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部下の育成につながる「正しい叱り方」 NO2
――部下を叱る以前に上司が注意すべきことや、ポイントはありますか?
まず、日常的にコミュニケーションを取ることです。何かあったときだけ叱るのではなく、普段の会話の中でも助言はできます。あいさつ・雑談といった、簡単なやり取りからでかまいません。それにより心理的安全性が担保され、叱りの言葉が響きやすい土壌が生まれます。
次に、会社の目指す方向と部下の目標を共有してください。そして、その道筋を外れたときは叱ると事前に宣言します。前提をきちんと伝えておくことで、何のために叱るのかをお互いに理解できるからです。
最後に、減点主義の意識はなくしていきましょう。できないところを探していると、それが目的になって「できない証明」を始めてしまいます。逆に、できるところを探していると、伸びしろのある部下だと思えてきます。
――もし、怒りを抑えきれなかったときはどうしたらよいでしょう。
「やっちゃった」はだれにでもあります。もしそうなったら、逃げずに謝るべきです。潔さはむしろ魅力に映り、ついて行きたいというリスペクトにもつながります
「おまえは使えない」と人格を否定したり、「Bさんのほうが仕事ができる」などと他者との比較で叱ったりするのは、相手に自己防衛本能を働かせてしまいます。長時間・人前で叱るのもNGで、このような行為はパワハラにも該当します。一方で、叱れない上司も増えてきており、これは無視しているのと同じです。上司への不信感につながり、組織に対する忠誠心も失われます。
――吉田さんも、かつて「怒り」で失敗した経験があるそうですね。
以前私は建設会社の現場所長で、典型的な怒りをコントロールできない上司でした。「何やってんだ!」「言い訳するな!」「そんなの自分で考えろ!」……。その結果、部下が出社しなくなるなどの事態が発生しました。かくして私は、第一線から外されてしまったんです。
当時はもうダメだと絶望しましたが、なぜ失敗してしまったのか、自らの指導法に向き合ってみました。その後再び現場に戻り、部下が提出したレポートを見たら、70%くらいしかできていない。昔の私なら、残りの30%はどうしたんだと怒りまくっていたところを「70%はできているね」と声をかけてみました。すると、もう部下の目がキラリと輝いて。そしてすぐに、パーフェクトな成果物を作ってきてくれました。
このとき私は「部下ができないのは、本当に部下だけのせいなのか?上司としてやれていないことがあるんじゃないか?」と気付けたんです。部下にのみ責任を求めていると、進むものも進まなくなります。とにもかくにも、あの挫折があったからこその今の自分ですね。
部下との衝突を恐れず、一体感に変えていこう
私もそうでしたが、意識を変えさえすれば怒りのコントロールは可能です。成功のコツは、私は変わろうとしていると周囲に宣言すること。
問題に気付いていて何も言わないのは、上辺だけのさみしい関係ですよ。組織が目標に向かっていくとき、ある程度の衝突は避けられません。それを力でねじふせるからパワハラになるのであって、きちんと向き合えば一体感を生み出す要因になります。部下が道を外れたら、きちんと戻してあげてください。今は未熟でも、いつか必ずあなたの右腕となってくれるはずです。