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台湾問題 中国に有利な方向へ誘導する『認知戦』を展開
台湾・中国問題で、的確に現状を捉えてしかもわかり易い記事がありましたのでご紹介します
まとめ
武力で台湾制圧や侵攻すれば、世界中から叩かれる
中国にとってメリットどころかデメリットが多い
よって、時間をかけて中国に有利な方向へ誘導する『認知戦』を展開する
と予想されています
当りそうな気がします
郭育仁(Yujen Kuo)氏。2006年、南カリフォルニア大学政治学博士。16年に中山大学教授。防衛産業、日米同盟が専門。
――ロシアのウクライナ侵攻から1年、世界は何を学びましたか。
「冷戦終結から30年経った今なお、国際社会はまだ冷戦構造から抜け出せてはいなかった。
第2次世界大戦後に設立され、70年以上も経った国際機関が侵略戦争に対し、全く機能しなかった。
国連安全保障理事会も拒否権を持つロシアと中国を前に機能しなかった」
――世界経済への影響も大きいものでした。
「今回の戦争は、各国が過去20年間のグローバル化の中で構築した産業や貿易といった経済構造が、いかに脆弱かをあぶり出した。
ドイツの天然ガスのロシアへの依存度はメルケル前首相の任期中の2005年から21年にかけて、35%から60%に上昇した」
「ある欧州の学者がロシアからドイツに天然ガスを送る新パイプライン『ノルドストリーム2』が開通する日は、ロシアがウクライナに侵攻する日だと予言したが、見事に的中した。
過去20年間、多くの国が戦争という隠れた政治コストを考慮せず、経済優先で意思決定をしてきた代償を今払うことになっている」
――国際秩序は大きな変化の時を迎えました。
「今回の戦争で核兵器のパンドラの箱が開いた。
北朝鮮やイランは核兵器を放棄したウクライナが侵略されたのを目の当たりにした。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は昨年末、核弾頭の大増産を表明した。核兵器不拡散という国際的なコンセンサスは崩壊した。
プーチン大統領は43歳の時、戦時下では緊張状態を極限まで高め、相手の譲歩を引き出す戦略の有効性を論文に記したが、その理論が今、(短射程の)戦術核の使用で試される段階にまで来た」
――国際社会は今後どう対応しますか。
「脅威に直面し、ドイツも日本も防衛予算を大きく増やしている。
これまでは権威主義国家が軍事力を増強してきた。だが、今後は皮肉にも民主主義国家がそれに追随する。
国際社会は深刻な軍拡競争に突入する」
――米中新冷戦の見通しはいかがですか。
「米中対立は深まり、権威主義国家と民主主義国家のグループ形成もより加速する。
権威主義国家のトップがロシアから中国に代わり、グループはより組織化される。昨秋、習近平(シー・ジンピン)国家主席がカザフスタン、ウズベキスタンを訪問した。中央アジアへのロシアの影響力低下が背景だ。
習氏はロシアに代わる受け皿となることを熱望した。今回の戦争は長引けば長引くほど、こうして中国の影響力が増す」
――中国の台湾統一にも影響はありますか。
「中国の力はロシアよりはるかに大きく、台湾に侵略戦争を仕掛けるのは容易だ。
ただ将来、米国の地位に取って代わることを『中国の夢』とする習氏の視点から、この問題を考える必要がある。
中国は国際社会とのつながりが強い。もし台湾に武力侵攻すれば(国際社会から批判や制裁は免れず)台湾は中国の夢への足かせとなる」
――どう動きますか。
「中国の当面の目標は来年1月の台湾の総統選で(対中強硬路線の与党)民主進歩党を排除する、この1点だけだ。
選挙には資金と組織戦が必要だが、中国の資金は台湾の(非合法な)地下金融に潤沢なので問題ない」
「組織戦では、中国は今後あらゆる層で台湾との交流を拡大する。
中国への理解者を増やし、そういう人が台湾で中国の『代弁者』となり、中国に有利な方向へ誘導する『認知戦』を展開するのが狙いだ。
過去1カ月をみても非常に重要な機関の会合に、中国が私をたくさん招待してきている」