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高級ワイン、金融市場低迷の中で投資家に利益 富裕層がレストランに戻ったが、ぶどうが不作
高級ワインの取引サイトを運営する英ライブエックスの「ブルゴーニュワイン150指数」によると、2022年1~11月にブルゴーニュワインの価格は27.4%上昇した。「シャンパン50指数」も21.6%上昇した。
高級ワインの価格が高騰している一因は富裕層による消費だ。
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたのに伴い、数カ月に及んだ都市封鎖(ロックダウン)の間に多額の現金をため込んだ富裕層がレストランに戻っている。
高級ビンテージの供給が少ないのも一因だ。もっとも、ワイン投資の専門家にとって、このニッチな市場は高インフレや金融市場の低迷から資産を守る役割も果たしている。
「ビンテージシャンパンはそもそも(需要を満たせるほど)生産量が多くない」とした上で、ここ4カ月の高級ワインに対する投資家の需要は記録的な水準に達していると指摘している専門家もいる
異常気象でワイン用ブドウが不作
フランス東部ブルゴーニュ地方で生産されるワインの供給が減っている主な理由は気候変動だ。
21年早春の異常気象でブドウが早く芽吹いたが、4月上旬に霜が降り、無残に新芽がしおれた。6月のひょうもダメージをもたらした。
現在市場で流通し、23年夏に瓶詰めが始まる21年のブルゴーニュ地方のワインは約50%減った。
ブドウの収穫が85%減った農家もいる。一方、シャンパンを何年も熟成させるシャンパンメゾン(生産者)はここ数年の不作を補うため、瓶詰めを控える傾向を強めている。
シャンパンでは、ペリエ・ジュエの「ベルエポック12年」が68%高の1ケース1821ポンド、最も人気の高いシャンパンの一つであるサロンの「ル・メニル」の07年産も67%高い同1万2200ポンドに高騰した。
こうしたトップブランドに加え、ブドウ栽培者による手作りシャンパン「グロワー・シャンパーニュ」の需要も高まっている。
高級ワイン商社の英ボルドー・インデックスによると、希少なピノ・ブラン100%のシャンパン、セドリック・ブシャールの「ラ・ボロレ12年」の1本あたりの価格は80%高い360ポンドになった。
ジャック・セロスの02年産ビンテージも1本あたりで63%高い1750ポンドに上昇した。
高級ワインの高騰ぶりとは対照的に、株式や債券など従来の金融市場は低迷している。
22年1~11月のFTSE全世界株価指数はテクノロジー株安が響き、米ドルベースで16%下落した。
各国の中央銀行による利上げを受けて国債も売り込まれた。
ライブエックスの「高級ワイン100指数」は22年に入り英ポンドベースで7.1%上昇した。
もっとも、米ドルベースでは4.3%下落した。
ブームは終わりつつあるとの見方
とはいえ、世界経済の失速懸念により高級ワイン部門の心理も悪化しつつある。
ライブエックスによると、11月にはブルゴーニュワインの価格は0.9%、シャンパンは2.5%それぞれ下がった。22年は両ワインの売り手に対する買い手の割合も大幅に低下した。
ライブエックスの共同創業者ジャスティン・ギブス氏は、ここ数年資産価値が大きく増えていたテクノロジー部門と暗号資産(仮想通貨)部門が22年に入って暴落し、ワインの需要にも打撃を与えつつあると指摘する。
ギブス氏は「(ワインの)需要は徐々に減り、供給は増え始めている」と語った。
「バブル末期には人々が先を争って投資するため、価格が非常に高くなる。今はそんな気配がある」という。
クリュ・ワインのスワートバーグ氏など一部の業界関係者は、中国政府による「ゼロコロナ政策」の緩和に伴いアジアでワインの需要が回復する可能性があると期待する。
そうなればフランス西部ボルドー産のワインが勝ち組に名を連ねるだろう。
ボルドー・インデックスで投資部門を統括するマシュー・オコネル氏は、ボルドーワインはブルゴーニュワインやシャンパンの最高級品に比べると割安なため、中国人の買い手の間で人気が突出するだろうとの見方を示す。
香港のワイン卸売会社アルタヤワインズのパウロ・ポン氏は「投資という観点では、最高級ボルドーワインを買うのが妥当だ」と指摘する。一方、口当たりが軽く上品な味わいのブルゴーニュの最高級品も中国人顧客の好みに合うと話す。
こう見ると、海外ではそろそろ終わりかなとも見えるが、アジアや日本ではこれからワインが急騰するかもしれませんね。