2023/02/11 05:00
上司への一票、試される部下の覚悟 忖度いつか死語に カイシャの未来「目覚めるシャインたち」
【このレポートのポイント】
・昇格を同僚や部下の投票で決める企業が現れた
・上司に忖度する者が重用されがちな風土を改める
・伊藤忠は部下の本音を知るため点数制度を導入
機械工具卸大手、トラスコ中山の株主総会は、取締役にとって普通以上に緊張する場となる。
課長や支店長以上の社員、約140人からの平均評価がさらされるからだ。「マネジメント力」「コミュニケーション能力」など6項目合計で24点満点。
2期連続で16点を下回れば降格が待っている。上司のほか同僚や部下も評価に加わる360度評価。
「役員は自分の子分を引き上げたいだけじゃないか」。きっかけは人事会議で中山哲也社長が抱いた疑問だった。
部課長7〜8割が昇格保留
「オープンジャッジシステム」と呼ぶ制度は大胆だ。
昇格候補者を知る社員全員が投票でき、賛成が8割未満、または最低投票数に届かないと昇格は保留。部課長では7〜8割が一度は保留になる。
候補者には投票者が書いた全コメントを伝え、意識改革を促す。
12年からは取締役、15年からはパートに対象を広げた。
労働政策研究・研修機構などの22年の調査でも、50.5%が「同じ会社で長く働き続ける」のが理想と答えた。人間関係が固定されるなか、上司に忠実に忖度(そんたく)する者が重用され、派閥化する弊害もはらむ。
様々な社員の目を、適正な評価に生かす試みが進む。
13の国・地域で500店を展開する眼鏡店、OWNDAYS(オンデーズ、那覇市)の総選挙は10回目になる。
地区統括などの要職が対象で、立候補者は「政見放送」やポスターを用意。
筆記テストの結果や担当エリア内の離職率の低さ、売り上げ実績なども点数化して事前に公表される。選挙当日の質疑応答も社員たちの判断材料だ。
「幹部候補になるほど一個人としての実力・魅力を発揮する必要に迫られるんです」(田中修治社長)。
会社の明日を左右する一票は、部下にも重い責任を自覚させる。
ある店長は「印象だけでは選ばないし、選んだ人には人繰りの応援など役に立ちたい」と話す。
「お利口さん上司」では困る
トラスコ中山の中山社長は手応えの一方で投票制度の弊害を懸念する。
「4〜5年前から厳しい指導をしない『お利口さん上司』が目に付くんです。
優しいばかりでは仕事にならない」。上司が評価を気にして部下に忖度するようになれば、本末転倒だ。
伊藤忠商事は管理職約300人に部下がつけた点数やコメントを伝える制度を持つが、人事評価や処遇には一切反映しない。
必要な指導をためらわせないためだ。「厳しく言うべきときは言わなければ。若い世代も壁を乗り越えて成長実感を得たい人が多いと思います」(考査ユニットリーダーの能登隆太氏)
狙いは部下の本音に触れ多様な価値観を理解すること。
それが「目の前の仕事だけでなく部下の特性を踏まえた育成」につながるとみる。
いずれは匿名コメントに頼らず本音をぶつけ、高め合える上司と部下に。そのとき「忖度」という言葉が死語になるだろう。
2023/02/10 05:00
西松屋、しまむら・GUへの挑戦に秘策
西松屋チェーンが成長の踊り場を迎えている。
ローコストオペレーションを武器に子供服市場を開拓してきたが、足元では円安で海外から仕入れる衣料や雑貨の利幅が圧迫され2023年2月期は減益見通しだ。
少子化で市場拡大が期待できないなか、小学校高学年まで顧客の年齢層を広げ、活路を見いだそうとしている。
今期の単独売上高は前期比4%増の1700億円と28期連続の増収を達成する一方で、税引き利益は9%減の77億円と3期ぶりの減益になる見通し。
商品の多くを中国や東南アジアから仕入れており、秋冬物の支払いに調達した米ドルのスポットレートが想定より円安になったことが要因。
西松屋の特長は安さとローコストオペレーション。
