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西松屋、しまむら・GUへの挑戦に秘策
西松屋チェーンが成長の踊り場を迎えている。
ローコストオペレーションを武器に子供服市場を開拓してきたが、足元では円安で海外から仕入れる衣料や雑貨の利幅が圧迫され2023年2月期は減益見通しだ。
少子化で市場拡大が期待できないなか、小学校高学年まで顧客の年齢層を広げ、活路を見いだそうとしている。
今期の単独売上高は前期比4%増の1700億円と28期連続の増収を達成する一方で、税引き利益は9%減の77億円と3期ぶりの減益になる見通し。
商品の多くを中国や東南アジアから仕入れており、秋冬物の支払いに調達した米ドルのスポットレートが想定より円安になったことが要因。
西松屋の特長は安さとローコストオペレーション。
郊外店では300坪ほどの売り場を数人の店員でカバーし、店内の通路はベビーカー3台がすれ違える幅がある。
一見「ガラガラ」でも効率の良い店作りで子育て世代の支持を獲得し、1月20日時点の店舗数は全国1067店と10年前から3割弱増えた。
22年2月期の自己資本利益率(ROE)は12.1%で、国内アパレルでは別格の収益力を誇るファストリ(22年8月期で20.4%)には及ばないが、時価総額が約4500億円と西松屋の4倍で、利益規模も5倍超のしまむら(22年2月期で8.9%)を上回る。
西松屋は長年無借金経営を続け22年11月時点で607億円の現預金を抱える。
総資産回転率や財務レバレッジは高めにくく、ROEをさらに向上するには売上高純利益率を引き上げることが必要。
値上げでコスト増を転嫁するだけでなく、長期的に利益率を高める取り組みも欠かせない。
西松屋は衣料品や雑貨類のプライベートブランド(PB)商品と小学校高学年向け商品の拡充に力を入れる。
2000年代から関西の電機メーカー出身のエンジニアを積極採用し、ベビーバギーなどのヒットPBを生み出した経験もある。
PBの粗利益率は大手メーカー製品を扱うよりも19年時点で10ポイントほど高かった。売り上げに占めるPB比率は足元で27%ほど。大村社長は「早期に50%まで高めたい」と語る。
高学年向け強化には成長余地を確保する狙いもある。
西松屋の顧客層は0〜9歳が中心で、成長して「卒業」するとGUやしまむらなどに流れる構図がある。
西松屋は10~12歳向けの衣料品を拡充しており、現在は売り上げの数%だが年率3割のペースで伸びているという。
顧客の年齢層を広げ、企業規模では差があるしまむらやファストリ傘下のGUに挑む構図だ。
岩井コスモ証券の饗場大介シニアアナリストは「高学年向け衣料品だけでなく、かばんや文具など新分野でPBを強化する必要がある」とみる。
西松屋には秘策もある。
無借金経営で積み上げた600億円超の現預金と自己株式だ。発行済み株式数に占める自己株の比率は22年2月時点で12.6%と、日本取引所グループがまとめた国内上場企業の保有比率(21年時点で3.85%)を上回る。
大村社長は「たまった資金で人材採用を強化する。
自己株はストックオプションにも活用したい」と語る。