講師(宗夜)ブログ

2023-04-30 13:07:00

●お辞儀のふしぎ

最近、外部の社中に在籍している会員さまがビジターとしてお稽古にご参加くださる機会が多くなりました。花月や茶事、奥伝などのお稽古を楽しんでくださいます。

 

お稽古後にお褒めの言葉を頂戴することが多くあります。

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よし庵の生徒さまのお辞儀が美しい

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ありがたいお言葉です。

宗嘉先生も宗夜も、お辞儀には並々ならぬこだわりを持って指導に当たっております。

お言葉をとても嬉しく受け止めました。

私たちはお辞儀に、その方の全てが滲み出ると思っております。

 

ネガティブな人は、ネガティブなお辞儀

威張った人は、威張ったお辞儀

素敵な人は、素敵なお辞儀

 

入会されて間もない生徒さまも、

先輩達の美しいお辞儀を目にして

『私もあんな風になりたいんです』

と口にされることがあります。

 

よし庵の生徒さまのお辞儀には卑屈さは微塵もない。

頭を下げているのに威厳すら感じる。

背筋をまっすぐに伸ばし、

肘は左右対称の美しい三角形を描いて、

目線はやや憂いを帯びたように斜め下、

伏し目がちの睫毛までもが美しい。

 

それは、ご自身がご自身を認識しているから。

人生という形のない地図の中で、ご自身の立ち位置を正確に掴んでいるから。

今の、自分は、ここに居る。

それを座標的に認知しているから。

 

茶室とは不思議な場所で、このお部屋に入ると、肩書きは全て掻き消されてしまう。

素の『そのひと』が現れる。

そして茶室ならではの上下関係がある。

 

私たち講師はお辞儀を受けてはおりますが、生徒さま達に平伏してもらいたい訳ではないのです。

人格が上とか、能力が上とか、よもや思ってはおりません。

ではなぜお辞儀にこだわるのかと言うと、そういうシステムだから。

 

人は様々なシステムの中で生きいます。

システムを深く理解すると人間関係が円滑になり、組織が上手く回り、自分も生きやすくなります。

茶室では必要な時に、必要な事だけを行い、あとは集中してもらいます。

静かに美しく。

 

いまお客様がこう動いたから、自分はこう動く。

半東さんがこう動いてくれたからスムーズに事が運んだ。ありがたい。

でもお礼はあとで言おう。

いまはその時ではない。

いまは目の前のことに集中…。

茶の湯は自分ひとりでは成り立たない。

皆さまが居られてこそ。

どうもありがとう…

 

自分に自信がつくと頭が下げられる。

ありがとうと言える。

間違えた時は素直に謝れる。

自分が悪かった。申し訳ない、と言える。

 

自信のないうちは、人に頭を下げられない。

下げたくないと思う。

『なぜお金を払っている自分が下げなくてはならないのか?そちらが下げるべきではないのか?』

と疑問に思う。

『自分はお客様ではないのか?』

と思う。外の世界ではそうだから。

 

私も習い始めはそうでした。

『はい。ここでお辞儀してください。』

と言われ、ちょっとムッとしました。

(だったらサービスして深々と下げてみよう)

などと浅知恵を出すと

『それは深すぎる。もう少し浅くして』

(サービス要らないの?よく分からないなぁ…)

 

これが『我』

我が張っていると人間関係が上手く行かない。

現代では『生きづらさ』というキーワードがよくメディアなどに上がりますが、これを『我』と言い換える事ができると思います。

 

我が去ると楽になるのだけれども、これがなかなか自分から去らない。

変なプライドが自分から剥がれない。

それを、お辞儀が少しずつ少しずつ剥がしてくれる。

身体を傾けて、戻して、という繰り返しによって少しずつ剥がしてくれる。

すると本来の輝く自分が現れ出る。

美しいお辞儀が自分を創る。

2023-04-22 16:57:00

●全身で生きる

よし庵のお稽古は常に進化しています。

それは講師である我々の、人生に対する理解が深まるからです。

茶道も、和菓子も、懐石料理も、着付けも常に進化しています。

 

最近の大きな進化が『全身で生きる』こと。

全身を連動させて、全身で茶道をする。

『ぞんざいに生きるな』ということに通じます。

まさに禅、そのもの。

 

数年前の宿坊体験を思い出しました。

体験期間内には、座禅のほかに写経をしたり、護摩焚きに参加したり、掃除をしたり、静かに一言も口を聞かずに食事をしたり、と色々な体験をしました。

宿坊は山の頂上にあり、幾つもの建物を移動しながら数日間の修行を体験しました。

その時に一人の女性と知り合いました。

女性は移動する際、必ずゆっくりゆっくり歩を進めました。

何をしているのか尋ねたところ、

『歩いている』

と至極ご尤もな答え。

『歩いているときに、どの筋肉がどう連動して動くのかを観察しながら歩いているのだ』

と答えました。

 

女性は数年前にブータンへも宿坊体験に行ったのだそうで、その時に僧侶に厳しく叱責されたと言うのです。

『簡単に歩くな』と。

『歩けることを当然だと思うな。ありがたいと思って噛み締めながら歩け。足を一歩踏み出すだけでも全身が連動しているのだ。それを知れ。』

 

すごく大事なことを言っているとその時にも思いました。思ったけれども当時はまだ若さのせいかピンときませんでした。

今は、分かる。

 

例えば年齢を重ねると、処処の感覚器官が衰える。目、耳、手先、足先、関節…。

痛い。痺れる。疲れる。

(以前と違う…。私どうなっちゃうの?)

すごく不安になる。

ネットで調べると感覚の細胞は再生しないとのこと。

じゃあ、じゃあ、どうすれば良いの?

