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議会質問&会派取組

2017-11-16 10:47:00

 

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pdf 2017.11.9全国都市問題会議報告書.pdf (0.37MB)

 

はじめに

 

 平成29年11月9日から10日に沖縄県那覇市の沖縄県立武道館で開催された「第79回全国都市問題会議」へ出席しました。

 

 全国都市問題会議は、全国市長会、公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所、公益財団法人日本都市センター、那覇市の4者が主催となって開催される会議です。

 

 

 

報告1 基調講演「多様性のある江戸時代の都市」

 

 まず基調講演として、東京大学史科編纂所教授の山本博文氏によって行われました。

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 教授はまず江戸時代のまちについてどのように発展していったのかを説明されました。江戸時代のまちづくりを参考に現代と比較して説明されました。

 

 城下町が発展した仕組みや「三都」(江戸・京都・大坂)の発展の仕組みなども説明されました。

 

 さらに参勤交代により江戸へ人口が集中し、武家人口が飛躍的に増加したのも要因のひとつです。

 

 そして三都が発展したのは米の流通が発展したからであり、特に大坂では世界に先立って先物取引を取り入れた歴史を忘れてはなりません。

 

 また260ある藩に課せられた参勤交代によってもたらされた経済効果では宿場が発展し、その街道も発展する。

 

 参勤交代はご承知の通り全国各藩が課せられたものであり、石高に応じて連れて行く人数も決まります。

 定期的に行われた制度であったのである程度収入の予測もたてられたのではないでしょうか。

 

 さらに流通網が発展することにより日本海航路も発展し港町も整備され、それが現代にも活用されているのです。

 

 その事を踏まえ今後のまちづくりの参考になればとご講演いただきました。

 

 

 

報告2 主報告「ひと つなぐ まち -新しい風をつかむまちづくり―」

 

 次に沖縄県那覇市長の城間幹子氏により那覇市の取組みについてご講演いただきました。

 

 那覇市の人口は31万人。人口密度が高い町で都道府県庁所在地で全国4番目の高さとなっています。

 

 そんな那覇市では、クルーズ船の誘致をはじめ観光事業に力を入れまちづくりにつとめているとの事です。

 

 「ひととのつながり」を大切にし「おもてなし」の気持ちで取り組んでいますが、交通渋滞問題や本土復帰45年を迎えた中で「沖縄らしさ」が無くなったとの声なども聞こえてきているようです。

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 しかし地元観光ボランティアガイドが案内する「那覇まちまーい(まち巡り)」等の観光は順調であり修学旅行やアジア各地よりの旅行者からも人気が高いようです。

 

 クルーズ船でも歓迎セレモニーも企画し現在では台湾・中国方面からのリピーターも多く国際化時代にふさわしい取り組みとなっています。

 

 そんな中「地元市民も楽しめる町」の創造にむけての取組みの一つとして第1牧志公設市場の建て替えがあげられていました。

 

 近年では多くの県外客や外国人観光客が訪れる第1牧志公設市場は訪れた方々の目を楽しませその場で味わう事の出来るサービスも開始されました。

 

 観光客のみならず市民も利用できる施設として、地域観光に寄与する中核視察としてだけでなく、県民からも愛される施設を目指したいとの事でした。

 

 また沖縄県は琉球王国の芸能を伝える事にも力を入れています。

 

 那覇市では新文化芸能発信拠点施設、「のうれんプラザ」を建設予定で「感動を共有する」を基本理念として取り組んでいるとの事です。

 

 市民一人一人のアイデンティティを大切に様々な人権問題にも取り組まれています。

 

 平成27年7月には「レインボーなは宣言」を発表し、LGBTを含む性的マイノリティの問題を人権問題と位置づけ「パートナーシップ登録」を開始したそうです。

 

 この登録により一部の金融機関では融資も可能となったり、市営住宅の入居基準にも登録者が適応される条例改正も行ったとの事でした。

 

 またコミュニティの力を結集するために、子どもの貧困対策にも取り組み市営住宅の一室を保育園として利用したり、子どもみらい応援プロジェクトを策定して取り組まれています。

 

 生活保護世帯の中学生に対する無料塾を開設したり、子どもより添い支援員の配置、奨学金の3月支給等多岐にわたる子育て支援制度も創設されています。

 

