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議会質問&会派取組

2016-06-09 10:25:00

1 人権行政の推進について
(1)「部落地名総鑑」事件について

 

◆南野敬介議員

 

 6月南野.jpg議長よりお許しをいただきましたので、通告順に従いまして、一括質問式によって質問をさせていただきます。

 

 今回は、人権行政の推進について二つの視点で質問をさせていただきます。

 

 まず、第1点目の部落地名総鑑事件についてでございます。

 

 まず、部落地名総鑑事件とはを説明させていただきたいのですが、全国の被差別部落の地名や特徴など掲載された本のことであり、1975年私も所属する当事者団体に投書があり、発覚したものであります。

 

 当時200社を超える大手企業や個人が購入し、結婚や就職のとき、身元調査に悪用するなど部落差別を助長する極めて悪質な差別図書として社会問題にまで発展しており、国会でも取り上げられた事件であります。

 

 それは、当時の総理府総務長官が、「この書籍は、同和地区住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、そのほかさまざまな差別を招来し助長する悪質な差別文書が発行され、一部の企業においてそれが購入されたという事件が発生したことはまことに遺憾なことであり、極めて憤りにたえない」との談話を発表したほど社会に大きな影響を与えました。

 

 さらに、労働大臣談話も出されるとともに、総理府総務副長官、法務、文部、厚生、農林、通商産業、労働、建設、自治の各省事務次官連名による、各都府県知事、同教育委員会、政令指定都市市長、同教育委員会に対して、「この案内書及び冊子は、同和対策事業特別措置法の趣旨に反し、特に同和地区住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、さらには、さまざまな差別を招来し助長する極めて悪質な差別文書であると断定せざるを得ない」という通達も出されました。

 

 そのような本が当時8種類見つかり、その8番目に見つかった本の序文には、差別的身元調査が問題となっているとしながらも、しかし大部分の企業や家庭においては永年にわたって培われてきた社風や家風があり、採用問題と取り組んでいる人事担当者やお子様の結婚問題で心労をされている家族の方たちには、なかなか厄介な事柄かと存じます。

 

 このような悩みを少しでも解消することができればと、このたび世情に逆行して本書を作成するに至りましたと明記されおり、この本が就職や結婚に際して利用されていた事実もわかってまいりました。

 

 当時一大運動が起こり、これらを購入した企業や個人も認め、人権問題に取り組む企業連絡会結成へと発展してまいりました。これら取組みの成果により、1989年には法務省が部落地名総鑑問題は解決したとの見解を発表されました。

 

 しかし、それから約10年たった1998年には、大阪市内の経営コンサルタント会社による身元調査事件や、2004年12月に発覚した戸籍不正入手で興信所から新たな10冊目の部落地名総鑑が発見されました。

 

 さらに、今年に入り、鳥取ループ・示現舎により、「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題した書籍が4月1日付で作成され、販売されるという情報がインターネット上に掲載され、拡散しております。

 

 この書籍は、1936年3月に財団法人中央融和事業協会が作成した、全国部落調査と題した被差別部落の調査報告書であります。

 

 今回の鳥取ループ・示現舎は、部落地名総鑑の原典の一つとされるこの書籍の復刻版を作成、販売する予定であるとしており、その主な内容は、全国5,360以上の被差別部落の地名、世帯数、人口、職業などがリスト化されており、復刻版では1936年度版全国部落調査で、昭和初期のものとなっていた地名に加え、現在の地名も掲載されていると宣伝されています。

 

 これが誰もが購入できる書籍として復刻・販売されることは、部落地名総鑑差別事件と同様の事件であり、しかもこれが書店で購入されるような事態となれば、社会問題と言える重大な人権侵害事件であると言わざるを得ません。

 

 これらの書類や出版物について、横浜地方裁判所に復刻・販売の差しとめの仮処分の申立てを行い、横浜地裁が3月28日に、出版や販売を禁止する仮処分の決定が出されています。

 

 このような経過があったにもかかわらず、今回、示現舎により、「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題して作成、販売されることは、明らかに差別を商うものであり、差別をさらに助長することとなるばかりか、差別の拡散につながる部落差別行為であり、人権侵害そのものであります。

 

 そのような中、国も部落差別解消へ動き出しました。本年5月19日、部落差別の解消の推進に関する法律案が、自由民主党・公明党・民進党により衆議院に共同提案されました。

 

 法案では、今なお部落差別が存在していることを認め、基本的人権を保障する憲法の理念に反し、許されるものではないことが明記され、インターネットなどでの情報化が進む中で部落差別が新たな状況にあるとし、部落差別のない社会実現のため国と地方公共団体の責務を定め、①相談体制の充実、②教育と啓発、③実態調査の実施を柱としております。

 

 また、地方公共団体は、法の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関し国との適切な役割分担を踏まえて国及び地方公共団体との連携を図りつつ、その実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとすると規定されております。

