講師(宗夜)ブログ
●さざんか
●包む文化
日本には包む文化があります。
包む媒体は紙とは限りません。
長崎の出島を旅した時に紙ではない『包む文化』を目にして驚きました。
出島から多く輸出されていたのは有田焼でした。
その有田焼を包んでいたのは浮世絵。
浮世絵の斬新な美しさを見た西洋人が『ジャパネスク』に湧いた…
という説が広く流布されていたので私もそれを信じていました。
ところが私の先輩のガイドは、その説に懐疑的でした。
『本当に紙で包装していたのかなぁ?航路ではインド洋を通るんだよ。あの海流はすごく揺れるんだ。紙で包装していたんじゃ、とてもじゃないけど有田焼を守れないよ。』
先輩ガイドの言う通りかも知れない。
出島の博物館で思いました。
出島で目にしたのは、紙ではなく『縄』で編み包まれた大きな磁器の展示物でした。
縄で立体の物を包んでる!
すごく驚きました。
そして包まれ方がとても綺麗であることも驚きでした。
『この包む技術そのものが芸術である』
と西洋国の貿易商が口にしたと説明書にありましたが、本当にその通りでした。
その技術に執念も感じました。
何がなんでも壊してはならない。
当時の諸外国との貿易がどのような契約を基にしているのか分かりませんが、破損した場合の違約金がもしかしたら莫大だったのかも知れません。日本人の器用さは身を守る術だったのかも知れません。
それにしても芸術的に綺麗でした。
芸術的に包むと壊れにくいのでしょうか。
力学的な法則を包み方の中に見出していたように思います。
こういう実践的な研究が、日本人は好きなんだろうなぁ…と思います。
どこか着付けと似ていると思いました。
●自分の人生は自分だけのものじゃない
50代を目前に控えて、不思議なくらい母のことが思い出されます。自分のブログを読み返してみて色々と驚いています。
それにしても、母はどうしてこんなに厳しかったのだろうか。
子ども時代には様々なルールがありました。
・出されたご飯は決して残してはいけない。
・テレビは1日1時間まで。
・新聞のテレビ欄に赤丸を付けて報告せよ。
・流行りの歌は聞いてはいけない。
・聞いて良いのはクラッシックのみ。
・平日に飲んでいいのは牛乳のみ。
・ジュースはお誕生日などのイベントのみ。
・紅茶、コーヒーは日曜日のみ。
これ、躾なのかなぁ。
ちょっとよく分からないものも多かったです。
当時の母は30代前半〜40代半ば。
今の私よりも随分と若い。
母なりに試行錯誤していたのだろうと思います。
ふと思うのは、母は本当は仕事をしたかったのではないかということ。
本当は何か手に職をつけたかった。
でも自分はそのタイミングを逃してしまった。
だからせめて娘には、将来の仕事に役立つ素養を身に付けさせたい。
そのような思いがあったのではないか、と。
口ではその反対の言葉を言っていました。
『女性は働かなくても良い』
だけど本音はそうではなかった。
ところどころで本音を吐露していました。
『子どものための教室を作りたかった』
習字教室ではないかと思います。
たまに家でも書を楽しんでいました。
お正月には兄弟揃って書を書かされました。
赤い墨汁で添削をする時にはとても充実した顔をしていました。
もしかしたら、人間ひとりの人生はその人だけのものではないのかも知れない。
色々な人の思いを受けて作られているのかも知れない、と思うのです。
不思議なルールの数々。
今では微笑ましい。
真剣に子育てしてくれていたんだね。
どうもありがとう。
●日本が誇る物流の力。支えているのは心遣い。
仕事柄、お着物を送ってもらったり自分から送ったりと、何かと運送会社のお世話になります。
そこで度々目にするのがこのような文言です。
……………………………………….