郊外店では300坪ほどの売り場を数人の店員でカバーし、店内の通路はベビーカー3台がすれ違える幅がある。
一見「ガラガラ」でも効率の良い店作りで子育て世代の支持を獲得し、1月20日時点の店舗数は全国1067店と10年前から3割弱増えた。
22年2月期の自己資本利益率(ROE)は12.1%で、国内アパレルでは別格の収益力を誇るファストリ(22年8月期で20.4%)には及ばないが、時価総額が約4500億円と西松屋の4倍で、利益規模も5倍超のしまむら(22年2月期で8.9%)を上回る。
西松屋は長年無借金経営を続け22年11月時点で607億円の現預金を抱える。
総資産回転率や財務レバレッジは高めにくく、ROEをさらに向上するには売上高純利益率を引き上げることが必要。
値上げでコスト増を転嫁するだけでなく、長期的に利益率を高める取り組みも欠かせない。
西松屋は衣料品や雑貨類のプライベートブランド(PB)商品と小学校高学年向け商品の拡充に力を入れる。
2000年代から関西の電機メーカー出身のエンジニアを積極採用し、ベビーバギーなどのヒットPBを生み出した経験もある。
PBの粗利益率は大手メーカー製品を扱うよりも19年時点で10ポイントほど高かった。売り上げに占めるPB比率は足元で27%ほど。大村社長は「早期に50%まで高めたい」と語る。
高学年向け強化には成長余地を確保する狙いもある。
西松屋の顧客層は0〜9歳が中心で、成長して「卒業」するとGUやしまむらなどに流れる構図がある。
西松屋は10~12歳向けの衣料品を拡充しており、現在は売り上げの数%だが年率3割のペースで伸びているという。
顧客の年齢層を広げ、企業規模では差があるしまむらやファストリ傘下のGUに挑む構図だ。
岩井コスモ証券の饗場大介シニアアナリストは「高学年向け衣料品だけでなく、かばんや文具など新分野でPBを強化する必要がある」とみる。
西松屋には秘策もある。
無借金経営で積み上げた600億円超の現預金と自己株式だ。発行済み株式数に占める自己株の比率は22年2月時点で12.6%と、日本取引所グループがまとめた国内上場企業の保有比率(21年時点で3.85%)を上回る。
大村社長は「たまった資金で人材採用を強化する。
自己株はストックオプションにも活用したい」と語る。
2023/02/09 05:00
戦中に生まれる戦後秩序 日本、太平洋憲章の起草を
2022年2月24日にロシアがウクライナ侵略を始めてから、まもなく1年となる。
ロシアは市民や生活インフラも標的にし、残忍な攻撃を重ねる。和平はおろか、停戦の道筋すらも見えない。
ただ、より明白になってきたこともある。この侵略は最終的に失敗し、ロシアは歴史の敗者になる可能性が高いということだ。
ならば、ロシアによる侵略戦争の後に、どのような秩序をつくり上げていくのか、主要国はいまこそ青写真を練るときだろう。
米英による「大西洋憲章」
そのような構想は先の大戦を率いた名宰相、チャーチルを生んだ英国でも出ている。
英国・イングランド東部ノリッジ。1月13〜15日、日英の政治家や外交官、識者ら約40人が集まり、定例対話である「日英21世紀委員会」が開かれた。
議論の中心になったのは世界秩序をどう守り、修復したら良いのかという点である。
おおむね、次のような認識で一致した。
■秩序の後退はいまに始まったことではない。14年にロシアがクリミアを併合、10年代には中国が南シナ海で軍事拠点を増やした。今回の侵略はその流れにある。
■米国は国内分断が深まり当面、より内向きになる恐れがある。
日英などの準大国が、米国の対外関与を下支えするしかない。
ロシアによる侵略戦争が続いているとはいえ、決して気が早い話ではない。
国連憲章をはじめとする現秩序の素地がつくられたのも、第2次世界大戦のさなかだった。1941年8月、ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相が大西洋洋上で会談し、取りまとめた「大西洋憲章」である。
