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メガ盛りの動向 地味に売れていますよ
売れているのかどうか、ずっと気になっていた。まるか食品(群馬県伊勢崎市)の即席焼きそば「ペヤング ソースやきそば超大盛」のことだ。ダイエット中の方なら容器に表示されている「エネルギー1081キロカロリー、炭水化物129.1グラム」という栄養成分をみて、ぞっとするだろう。
大手コンビニエンスストアに聞くと、「大きく売れているわけではない」とのことだが、超大盛りの商品を置くと売り場にメリハリができる。セブン―イレブン・ジャパンは「お得感があるほか、とがった商品の話題性を重視している」ためという。まるか食品にとっても売り場で目立ち、自社商品の購入増につなげられる。ちなみにペヤングには「超」が6つも付く約4000キロカロリーの大盛り商品が存在する。
メガ盛り系は近年、消費トレンドとして「増量」傾向にある。今年話題になったのはローソンのキャンペーン「盛りすぎ!チャレンジ」。価格据え置きで、デザートなど12品目の重量を既存商品より47%増やした。1月末に同社社員から聞いたときは「ベタな発想ですね」と適当に返答したが、こちらの想定を超えてメガ売れに。プレミアムロールケーキは通常の約4倍、生カスタードシュークリームが約9倍とハピろー!(ハッピーローソン)な結果だった。
一方、増量の元祖と主張するのはファミリーマートだ。2021年から約40%の増量企画を展開し、弁当、サンドイッチ、総菜、デザートと幅広い。やはり売上高は大きく伸びるという。コンビニでは期間限定の企画だけでなく、メガ盛りの商品ニーズは強い。
ファミマのPB(プライベートブランド)の大盛りカップ麺は前年比5割増の売れ行きだ。ローソンでは、日清食品の麺量が通常の1.8倍の「日清焼そばU.F.O.爆盛バーレル」(西日本限定)が人気。発売から約2カ月過ぎても、他の売れ筋の即席麺の1.7倍の販売を記録する。
健康志向や少子高齢化で、食品は少量化の流れが"常識"だ。小パックや一口サイズが増え、観光の土産物にも傾向が広がる。ところがメガ盛り系の食事が廃れることはない。身近な外食も同じ。今年の吉野家の牛丼の販売データをみると、特盛系の比率は10%前後で推移し、約10年前と変わらない。
支持される理由はいくつかある。物価高に伴う割安志向、SNS(交流サイト)での「写真映え」需要のほか、若者の変化も見逃せない。電通若者研究部の用丸雅也氏は「新型コロナで若い世代の食事を含めたライフスタイルが変わったことも大きい」とみる。例えば1日3食の常識が薄れ、1日1食のパターンも増えているという。このため、超・特盛で1日の食事を満たす需要が生まれているというわけだ。
これならコスパもタイパも満たされる。量以外にも辛さ、甘さなど味覚の「盛り」も顧客を引き付ける。日常にちょっとした「特別な体験」を演出して、常識を超え、消費者の気持ちを盛り上げることが市場ににぎわいを呼び込む。