インフォメーション
補助金に採択された事業の管理のポイントについて専門家が解説します。
補助金、助成金(経営Q&A) 補助金・助成金
Question
補助金に採択され喜んでいましたが、補助金事務局から渡された「補助事業の手引き」等の資料がとても多く、どのように事業を進めればよいか分からず、戸惑っています。
事業を進めるためのポイントを分かりやすくお教えいただけないでしょうか。
Answer
補助金の事業期間は長くないので、まずは事業を開始することも大切ですが、あわせて、事業の管理や事務局への報告手続などを着実に進める必要があります。
今回は、補助金に採択された事業の管理について、ポイントを説明させていただきます。
本コラムを参考に、事業内容の管理等を原則に則って丁寧に行っていただければ、事業実績報告はスムーズにできると思います。
採択された事業を通じて、企業の成長につながることを期待します。
はじめに
中小企業や小規模事業者の皆さまにおかれては、採択された補助金の事業計画における商品開発から補助金の清算など、本業の傍ら経営者自ら行うケースが多いことと思います。
さまざまな業務に追われながら、補助事業を進める必要があることから、定められた要件やルールが多く、補助金事務局による事業実績報告書のチェックが厳しいと感じる方も多いようです。事業期間中の帳票等の管理を丁寧に行い、補助事業を計画に沿って着実に実施していただければ、事業実績報告などの補助金清算の事務手続は、さほど難しいものではありません。
補助事業の管理のポイントを押さえ、本来行うべき計画を完遂し、スムーズな精算が行われ、新事業が日の目を見ることを願っております。
Point 1 「補助事業の手引き」等の事業管理指示書類の熟読
①「後からでもなんとかなる」は禁句
補助事業は、その事業期間に制限があります。時間が掛っても「実施さえすればよい」というものではありません。
購入を計画している部品や装置の入荷延期など外部の要因で、予定が遅れてしまうことがあるかと思います。しかし、事業期限は待ってくれません。「後からでもなんとかなる」という声を耳にすることがありますが、補助事業においては、禁句です。
②まずは「補助事業の手引き」を熟読
定められたルールに則した補助事業でないと最終的に補助金が支給されない場合があります。限られた期間内に補助事業を行うためにも、事業開始前に配布される「補助金事業の手引き」(補助金採択者向けの資料)は事業開始前に必ず読んでください。 ここでの“読む”とは、「ルール通りに補助事業を進められるように準備する」ということを意味します。
③「補助金事業の手引き」通りがコツ
手引きに記載のルールに従って、粛々と処理をしていくのがコツです。粛々と進めるために、次のような取組みも一案です。
・手引きでは、提出書類をファイリングする順番まで指示されることがあります。ファイリングの順番通りにクリアファイルなどで管理すると漏れがなくなります。“手引き通り”が、コツです!
・事業内容や帳票に漏れや遅れが無いように管理するためにチェックリストを作ることもお勧めです。
Point 2 事業管理や経費処理の流れを把握
補助事業の実施期間が気になり、認められた期間の開始前に事業を始めてしまうケースも多々あるようです。
展示会の申込など、例外が設けられているケースもありますが、しっかり確認して、はじめることが大切です。
① × 部品購入 :期間前に発注し、納品があり、支払も完了
② △ 展示会出展:期間前に申込(申込期限が、期間前)、出展料の支払と出展は期間内
※補助金によっては、補助対象にならない場合があります。
③ ○ 機械購入 :期間中に発注し、納品があって、支払も完了
④ × 人件費 :作業開始・給与締日は期間内、給与支払が、期間後
■不明点がある場合は、速やかに補助金事務局に相談を
補助金を減額されるのでは?と思い、不明点があっても事務局への相談を躊躇するケースが、多いようです。
相談自体は、貴社が事業にしっかり取り組んでいると事務局に示すことにもつながりますので、積極的に事務局に相談されることをお勧めします。
■採択された事業趣旨に反する内容・経費は補助事業外で
事業計画に入っていない業務の経費を計上してしまうケースがあるようです。
特に、恣意的な処理を行った場合、処罰の対象になります。
但し、採択時の事業内容に無かった内容でも、事務局との相談により認められるケースがありますので、自己判断せず、事務局に相談しましょう。
Point 3 経費処理のポイント
〇 補助事業経費の支払いは、従来業務の支払いと合算で支払ってはならない。
補助事業経費の支払いは、従来業務の支払先と同じでも、従来業務とは分けて支払ってください。また、同じ補助事業の経費でも、請求書毎に支払うことをお勧めします(合算振り込みを禁止している補助金もあるようです)。
× 注文書で、補助対象事業と従来業務のものを混在させて注文しても良い。
部品や機械等の注文に際しても、補助対象事業のものと従来業務のものとでは、注文書を分けて、別々に発注してください。もちろん、納品書や請求書も分けてもらえるように、発注先には説明して対応してもらってください。
〇 補助事業経費の支払いは、手形取引で行ってはならない。