 次に健康問題ですが、沖縄県は長年男女とも長寿日本一でした。

 

 しかし現在は一位から転落し新たな健康づくりにも取り組まれています。

 

 健康づくり協力店を募集し健康食の提供などにも取り組んでいるとの事です。

 

 最後にこれからの都市像についてですが、地域コミュニティの担い手不足があり、自治会の役員のなり手が少なく悩みはあるものの、「目指す将来像」をしっかり提案しながら進めているとの事。

 

 その中で36校区で町づくり協議会ができ、点から線へ。そして線から面へと取り組みの広がりを進めていきたいと述べられました。

 

 

 

報告3 一般報告「人口減少社会の実像と都市自治体の役割 -人口インフラの適正な持続的配置はいかに可能か?-」

 

 次に、首都大学東京学院人文科学研究科准教授の山下祐介氏のご講演。

 

 山下氏は地方消滅から地方創成へ―東京一極集中と人口減少社会の中で、国家と地方のバランスが崩れていると指摘。

 

 地方再生といいつつ本社機能が首都(東京)に集中している。

 

 若者が魅力を感じるのは物価など高くても首都に魅力を感じている現実。

 

 またその首都でも暮らしと経済のバランスが悪いと指摘。

 

 バランスが悪いから行政に頼る傾向がある。しかし少子化が止まらない。

 

 今ここで行政依存からの脱却が必要であると指摘。

 

 そもそも自治体は稼げないし稼いではいけない。

 

 東京一極集中や権力が集中する現実を変えるのはかなり難しい。

 

 不安の悪循環に陥っているのではないか?

 

 団塊の世代が高齢者になる時代。ますます大都市圏に人口増加現象に拍車がかかるのでは。

 

 一方東京では、「東京で稼いだ金を地方に渡すのはおかしい」との風潮もある。

 

 しかし本当に東京で稼ぐことができるのか。

 

 例えば工場は地方や外国にあり、本社だけが東京にあるという場合は東京で生産もできないし本当の意味で稼いでるといえるのかと指摘されました。

 

 ただお金が集まっているだけだとも指摘されました。

 

 最後に人口減少社会に向き合うことが最大の課題であると指摘され、住民参加と連携、協働の取り組みが重要であると述べられご講演が終了しました。

 

 

 

報告4 一般報告「事前と都市が融合し共生が地域の価値を高めるまちづくり」

 

 次に北海道釧路市長の蝦名大也氏のご講演。

 

 蝦名市長は世界一級の観光地づくりの取り組みで「観光立国ショーケース国立公園満喫プロジェクト」を紹介されました。

 

 釧路市では平成19年「釧路市観光振興ビジョン」の策定、平成20年に「総合計画」、平成24年に「釧路市都市経営プラン」、平成27年に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し人口減少に歯止めをかけることを最終課題にした取り組みを進めています。

 

 その中で「観光立国ショーケース選定」を平成28年1月に、「国立公園満喫プロジェクト選定」を平成28年7月に行いました。

 

 ショーケース事業については、訪問外国人旅行者を地方へ集客するモデル事業です。

 

 目標指標を設定し自然を生かした環境づくりに取り組まれています。

 

 また国立公園満喫プロジェクトも阿寒国立公園でナショナルパークとしてブランド化を測り2020年までに訪日外国人の利用者数を1000万人をめざすとしています。

 

 大自然の中に身を置きながら利用の拡大を図る取り組みです。

 

 また「長期滞在(ちょっとくらし)」の推進に取り組んでいます。

 

 釧路市への移住や二地域居住、避暑、滞在観光、文化芸術活動を希望している方に備え付け可能な施設を提供することによって釧路市での生活体験をしてもらうというものです。

 

 自然を生かした取り組みについてのご講演でした。

 

 

 

報告5 一般報告「新たなステージに入った沖縄観光―複合的な魅力を有するハイブリッドリゾートへ―」

 

 次に琉球大学観光産業科学部長・教授の下地芳郎氏のご講演。

 

 観光とはなにか?という壮大なテーマ。沖縄への観光の目的は53%がレジャー。知人訪問や等が27%。ビジネスが14%となっており訪日外国人も約2割はビジネス目的であり、そのことを踏まえて観光事業を考える必要があるとされました。

