しませんでした。
この最高裁判決の結論が「ロストボールを盗んだら窃盗罪」と要約されて伝わっているようです。
最高裁の判断を広く解釈すれば、ロストボールが物理的に周囲を区切られたゴルフ場という施設内に存在している限り、プレーヤーがボールを紛失した時点でロストボールの所有者はゴルフ場ということになります。
それでは、池以外の、通常なら発見が困難な崖や斜面、深い森の葉の下などに隠れていたボールについてもゴルフ場の占有下にあるといえるでしょうか。
この点に関し、最高裁調査官による1987年の判例解説では、
①この事件で問題になったのはウオーターハザードである人工池であり、見方によってはロストボール回収装置ともいえるような場所であって、占有を肯定しやすかったが、ロストボールが散在している林や崖の場合も同様に考えてよいかどうかは議論のあるところである
②正規に料金を払ってプレーしているゴルファーがたまたま見つけた少数のロストボールを拾った場合などについては、ゴルフ場側がこれを容認しているとみられることも多いのではないかと思われる――と述べています。
ということで、
私は今まで多少ロストボールは頂いたこともありますが、それ以上にロストボールを提供しているので、あまり悪いことをしたとは感じてはおりません。
だいたいロストボールを見つけるということは、そういうところに打ち込んだということの反証であり、決して誉められることでないとも思うのであります。
2023/02/14 05:00
高いロイヤルホスト、安いガストを圧倒の不思議
物価高を嘆く声が広がるなか、ファミリーレストランで「異変」が起きている。
平均単価の高いロイヤルホスト(ロイヤルホールディングス)が新型コロナウイルスの感染拡大前の売上高を確保する一方、低価格の「ガスト」などすかいらーくホールディングスの店舗は苦戦しているのだ。
そこには営業時間の短縮や消費者の行動変化、「ロイホ」の強い顧客支持など数多くの要因が絡み合っていた。
ロイホはコロナ前の売り上げ水準に
まずロイホについて既存店売上高の推移をみてみよう。
2022年は前年実績との比較でほぼ全月が2ケタ増。
年間累計では22.5%も伸びている。コロナ前の19年比でも1、5、9、10〜12月が増収となり、特に10、12月は2ケタ増と力強い回復ぶりをみせた。
この結果、22年はほぼ19年並みの売り上げ水準を確保した。
一方、約1300店を展開するガストや、中華の「バーミヤン」で構成するすかいらーく。
22年の既存店は行動制限の緩和などで前年同月比でこそ2ケタ増だったが、19年比では全月マイナス。
年間売上高はコロナ前の81.3%にとどまった。
ロイホの1人当たり支払額は平均2000円弱で、すかいらーくの主力ブランド、ガストは800円台だ。
物価高に伴う節約志向の状況を考えると、すかいらーく側に追い風が吹くように思うが、逆のベクトルが働いている。
なぜここまで差がついたのか。すかいらーくは「コロナ以降、深夜営業が減少し、売り上げを取り戻せない。
地方での苦戦も響いている」と説明する。
セブン&アイ・ホールディングス傘下の「デニーズ」も、同じような理由でコロナ前の水準に遠く及ばない。
外食専門誌フードビズ主幹の神山泉氏によると、「ロイヤルホストは特に店内調理を強化するなどやるべきことをやっている」点が効いている。
確かに店内に加え、各店舗向けの食材加工を請け負うセントラルキッチン、商品開発チームのそれぞれにコックを置き、味へのこだわりは強い。
店舗数についてはピーク時に377店を展開していたが、今は221店まで減っている。
量より質を重視し、ロイホの希少性が高まった面も大きいだろう。
22年に消費者の行動制限は緩和されたが、外食産業の回復は鈍い。
コロナ感染者が減ったわけではないほか、物価高によって家で料理をする「内食」や総菜などの「中食」志向が強くなっているからだ。
逆にせっかく外食へ行くならば、他のファミレスより高級感を醸し出すロイホで食事しようという消費者心理が働きやすいのかもしれない。
今回、ロイホもすかいらーくも値上げを実施した。
ロイホの場合、ブランド価値を上げた結果、影響はほぼなかった。
すかいらーくの値上げは、あえて値上げしない方針を掲げたサイゼリヤなど低価格系ファミレスの中で割高感が生まれてしまった可能性もある。
あらゆる分野に広がる物価高だから、財布のひもは緩められない。
それでもコロナの感染者確認から3年が過ぎ、外出を伴う体験型消費も楽しみたい。
そうした複雑な心理を抱く消費者に、価格以上の価値を見いだしてもらえるかどうかが、これまで以上に重要になる。
外食産業の経営環境は酒類提供制限などがあった時期より好転したものの、光熱費の上昇や働き手の確保などまだまだ逆風が吹いている。
ロイホもこのまま好調を持続できる保証はなく、ファミレス以外との競争も激しさを増す。
私は、たまにロイホへ行くが、確かに、京都堀川通沿い五条下がるのロイホはいつも混んでいる
夕方に行けば座る席さえないくらい流行っている
京都観光の際に一度寄られてはいかがですか?
