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EV搭載へ熾烈な開発競争が続く「全固体電池」 経済安保における「特定重要物資」
政府は2022年12月20日、経済安全保障推進法における「特定重要物資」に半導体や蓄電池など11分野の指定を閣議決定した。
岸田政権の政策の目玉の1つである経済安全保障の構築へ向けて、国内での生産体制の強化や備蓄拡充などの安定供給を図るというもの。企業の取り組みに対し財政支援を行う。
11分野の中で最も重要視されるのが半導体だが、それに並ぶべく官民から期待がかかるのが蓄電池である。
半導体が脳なら蓄電池は心臓
経済産業省は2022年8月に「蓄電池産業戦略」を公表したが、これは国内の関連メーカーも加わった官民協議会で約1年間かけてまとめたものだ。経済産業省のレポートでは「半導体が脳であれば、蓄電池は心臓」としている。
蓄電池の用途は幅広いが、産業界からの期待が最も大きいのが電気自動車(EV)向けだ。
車載用蓄電池は現在、リチウムイオン電池が主流だが、これに続く次世代型の主役と目されるのが全固体電池である。
実用化へ向けて各国で開発競争が熾烈となっている。
リチウムイオン電池では電解質が液体だが、これがその名の通り固体の電解質を使うのが最大の特徴だ。
これにより、リチウムイオン電池に比べ
①安全性が向上
②大容量化
③長寿命で温度変化に強い、
④高速充電が可能
などが期待できる。よって、EV普及が本格化するカギを握っている技術といえる。
自動車大手を中心に、現状日本は世界での開発競争では一歩先を走っているとみられる。
が、車載用リチウムイオン電池でも開発や実用化初期段階では日本企業が先行していたものの、量産化に入ってから中国や韓国に抜かれたという苦い経験がある。
同じ轍を踏まないという強い思いが今回の特定重要物資の指定に表れている。
トヨタ自動車は硫化物系の全固体電池を2020年代前半にハイブリッド車(HV)へ搭載予定。
2030年までにEVへの搭載も進み、2040年に向けて急速な市場拡大が期待されるという。