 

 また沖縄の観光の歴史にも触れられ、戦後1975年に開催された「沖縄国際海洋博覧会」が転換期となったとの事でした。(もちろんアメリカより返還された時も大転換であったと思う)

 

 那覇空港や高速道路の整備、首里城の復元など取り組まれました。

 

 さらに音楽、食、芸能などの評価も高いともいわれています。

 

 そのほか修学旅行の誘致や沖縄サミット、LCCの普及や大型クルーズ船を誘致することによって外国人観光客も増加し、官民一体となった取り組みに効果があがっています。

 

 歴史的経過から「琉球」「日本」「中国」「アメリカ」という4つの顔を持つ都市であり日本とアジアを結ぶ拠点としてこれまでの取り組みに加え「観光は平和へのパスポート」として位置づけ平和研究の取り組みに期待したいと述べられご講演は終了しました。

 

 

 

 

報告6 パネルディスカッション 「ひとがつなぐ都市の魅力と地域の創生戦略―新しい風をつかむまちづくり―」

 

11月10日第2日目。

 

 コーディネーターに早稲田大学理工学術院教授の後藤春彦氏が就かれ、パネリストに㈱能作の能作千春氏(予定では代表取締役社長の能作克治氏でしたが所要のため欠席され代役となりました)、まちとひと感動のデザイン研究所代表の藤田とし子氏、沖縄文化芸能振興アドバイザーの平田大一氏、福井県勝山市長の山岸正裕氏、静岡県島田市長の染谷絹代氏が務められました。

 

◎静岡県島田市長染谷絹代氏

 

 静岡県島田市は大井川鉄道が走っており日本で唯一毎日SLが走り、またトーマス号も走っています。さらにジェームス号、バスのバーティーが仲間に加わり鉄道ファンのみならず老若男女も楽しんでいるようです。

 

 島田市は38.9%の高齢化率と推計されており生産年齢人口の減少により労働力不足、雇用量の低下、後継者不足など課題も抱えています。

 

 そんな中、島田市では島田市の特産である「緑茶」にスポットをあて「緑茶化計画」を策定し様々な取り組みが行われています(新政クラブでは以前島田市を視察させていただき、健幸マイレージの取り組みをお聞きしました)。

 

 イメージカラーをグリーンで統一し、市内の小中学校に緑茶のでる蛇口を設置しその緑茶でうがいを行い風邪対策に取り組んでいます。

 

 さらに郵便ポストも「緑色」にし啓発しているとの事です。

 

 また地域住民との協働の取り組みとして、大井川流域の滞在観光地として川根温泉があるのですが、その川根地区に「川根パラグライダーパーク」を開設し全国の愛好家から注目されています。

 

 7月にはワールドカップ優勝経験のある方が移住され、飛行体験やスクールの開設など取り組まれています。

 

 市としては「パラグライダー」のメッカになればと考えているようです。

 

 さらに世界一長い木造の歩道橋としてギネスに登録されている橋「遭菜橋」の整備も行いたいと考えています。橋の周辺に観光物産展を整備したいと語られました。

 

 最後に市職員の若手を中心に「しまさぶ」を組織し、若手の柔軟な発想を市政と街づくりに生かすために取り入れたいとの事でした。

 

 

 

◎福井県勝山市長山岸正裕氏

 

 山岸氏著は2000年12月に市長に就任。地域住民と一体となり「地域に誇りを持つ市民を増やす勝山市」を目指して取り組みを進めています。

 

 まちづくりの理念は「あなたと一緒に21世紀の勝山をつくります」。

 

 新しい価値観の元「ふるさとルネッサンス」を理念に掲げ具体的事業を進めました。

 

 その中で地域全体を「エコミュージアム」にしようと考えました。

 

 エコミュージアムは1960年代にフランスで生まれた地域全体を博物館とする構想で、「屋根のない博物館」とも言われています。

 

 市内10地区に町づくり団体を設立し、住民が学芸員として様々な遺産を発掘しアピールする構想でした。

 

 その10地区を束ねて「エコミュージアム協議会」が設立され、1地区に年間100万円の補助金をつける「わがまちげんき事業」をスタートさせました。

 

 3年間で30事業に及びそこから継続して続いている事業もあるとの事です。

 