憲章とは、重要な原則をうたった取り決めのことだ。大西洋憲章では、領土の不可侵や民族の自決権など、秩序の骨格となる8つの原則をうたった。
ナチスドイツが39年9月にポーランドに侵攻し、第2次大戦が始まってから2年足らず。
まだ、米国が参戦すらしていなかった時である。
新興国や途上国の支持も
むろん、当時といまでは多くの違いがある。
ただ、第2次大戦以来、最悪ともいえる侵略が欧州を襲い、アジアでも緊張が高まっている点では似ている。
中国の軍拡で、台湾海峡などでは紛争の火種がくすぶる。朝鮮半島も緊迫している。もし欧州とアジアで同時に戦争が広がったら、第3次大戦になってしまう。
この危ない流れを押しとどめるためには、これだけは譲れないという原則を改めて打ち立てる必要がある。
21年6月、米英はそんな認識から「新大西洋憲章」を発表した。
ただ、世界の重心はインド太平洋に移っている。そう考えると、今後の諸原則はインド太平洋憲章として起草し、多くの国々の署名を得ていくのが望ましい。
その役割を果たす資格と責任が、日本にはある。多くの国々が支持する「自由で開かれたインド太平洋」の概念を、日本は生んだ。
政府関係者によると、岸田政権はこの概念を実現するための計画をまとめたうえで、23年前半にも発表する方向だ。
新憲章に強い影響力を与え、世界の共通規範にするには、新興国や途上国の支持も得なければならない。なかにはサウジアラビアやベトナムのように、王政や一党支配の国もある。西側の民主主義を押しつけたら、それらの国々は離れてしまう。
領土の不可侵、法の支配、航行の自由、自由な貿易……。異なる政治体制の国々も結束できるよう、こうした原則を中心にすえるのが賢明だろう。
いずれも、言わずもがなの原則ではある。
しかし、当然だったはずの国際ルールが踏みにじられ、今日に至っている。新憲章にまとめ、各国が順守を誓い合う意味は大きい。
このままでは、世界はルールではなく、力が支配する状態に向かってしまう。米国の指導力が大きく弱まる中東やアフリカでは、すでに乱世になっている。
シリアやイエメンでは内戦が続き、イランは核開発を進める。イランとイスラエル・アラブ諸国の軍事緊張も高まっている。
エジプトの著名な政治家で、中東専門家としても知られるモナ・マクラム・エベイド氏は警告する。
「米国の関与低下が中東に火種を広げている。もう米国は当てにならない、と各国は思っている。域内の問題を自力で解決しなければならなくなってしまった」
米国が「世界の警察」から退き、1つの超大国が秩序を支える時代は去った。
新しい秩序は、原則をともにする西側諸国と新興国、途上国が協力し、集団で守っていかざるを得ない。
2023/02/08 05:00
サッカー日本代表も学ぶべき、オランダ流PK戦対策
サッカーのPK戦の勝ち負けは運不運なのか、それとも実力の一部なのか――。
アルゼンチン対フランスの決勝戦を含め、昨年カタールで開催されたワールドカップ(W杯)は幾つかの重要な試合がPK戦で決着し、さまざまな議論を巻き起こした。ラウンド16でクロアチアに敗れた日本しかり。
簡単に答えは出ないPK戦の深遠を語ってくれた人がいる。
1月14、15日に神奈川県のパシフィコ横浜で行われた「第13回フットボールカンファレンス」に講師として登壇したフランス・フック氏である。
W杯直後とあって、国の内外から招いた講師陣はW杯をテーマに語ることが多く、カタール大会でオランダ代表のGKコーチを務めたフック氏もアルゼンチンにPK戦で敗れた準々決勝の内側をつまびらかにしてくれた。
オランダ人の同氏は16歳でプロのGKになり、12年間の競技生活を終えた後はコーチとしてキャリアを積んだ。
JFAのゴールキーパープロジェクトでは2018年からテクニカルアドバイザーを務め、日本の若いGKのレベルアップに貢献してくれている。