 

 残念ながら、参議院送りにはならず継続審査という形になり、7月の参議院議員通常選挙後に新たな議論が進むと仄聞しております。

 

 1965年に出された同和対策審議会の答申から50年。その前文で述べられた「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。

 

 したがって、審議会はこれを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるとの認識に立って対策の探求に努力した」という前文の考え方を今こそ再認識する必要があるのではないでしょうか。

 

 そこで、今回問題になりました鳥取ループ・示現舎の「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」の発行に対して、部落問題の解決に向け以下の点についてお尋ねいたします。

 

 まず一つに、「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題した被差別部落の地名などが記載されたこの書籍は、出版の自由、表現の自由の範疇を逸脱するものであるとともに、明らかに差別目的であり、部落差別を助長するものと考えますが、貝塚市としての見解をお示しください。

 

 次に、この書籍の作成、販売が差別目的であり、部落差別を助長するものだという認識の上で、作成、販売の規制について、またインターネット上に掲載される被差別部落の地名一覧についても、根絶に向けた法的規制も含め、部落差別解消推進のための法律制定に向け、各界各層と連携して取り組むべきと考えますがいかがでしょうか、お尋ねいたします。


(2)ヘイトスピーチ解消法成立に伴う本市の取組みについて 


 次に、2点目のヘイトスピーチ解消法成立に伴う本市の取組みについてお尋ねいたします。

 

 ご承知のとおり、5月24日に特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチ問題を解消するため、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律、いわゆるヘイトスピーチ解消法が衆議院本会議にて自由民主党・公明党・民進党など賛成多数で可決、成立いたしました。

 

 1995年に人種差別撤廃条約に批准して20年、日本は、これまで国連人種差別撤廃委員会、自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会などから差別と憎悪を扇動するヘイトスピーチを刑事規制するよう勧告を受けてきました。

 

 さらに、そうしたヘイトスピーチの発生を温存する人種主義と人種差別を禁止、撤廃するための法律が不在していることに対する懸念の表明と、早急に法整備をするよう促す勧告を受けてきました。

 

 今回の可決は、人種差別撤廃条約に基づく人種差別撤廃政策を構築する第一歩であると言われています。

 

 法律では、ヘイトスピーチの定義について、公然と、生命や身体、自由や財産などに危害を加えることを告知したり、著しく侮辱したりするなど、日本以外の国や地域の出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動としています。

 

 そして、ヘイトスピーチの相談や紛争の防止に当たる体制の整備や、教育や啓発活動に取り組むことが国の責務として明記しております。

 

 一方、表現の自由に配慮して、ヘイトスピーチを行うことを禁じる規定や罰則は盛り込まれませんでした。

 

 ただし、附則で、この法律の施行後に不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じて検討を加えるとするなど、一歩前進したことは間違いありません。

 

 さらに、附帯決議で不当な差別的言動以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであり、本法の趣旨、日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の精神に鑑み適切に対応することがうたわれ、国と同様に地方公共団体もその解決に向けた取組みに関する施策を着実に実施することも明記されました。

 

 さらに、5月26日での参議院法務委員会は、法律成立を受けて、ヘイトスピーチの解消に関する決議を全会一致で可決いたしました。

 

 その内容の要約ですが、個人の尊厳を著しく害し、地域社会の分断を図るかかる言論は、決して許されるものではない。

 

 平成32年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた共生社会の実現のためにも、ヘイトスピーチの解消に向けて取り組むことは、党派を超えた緊急の重要課題である。

 

 この解消法は、ヘイトスピーチの解消に向けた大きな第一歩であるが終着点ではない。

 

 差別のない社会を目指して不断の努力を積み重ねていくことを宣言するというものでありました。

 

 このことを踏まえ、以下の質問をさせていただきます。

 

 一つ目に、ヘイトスピーチに対する貝塚市の見解をお示しください。

 

 二つ目に、この解消法の中で示されている相談体制の充実や教育や啓発活動を本市としてどのように展開するおつもりなのか、お尋ねいたします。

 

 三つ目に、貝塚市内で対象となるであろう団体より、施設の使用申請等あった場合の対応など考えておく必要があるとは思うのですがいかがでしょうか、お尋ねいたします。

 

 以上、私からの質問とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

◎都市政策部長

 

 南野敬介議員の人権行政の推進につきまして、私のほうからご答弁申し上げます。

 

 まず、質問番号の一つ目、部落地名総鑑事件について。

 

 今般の鳥取ループ・示現舎が発行してようとしている書籍が、部落地名総鑑と同様のものであれば、部落差別を助長するものであり、甚だ遺憾であると考えております。

 

 本市におきましては、従前より被差別部落の所在地情報の掲示等を具体的な禁止事項として例示し、各プロバイダーに対し削除することを提言するよう、大阪府市長会を通じて国に要望しており、加えてプロバイダ責任制限法にも法規範として明確化することを要望しております。