いつも丁寧な配送ありがとうございます。
こちらは着物です。
お客様が楽しみにされております。
お手数ですが、重ねたり、下積みにしたりされないようどうぞお願いいたします。
………………………………………
そして綺麗に丁寧に梱包されて発送されています。運送会社の方も丁寧に扱ってくださって私の手元に届きます。
運送会社ですから、お金が介在し『確実に届ける』という契約が暗黙のうちに遂行されています。本来はこのような文言は不要なはずです。
本来は不要だけれども、その気遣いに人は心が動きます。
『丁寧に届けたい』という自発的な意識に変わります。気遣いの文言を添えるだけで。
『仕事なんだからちゃんとやってよ。
そういう契約なんだから。』
などと心無い言葉を掛けられたら、きっとこんな風に丁寧に届けてくれないだろうと思います。
分かっていても出来ないのが人間。
気持ちが揺らぐのが人間。
日本人はこの揺らぎを捉えるのが本当に上手だと思うのです。
揺らぎ。
目には見えないけど全てのものが揺らいでいる。
光も、音も、時間も、空間も。
揺らいでいていい。
そして揺らぐことを前提として進む日本の文化。
季節の移り変わり。
🌸春だねぇ。ポカポカだねぇ。
🏖うわー、今日も暑い暑い🥵
🍂ようやく過ごしやすくなったね。月が綺麗だ。
☃️おお寒い。今日はお鍋にしよう。
国土には多数の断層があるため、地も揺れます。
今回の揺れは激しかった。怖かったね。
水の揺らぎ、波にも敏感です。
海に囲まれている日本。
潮の流れが速いので、国土には岬や崎、半東も多く存在します。地域レベルでぐるりと海に囲まれているのです。
波や潮の流れによって、もたらされる恵み。
お互いに協力することで越えられる試練。
そのせいか様々な感謝の言葉が存在します。
おかげさまで…
痛み入ります。
いつもありがとう。
お手数お掛けします。
どうぞよろしくお願いいたします。
『ちゃんとやってよ』
より遥かに優しく柔らかい。
そして、コストが掛からない。
時間も、労力も、費用も、掛からない。
心の揺らぎを上手く活用して、自らに有利なように言葉と行動を選ぶ。
これが本当のSDGsかも知れない。
心遣いの文言からそんな風に想像しました。
●一座建立:いちざこんりゅう
一座建立(いちざこんりゅう)という禅語があります。茶の席は、亭主と客が共に作り上げるものであるという意味です。
先週の対面のお稽古で、木曜日に『茶通箱』を土曜日に『続き薄茶』を生徒さま達がなさいました。
亭主とお客様の問答が見せ場のお稽古です。
お客様役の生徒さまも、その複雑な問答を楽しんでおられました。
『茶通箱』
恐れ入ります。いま一種のお茶を頂きとう存じます。
『続き薄茶』
甚だ勝手を申しますが、続いてお薄を頂きとう存じます。
その後も、次客の一口で拝見の所望をしたりと忙しく気が抜けません。
お茶とお菓子を頂くだけではない、お客様ならではのお役目。生徒さまの茶道に対するご興味がいつもよりも更に湧いたお席となりました。
それぞれのお席には、上級者以上の生徒さまが複数ご参加でした。
今までもお稽古でご指導させていただいておりましたが、上級者になられ、様々なお席をご経験されたからこその発見があったようです。
『え?ここでそれ言うんだ』
『ああ、ここで拝見…』
『で、出会いで返すと…』
『いや返さない』
『返さない?へぇー(°_°)!』
いつもと違うやり取りに気付く。
それは今までの蓄積があるから。
『えー、不思議。なんか不思議。』
『そうだね、不思議だね』
『ねー!』
『ねー!』
その不思議を同じ気持ちで共有できる仲間。
ここまで続けて初めて楽しめる茶道の面白さ。
先日は久々に復帰された生徒さまを迎えてた日でもありました。
『お帰りなさい。良かった。帰ってきてくれて』
『良かった。帰ってこれて』
茶の湯
ひとりでは歩けない道。
時々停まっても、止めないで。
楽しいと思える日が来るから。