そんな同氏が明かしたカタール大会におけるオランダ代表のPK戦への用意周到な準備、勝利に懸ける執念には脱帽するしかなかった。
後景として、オランダが14年W杯ブラジル大会で2度のPK戦を戦ったことがあるようだ。
準々決勝のコスタリカ戦の勝利(4-3)と、準決勝のアルゼンチン戦の敗北(2-4)である。
コスタリカ戦では延長後半追加タイムに、GKをそれまでのキャリアで一度もPKを止めたことがないヤスパー・シレッセンから、PKストッパーとして定評のあったティム・クルルに代えた。
するとこれが見事に的中し、クルルはPKを2本止めて準決勝進出の立役者となったのだった。
しかし、続くアルゼンチン戦は同じくPK戦に突入するも、それまでに3人の交代枠をすべて使い切って、シレッセンをそのまま起用せざるを得なくなり、アルゼンチンに敗れたのだった。
フック氏によると今回もPK戦専用のGKを用意すべく、大会前に「6人のGKを呼んでテストをした」という。
それぞれのGKのサイズ、リーチはもちろんのこと、どれほどの跳躍力や敏しょう性を備え、いろいろな種類のPKに対して、どれくらいの速さでどこまで手が届くか、データを採取していったという。
面白いのは、キッカーが蹴る前に先に動くようなギャンブルはしないように約束させたこと
オーディションの結果、U-21(21歳以下)代表だったキエル・スヘルペンにPKストッパーの資質があることが分かった。
身長は2メートルを超えるから、ゴールの前に立つだけで相当な威圧感だろう。オランダにとっての不運の始まりは、最善と思われたスヘルペンがケガをして代表に選べなくなったことだった。
人事を尽くしても天命に背かれるのがPK戦という感じになる。
それでも「練習をすればできる保証はないが、練習をしないと運も引き寄せられない」「成果も大切だが、そのプロセスが大事」という信念を持つフック氏は重ねた努力を無駄とは思っていない。
JFAはカタール大会後、アンダーエージの国際試合で勝敗に関係なくPK戦を行う取り組みを始めた。
親善試合でいくら蹴っても、公式戦の緊張感にはほど遠いという意見もあるが、W杯のラウンド16に4回進み、うち2回はPK戦で敗れた日本としては、無為無策で本番に臨むわけにはいかない。
特にGKに関しては、PKに強いGKは十分に育成可能ではないか。
その場の空気、状況に大きく心理的に揺さぶられやすいキッカーに比べ、GKのPKストップは練習の成果をストレートに発揮しやすいように思えるからだ。
この4年間でそんな人材の発掘、育成を着実に進めておきたい。
2023/02/07 05:00
〈Asia Analysis〉インド、人口世界一へ 「途上国の代弁者」を自任 米欧日と戦略ズレ
分断が深まる世界でインドが存在感を高めている。
インドの人口は2059年まで増え続ける。
2023年の20カ国・地域(G20)議長国として発展途上国の代弁者を自任する。
国連推計で14億人を超えた人口は23年、資料が残る1950年代以降で初めて中国を抜き、世界最多となる見通しだ。
昨今、欧米日の要人がインドに積極的に接触する理由は、対ロシア対策である。
インドは、ロシアに対して「今は戦争をする時代ではない」と発言したが、裏ではロシア産原油の最大の輸入国となり、実質的に財政援助をしている。
なので、欧米日の説得が、インドを動かしている訳でないのである。
国連でロシアを非難する決議も欠席をしたのは周知の通りである。
「インドは民主主義国家であり、欧米日と同じ価値観である」と錯覚したのが、欧米日の間違いであると記事は指摘している。
インドは歴史的に中国と仲が悪く、中国をけん制するために、大国ロシアとも連携しているのである。
モディ政権は、ヒンズー教色が強く、決して民主的とも言えないのである。
よってインドを西側諸国に振り向かせるには、対中国に対して、よりきつい対応を欧米日がとればインドは、西側諸国と連携すると指摘している。