 これまで16年実施してきましたが、3年ごとに事業の改良を行いその時代に応じた制度となるよう取り組まれているようです。

 

 

 

◎まちひと 感動のデザイン研究所代表 藤田とし子氏

 

 千葉県柏市で「かしわインフォメーション」(千葉県柏市)の事務局長として取り組みを始める。

 

 地域における持続可能な取り組みが大切だと考えるが、個々での想いを伝える場がない。

 

 そこで思いが形となるようインフォメーションセンターを開設しました。

 

 「毎日来ても楽しい柏市」を目指す。そんな中で「ワクワクのネタ」になるよう「市民参加で作る歩きMAPプロジェクト」を立ち上げ取り組みがスタートしました。

 

 色々な意見を取り入れられ「自分ごと」として街づくりに取り組む機会となっています。

 

 また和歌山県田辺市でも取り組みがスタート。JRの無人駅の活性化を図りたいとの希望があり試行錯誤を繰り返しました。

 

 沿線の20駅を対象に「紀の国トレイナート2014」がスタートされました。

 

 まちなかレンタサイクル事業や食べ飲み歩き事業等取り組まれ市民も徐々に参加するようになってきたようです。

 

 これらの実践は「市民起点」のまちづくり事業であり、地域に暮らす人々の想いが積み重ねなければならないとの事でした。「自分ごと」で町づくりをと提案いただきました。

 

 

 

◎㈱能作 能作千春氏

 

 「産業観光による地方創生」と題してお話されました。

 

 ㈱能作は富山県に本社があり高岡土器の生産を行っている企業。地域に根差した会社を目指し、地方創生の一翼を担いたいとの想いから様々な取り組みを展開。

 

 伝統の産業の復活地域の創生につながるとの想いから子ども達に優先して工場見学を始めました。

 

 続けることにより見学者の中から研磨職人を目指したいという人材も出てきたそうです。

 

 そんな中新製品の開発と増える工場見学に対応するために新社屋を建設され、職人の技術がまじかで見れるような見学コースとなっています。

 

 北陸新幹線が開通し開業前の2倍の観光客は訪れているが高岡におりる観光客はまだまだ少ない。

 

 そこで制作体験や観光情報誌の発刊など会社独自で取り組んでいます。

 

 また人集めとなるよう本社にプロジェクトマッピングを実施し、富山県の四季・観光地・催事など放映した取り組みも行われています。

 

 工場見学を通じて想定以上の来場者があり嬉しい悲鳴を上げている現実もあるとの事。

 

 見学者に説明する人員不足(無料で見学してもらっているが説明員には賃金が発生する)、交通網整備など課題はあるものの地域創生の一助となればとの事でした。

 

 「産業観光」を目指したいという企業が富山県で出てきた事も成果の一つであると語られていました。

 

 

 

◎沖縄文化芸術振興アドバイザー平田大一氏

 

 平田氏は沖縄県の観光・文化を統括する部局の部長として従事。

 

 本来文化面を担当するのは教育委員会の枠組に位置づけられることがほとんどだが、沖縄県では知事部局に配置されました。

 

 しかも民間人を登用するといった大胆な取り組みが行われています。

 

 また文化予算も全体予算の1.2パーセントまで確保したとの事。

 

 就任時(2010年)の文化予算は30億。2017年の予算額は73億となっている。

 

 文化庁が目指している文化予算は総予算の1%をめざそうといわれている中で1.2%確保できているとの事。

 

 そんな中で気づいたこともある。「予算規模によってやり方を変えればいい」「同じゴールでもやり方次第で低コストでできる」といったものです。

 

 また文化は「おやつ」ではないく「主食」であるのだという。

 

 文化を前面に立てて取り組めば観光も進むと考える。

 

 文化にとらわれず様々な事業を行うには「台本(ストーリー)配役(キャスティング)予算(バジェット)」が大切。

 

 絶えず具体的なイメージを持ち、算出の根拠を持ちながら事業に取り組まなくてはならないとの事です。

 

 部長退任後文化振興会理事長に4年間就任し部長時代と理事長時代に経験したことでたどり着いたのは「感動産業」だと考えられています。

 

 行政が「感動」できずに市民が「感動」しないのではないか。感動県沖縄を宣言することを提案したいと思っているとの事でした。