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2023 / 03 / 16  05:00

ネット通販「しない」ドンキ 周回遅れゆえの強さ

 私の年代ではドンキに買い物に行くという人は少ないかもしれません。

しかし、消費マーケティングの世界では「ハレの日消費」という概念があります。

日頃の買い物に、「ハレの日」は少ないです。

しかしお祭りなどでは、ちょっと割高なものでも買ってしまうし、もちろん、家族の「ハレの日」には結構なお金をつぎ込むことがあります。基本ドンキは「ハレの日」消費を毎日起こそうとしているのだと思います。

私も久々に行ってみようかな?

 

 

いったい誰がこれを買うのだろう? パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスPPIH)傘下のドン・キホーテに来たときのいつもの率直な感想だ。

一見、過剰なまでの商品の厚みと広がりを用意した「にぎやかさ」が最大の武器で、顧客を引きつける。興味深いことに、リアル店舗の強さを生んでいる秘密は、決して先端的ではない周回遅れの経営戦略にある。

「売り」をメッセージで訴え

店内で目に飛び込んでくるのが、大きく「ド」と記したドンキのプライベートブランド(PB)「情熱価格」の商品群だ。特徴的なのはパッケージに何が「売り」なのか、メッセージにして書き込んでいる点だ。

例えばポテトチップス。「担当者がアメリカで出会った運命のポテトチップス。何度も頭を下げ輸入に成功……」と苦労話まで盛り込む。

ナポリタンの場合はこうだ。「ヤバ盛りナポリタン ボリュームにこだわるドンキとnippnが思いつく限りの配合を試食しついに完成」。読んだだけでおなかいっぱいになる。

こうしたPBの対象は、食品を筆頭に電動自転車、男性下着、かばんなど商品点数で4000以上に達する。

 

メーカーの生産絞り込みで戦略転換

ドンキのPBはメーカーのナショナルブランド(NB)より低価格の「ジェネリック型」だったが、経営環境が変わり、攻めのPBへと大きくカジを切った。

一つは収益構造の見直しだ。かつては粗利益率25%、販管費20%で営業利益率5%が目安だったが、近年は販管費が上昇。

さらに光熱費なども上昇し、根本的な商品開発の刷新が急務になったわけだ。

もう一つは仕入れ構造。PPIHの吉田直樹社長は「全体的にメーカーの計画生産志向が強まり、ユニークな商品を仕入れづらくなってきた」と説明する。

日本のメーカーは新商品開発が多く、短期間で死に筋になるケースも多い。その分、売れなかったもののユニークな商品をスポットで仕入れやすくなり、ドンキ独特の品ぞろえを支えてきた。

だが近年は事情が一変した。サステナビリティー(持続可能性)の観点からメーカーも無駄を減らし、生産量や商品数を絞り込む傾向が強まってきたという。

そこでドンキは自らユニークなPBをつくり、同社のキャッチフレーズである「驚安」を磨き上げる動きに出たのだ。もっとも出遅れたPBなので、顧客に浸透させるにも普通では響かない。切り札として、メッセージ性と物語性の高い商品内容に仕立てていった。

ダメ出し歓迎、ネットは限定

そもそも欧米企業のPBはメーカー品にはない独自性を打ち出し、浸透した。一方、日本のPBはバブル崩壊や原料高などを背景に、NBより価格を抑えた代替品との位置づけで市場を広げてきた。

ドンキのPBは「ありえ値ぇ!」をテーマに、自らピープルブランドと称する。低価格を追求すると同時に、顧客ニーズの吸収に手間暇をかけている。

代表的な手法が「ダメ出し」だ。ネット上の特設サイト「ダメ出しの殿堂」でPBへの改善要求をもらい、即座に反映させる仕組みだ。実際にドンキ愛好家から辛辣な声が集まる。例えば電動自転車。「子育て世代に焦点を当てるならば、かごは大きい方がいい」「充電が手間なのでバッテリーの持ちを長くしてほしい」などの声を受けて生まれ変わった。

「スタイリッシュトートバッグ」については、さらに手厳しかった。ダメ出しの殿堂で「どこがスタイリッシュなのか」「はっきり言って重い。肩が凝りそう」と散々突っ込まれ、「なぜか軽く感じる魔法のトートバッグ」に変身した。

 

周回遅れといえば、端的なのがネット販売で、大々的には打ち出さず、購入頻度の高いカラーコンタクトレンズぐらいにとどめている。

ネットとリアルの両面作戦は今や小売りビジネスの常識だが、「検討したことはあるが、今のところ経営計画には入っていない」(PPIH)。

独自のアプリを開発し、デジタル技術に無関心なわけではない。しかし顧客満足度を考えた場合、分厚い品ぞろえ、売り場の楽しさを作るリアルへの投資をあえて優先することが競争力につながっているのは間違いない。

多様な消費者と本音で向き合う

百貨店や総合スーパーは手順の整った商品政策、細かい商品管理などを進めてきたが、いまや消費者志向は多様で捉えどころがない。

一方、ドンキは日常的な顧客との本音に向き合いながら、「祭り」のような場をぬかりなく提供し、売り上げを伸ばしてきた。横並び的に形だけ先行する経営より、「しない」経営で強みを磨く方が顧客に響くのは当たり前だ。

2024.04.23 Tuesday