補助事業に関係する経費は、手形での支払いは認められていません。手形で支払った場合、補助対象経費として認められず、補助金額が減額される場合もあるようです。
× 消費税は、補助対象経費に含めて良い。
補助金では、原則、消費税は補助対象にはなりません。消費税を除いた費用で計算してください。消費税が内税として含まれている電車運賃などは、計算式が定められている場合がありますので、注意が必要です。
また、知的財産権の取得に関係する印紙代(国内官庁分/外国官庁分)が、補助対象経費として認められるか否かは、補助金によって異なりますので、予め確認してください。
〇 源泉税は、補助対象経費に含めて良い。
専門家の費用には、源泉税を国税に支払う必要がある場合があります。多くの補助金では、源泉税分の金額は補助対象経費になるようですが、予め確認してください。補助対象経費になる場合、源泉税も事業期間内に納付する必要がありますので、納付方法や納付時期に注意してください。
× 銀行の振込手数料は、補助対象経費に含めて良い。(振込時、振込手数料を抜いて送金)
銀行振込で支払いを行う場合、振込手数料は、支払う側で負担することがほとんどですが、振込手数料は、補助対象経費に含めることはできません。計画との間でも微妙なずれを生じ、数百円のことで精算時に補助金事務局とトラブルになるケースがあるので注意が必要です。
△ 補助事業経費を、クレジットカードで支払っても良い。
クレジットカードでの支払いを認めている補助金はありますが、銀行口座からの引き落としが、補助事業実施期間の後にならないよう注意が必要です。期間後に引き落とされた経費は補助対象から外されます。また、補助対象以外の経費と混在しやすいので、精算処理が煩雑になる課題もあります。これらを鑑みると、たとえ制度上認められていても、クレジットカードでの支払いはお勧めしません。
△ 領収書をもらえば、補助事業経費を現金で支払っても良い。
「現金で支払って領収書を受領すれば大丈夫だ」そんな話を聞く時がありますが、現金払いを禁じている補助金があります。現金払いを求められ、どうしても現金払いをしなければいけない場合、現金が自社の銀行口座から出金されたお金である等を証明できるようにしておくことが重要です。
× 補助事業で入手した設備を、事業期間後に、自由に改造・破棄してよい。
補助事業で入手した設備は、勝手に改造や破棄できないのが原則です。補助事業実施期間後であっても、改造や破棄は禁止されています。設備の耐用年数を考えたときに、早期に改修が予想される場合、補助金自体の活用を再考する必要があるかもしれません。なお、使用目的の変更(例:開発のための設備→商品製造の設備として使用)が認められている補助金は少ないので、事前の確認が大切です。
△ 補助金は、返還する義務はない。
補助金の場合、要綱で補助金の返還の条件が定められています。大半のケースで、不正を行った場合のため、過度な心配は不要ですが、条件は必ず確認しましょう。
Point 4 事務処理のポイント
補助金の事務処理は、通常の業務とは異なる事務処理を求められます。
■購入品は、購入時の荷姿から写真撮影し、厳格な管理を
部品や材料を本当に購入したのか証明するように求められる場合があります。実際に入手した日に、荷姿段階から写真を撮っておきましょう。
写真を撮る際には、どの補助金の事業で購入したのか等を記載したプレート(紙等)と共に撮影しておくことをお勧めします。
設備の場合には、以下のようなラベル(シール等)を貼付するように求める補助金もあります。
補助金事務局の確認が完了するまで、説明書等の附属書類すら廃棄してはいけない場合もありますので、手引き等の指示に従ってください。
特に、消耗品のように、随時使用していくものは、いつ・どれだけの量を使用したのか、必ず記録に残して下さい。
下記のような在庫管理表が、事務局から様式として提示されている場合もあります。
■会議の光景や実験風景等も、徹底的に写真に残す
補助事業に関して行っていることは、徹底的に写真に残すなど徹底して記録しておきましょう。
詳細に写真を撮影しておくと、実績報告書の作成が効率的にできます。実績報告書には、積極的に写真を入れ、分かりやすい報告書にすることをお勧めします。
■補助事業専用の日報を用意し、活用しましょう
人件費が補助対象になっているか否かにかかわらず、補助事業専用の日報を作成し、作業の内容を記録することを強くお勧めします。
この記録(日報)が、事業の記録として、御社の財産になると思います。
事業計画と使った金額の乖離
補助事業に実際に費やした金額を事業計画と、完全に一致させることは困難ですが、計画と実績が、あまりにも乖離していると、「丼勘定だったのでは?」や「計画を、しっかり実施したのですか?」等の疑いの目で見られかねません。
許容範囲は、一般的に±20%
経済産業省は乖離の目安を、±20%としています。
これ以上の差が出た場合には、多い場合も少ない場合も、変更届や理由書等の提出といった対応が求められるのが一般的です。
この範囲を超えた、または超えることが予想される場合は、速やかに補助金事務局に相談して下さい。
なお、採択時に決定された補助金額よりも大きな金額は支給されませんし、採択時に決定された補助金額を下回った場合には、実績分までしか支給されません。