市内ではなかなか駐車場付きのレストランがないのです
ロイホは市内ど真ん中ではないですが、利便性の良いところにありますよ
2023/02/13 05:00
マック超えのラーメン「山岡家」 コロナ3年、頑固貫く
新型コロナウイルスの感染拡大からほぼ3年。産業的に大打撃を受けたのは言うまでもなく、外食産業だ。
実際にコロナ前の売り上げを超えているのは、日本マクドナルドホールディングス(HD)など数少ない。
そんなレアな成功企業の中で、イートイン(店内飲食)だけでコロナ前を超えたラーメンチェーンがある。
札幌市に本社を置く「ラーメン山岡家」だ。マックもしのぐ山岡家の強さを探った。
イートインで既存店増収1位
山岡家の店舗数は全国に約170店あり、東証スタンダード上場の丸千代山岡家が運営する。
外食専門誌「フードビズ」が掲載している各社の既存店売上高のコロナ前比較をみてみると、山岡家の伸び率に目を奪われる。
2022年1~7月の既存店売上高を19年比の増減率で見ると、プラス企業はわずか13社だ。
トップは日本マクドナルドHDで27.1%と高い伸び率を示す。2位以下はモスフードサービス、日本ケンタッキー・フライド・チキンなどが続き、6位が山岡家の8.8%増。
興味深いのはイートインに限定した企業でみると、山岡家が1位となることだ。ちなみに9月の既存店客数は19年比で25.4%増とマクドナルドも上回る。なぜ山岡家はコロナ下で成長したのだろうか。
トラックドライバーの心も満たす
丸千代山岡家の大島正一経営企画室長は「店舗のほとんどがロードサイドで、コロナ下のリモートワーク増加が追い風だった。
山岡家は国道沿いなど郊外を対象とした店舗が中心で、トラックドライバーの利用が多い店だ。
味もこってりで長距離を走るドライバーたちの食欲をそそる。
しかも約170店のうち、大型駐車場を備えた13店にはシャワー室を完備している。
食事前後にシャワーを浴びて、トラック内でリラックスできるようにするためだ。こうした配慮が口コミでも伝わり、「俺たちの山岡家」という感覚をドライバーに根付かせたのだろう。
特にコロナ下はネット通販が急激に伸び、トラック輸送量も急増した。
国道沿いでドライバーのオアシスである山岡家はリピーターを増やし、22年に入ってからも好調を持続している。
8月以降は19年比20~30%の高い増収率を示している。これだけ伸びているのだから、様々なテークアウトを用意すれば、さらに売り上げが増えるはず。しかしあくまでラーメンはイートインにこだわる。
そこには山岡家独自の「頑固一徹」哲学があり、この揺るぎのなさがコアファンを魅了している。
多くの外食チェーンはセントラルキッチンで主要な食材の下準備や調理を済ませ、店舗に配送する。
これに対して山岡家では麺は共通ながら、ラーメンの味の核となるスープとチャーシュー、野菜類のカットは店内調理でこなす。
とりわけスープ作りは、熟練の技が欠かせない。「早くて3年かかる」(大島室長)といい、新規出店はスープを任せられる店長が育つことを目安に決めている。
かつて無理に年19店を出し、業績に悪影響を及ぼした苦い経験がある。
このため現在は新店を年間7~10程度に抑えている。運営形態も直接指導できる直営店に限定している。
スープに関する技能指導は徹底している。
不定期に店長を集めたスープ講習を開き、店長になってからも熟練度を高める。
さらに創業者の山岡正会長が自動車で全国の店舗を1人で回り、指導していく。ここまでこだわるので、味が劣化しないイートインだけに特化しているわけだ。実は都心部に出店しないのも、ラーメンのこだわりに理由がある。
麺をゆでる時間は7分間。忙しい都心部の消費者には待ち時間が長く感じられてしまうので、山岡家の出店先としてそぐわないとの判断だ。
家では提供できない価値
フードビズ主幹の神山泉氏は「外食の良さとは家では提供できない価値を生むこと」と指摘する。
誰でもできそうだが、手間のかかる味と運営のベースづくりと不断の改善が欠かせず、簡単にまねできない。外食産業の持続的な成長に、山岡家モデルは一つの隠し味になるだろう。
外食産業は流行りすたりが激しいが、やはり専門に特化することと人材育成が大切だと感じる記事である
2023/02/12 05:00
顧客優位時代の企業戦略 存在感増す「アドボケイト」
企業やブランドを擁護するほど高いロイヤルティー(忠誠心)を持ち、他者に積極的に推奨する顧客を「アドボケイト」と呼びます。
英クランフィールド大学のマーティン・クリストファー名誉教授らの1990年代初頭の著書「リレーションシップ・マーケティング」で、アドボケイトは紹介されています。
見込み客から購買者が生まれ、リピーターとなり、ロイヤルティーが発生すると「支持者」となります。
その中から生まれるのが「アドボケイト」で、企業のためのマーケティングの担い手にもなります。
ソーシャルメディアやスマートフォンが生活に溶け込むデジタル時代では、アドボケイトの存在感が高まります。
米ノースウエスタン大学のフィリップ・コトラー名誉教授らは著書の中で、デジタル時代のマーケティングに有効な「5Aモデル」を示しています。
5Aは、認知、訴求、調査、行動、アドボケイトを指し、デジタル時代では、顧客を認知段階からアドボケイトに進ませることが究極の目標だとしています。
数年前にはインフルエンサーが注目されました。
有名人やソーシャルメディアでフォロワーを多く持つような、他者に影響力がある人々です。
マーケティングに活用したい企業は、こうした人に日用品や化粧品などを使ってもらいます。
その感想を発信すれば、信奉するインフルエンサーの情報として、消費者には一定の効果がありました。
しかし、今では効果は限定的です。
企業からお金をもらい、使ってもいない商品を紹介する案件もあることを、消費者は次第に分かるようになりました。
透明性が高い現代では真実は見抜かれやすいのです。
それよりも、ブランドを愛用するアドボケイトの情報に消費者は耳を傾けます。
アドボケイトが知っているブランド・ストーリーや使用法などを紹介した方が信頼性は高く、情報の価値が高まるのです。
情報があふれるデジタル空間では、消費者は専門性の高い情報を欲しがります。
長期的なブランド構築の観点からも、インフルエンサーよりアドボケイトの活用が有効です。