 

 また、部落地名総鑑の作成、販売の規制についても、今年度新たに市長会の要望事項として国に働きかけてまいります。

 

 続きまして、ヘイトスピーチ解消法成立に伴う本市の取組みについて。

 

 ヘイトスピーチ、いわゆる憎悪表現につきましては、特定の民族への差別扇動行為であり、当事者に対し多大な苦痛を強いるものであり、このような差別言動はあってはならないものと認識をしております。

 

 また、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律が、去る6月3日に施行されたことを受け、今後、国・府とも連携しながら、引き続き相談体制の整備や教育の充実、啓発活動などを推進してまいります。

 

 また、個人または団体から本邦外出身者に対する不当な差別的言動を行うことを目的として、本市施設等の使用申請等があった場合は、各施設の条例に基づき使用を許可しないなど、適切な対応をしてまいりたいと考えております。

 

 以上でございます。

 

 

 

◆南野敬介議員

 

 ありがとうございます。

 

 それでは、自席からではございますが少しだけ再質問をさせていただきます。

 

 まず、地名総鑑、回答の中でもゆゆしき問題ということもありました。

 

 こういった事件が起こってからいつもこうやって質問をさせてもらうわけなんですが、正直なところ、同和対策事業特別措置法が2002年に終了して、いろんな啓発活動とかいろいろ支援も全面的に行っていただきました。

 

 それでも、全国的にはこういった同和地区に対するそういった地名を商いにするとか、そういった意識の中でいろんな事件が発生しているということであります。

 

 先ほど、本問の中でも申しましたように、もう50年たちましたが、当初審議会で答申が出されてもう50年がたつのですが、国の責務、国民的課題として解決していこうということで、決して特別に何かをしてほしいというわけでなく、普通の行政の中で、やはり同和問題解決に向けて積極的に進めていかなければならないと改めて思うわけです。

 

 こういった事件があったからこそではないのですが、改めましてそういった意気込みといいますか、市全体に係ることですので、できましたら藤原市長にお答えいただければと思います。

 

 それと、ヘイトスピーチの問題です。

 

 国も解消法という形で動き出しました。

 

 その中で教育とか相談活動を強めていって、貝塚市も対応していくということでありますが、例えば施設使用に関しては、それぞれの施設条例があるのでそれで対応していくということですが、例えばそういった団体を認定するのも難しいことになると思います。

 

 大阪市の場合は、条例を制定して第三者機関によってその団体を判断するなど、いろいろ決めていってます。

 

 また、先日ニュースにもなりましたが、神奈川県川崎市ではもう使わせないということとか、各自治体それぞれでルール決めを行っているということもありますので、ここは条例になるのか規則になるのか、もう市の内部でいろいろ決めるのか、それは別としまして、それぞれの条例で対応できない部分もやはり出てくると思いますので、市の基本的認識の中でこういった団体をどのように認識して、どのように使用許可を与える与えないという判断をしていくのかというところを、今後検討していかなあかんやろうなと。

 

 今すぐやりますということにはなかなかならないとは思うのですが、今後どう進めていくか、改めて質問させていただきます。

 

 

 

◎藤原龍男市長

 

 両方合わせてご答弁申し上げたいと思います。

 

 中国の孔子の弟子が、「人として生きるには何が基本ですか」という質問に対し、孔子はそれは「恕」であると、おのれの欲せざるところ、人に施すことなかれと答えています。

 

 「恕」すなわち思いやりであり、自分がしてほしくないことを人にしてはいけないという教えであります。

 

 ヘイトスピーチは、まさにしてほしくないこと、やってはいけないことを大衆の面前でしており、孔子の教えから考えると、人としては絶対やってはいけない行為だと思います。

 

 私も同じように思い、先日の川崎市でのヘイトスピーチのグループに対する市民の取組みなり、2日前の読売新聞の朝刊の1面にこんな記事が載っていました。

 

 人を無差別に侮辱したりすることは間違っており、もう一度その人は教育を受け直すべきであるというようなことを書いていました。私もそのとおりであり、まずは本市の啓発に取り組んでいきたいと考えています。

 

 そして、我々が所管をいたしております公共施設の使用について、各地域、市における取組みを一度参考にして、今回でもできるだけ各施設の条例に基づき、使用を許可できない、現条例でもできないものはできないとはっきりしようと思っていますが、統一的な条例が定まっているところがあれば、検討していきたいと思います。

 

 いわんや部落差別については、幾ら思想信条の自由がある、憲法で保障されているとはいえ、公序良俗の範囲内での自由であり、これは大きな問題であり、貝塚市としてもこの問題については人権問題の原点であると考え、啓発・教育活動にこれからも取り組んでいきたいと考えています。