答えが出ないまま、そんな不調が普通になる。

普通になるから疑問にも思わなくなっていきました。

 

そんな折、私は新しい趣味『書』に出会いました。

夢中になって2年目。

休日に週1回程度の練習でしたが、書の先生から

『飛躍を望むなら毎日練習しないとダメですよ』

と進言されました。

5分で良いから毎日練習しなさい、と。

ああピアノと同じだ。

何でも同じなんだなぁ…と思って2ヶ月ほど続けたところで

『良いですね』

とお褒めの言葉をいただきました。

その時に分かったのが身体の使い方。

私は手や腕だけで書くのだと思っていました。

でも、違いました。

筆を持つのは確かに右手だけなのですが、実は全身を連動させて書いているのでした。

手だけで書こうとすると、思ったところに思ってような線が書けません。

力を抜きたいのに力が抜けません。

手だけで書くには限界がありました。

全身全霊で書くのだと気付いてからは、少しずつ線の精度が上がってきました。

ほんの小さな力で、筆のあらゆる面を使って繊細に書く。その面白さに気付きました。

自分の体が少しずつ自分のものになっていくような感覚が楽しくて仕方ありません。

 

『これは書道に限らない。茶道も同じでは?』

と思っていたら宗嘉先生の茶道も進化していました。

 

『茶道はやっぱり武道なんだよね』

宗嘉先生が言いました。

宗嘉先生の趣味に武道があり、身体の使い方が同じだと言うのです。

やはり毎日の練習が欠かせないとのこと。

ああ、だからか!

細川幽斎が、武道も茶道も書道も和歌も、なんでも得意だったのは結局一つの道から様々なことが派生しているからだったんだ!

 

ん?

じゃあ、わたしの身体の不調も、もしかしたら変わるかも。

と思って毎日5分のエクササイズを続けてみました。続けてみて1ヶ月。

思った通りでした。

視力が少し上がりました。

ピントが合いやすくなりました。

 

ちょっとしたことだけど、とても嬉しい。

知恵を付けて自分に愛情をかけて生きていくことに幸せを感じました。

全身で生きると、人生が楽しい。

2023-04-17 13:28:00

●月🌙と木🌳と

いずれ木は朽ちる。

木造建築を主とする日本人には大きな課題でした。

建物を守るべく木材を少しでも長持ちさせるために、日本人は伐採するタイミングを心得えていたと言います。

 

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●新月伐採法:しんげつばっさいほう

 

これも前述の建築家の方からお聞きしました。

木は月の周期と共に成長をするそうです。

満月の時期は土からたくさんの養分を吸い込み

新月の時期はその養分を土に戻す。

養分とはでんぷん(ブドウ糖)です。

虫の好物です。

木材にブドウ糖が残っていると建物となってからも虫害に遭いやすいのです。

伐採のタイミングはブドウ糖が木から抜けている新月の真夜中に行われていたようです。

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なんてすごいんだ。

どうしたらそんな事に気付くんだ。

この話をお聞きした時に本当に驚きました。

いつからなのだろう、人間がこんなに驕ってしまったのは…

『最新の科学では…』などと聞くと、科学の進歩は凄まじいなと思うけれど、もしかしたら太古の人々の方が最新の科学を大いに生活に取り入れていたのではないのか。

 

このような情報は、きっと1世代では確立できない。まず月の記録を続けなければならない。

紙に書けばいいじゃないのと思うかもしれないけれど、紙は簡単に手に入らない高級品です。

庶民が紙を手に入れられるようになったのはせいぜい江戸中期。それも都市部において。

太古の昔からそれまでの間は、その都度天才的に記憶力の良い人がデータの蓄積をしていたのではないかと思います。

数世代かけて専門集団が役割分担しながら因果関係を構築していったのではないかと。

そしてその情報を次の世代、次の世代へと大事に継承していったのではないかと思うのです。

 

そして次に思いを馳せたのが、月との関係。

月が樹木とそんな風に関わっているとは想像もつきませんでした。

植物の成長に影響力があるということは、私たち人間も気付かないうちに大きな影響を受けているだろうと。

月経の周期や、出産のタイミングが月と関わっていることは有名ですが、それ以外にも細かな影響を私たちは受けているように思います。

 

見えない糸で全てのものが繋がっている。

植物や動物などだけが生き物なのではなく、

岩石や光もまた生き物で、

音とか色とかも生きているんだろうなぁ…

と思いました。

これが宗嘉先生の言う『風水』の本質なのではないかと思います。

 

全てのものが繋がっているんだよ。

繋がっていることに気付いてね。

気付いたらちょっと気をつけて行動してね。

他人から見えていないから平気とか、そういうことではなくて。

邪険に行動すると空間が乱れるの。

行動が乱れると心も乱れるの。

一人が乱れるとみんな乱れるの。

たまには乱れても良いけど直し方を覚えてね。

それにはまず、繋がっていることに気付くことだよ。

風水とはそういうことなのかなと思いました。

 

木火土金水:もっかどこんすい

 

若い時には気付きもしなかった。

それが…、体調が揺らぎ始めると実感する。

自分も自然の一部だと。

自然を感じながら今日も茶を喫む。

2023-04-15 16:41:00

●木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)と基礎建築

先日のお稽古終了後に、生徒さまと古事記の話になりました。

 

木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)と

石長姫(イワナガヒメ)のくだりです。

 

『どうしてニニギノミコトは石長姫を返しちゃったんでようねぇ?せっかく永遠の命をくれたのに…』

 

木と石…

ん?これはもしかして基礎建築の話なのかな?

以前、建築家の方から建物の基礎の話を聞いたことを思い出しました。

 

『神社仏閣と一括りで考える人も多いけれど、建築様式が全く異なります。何もかも違うのですが、一番の違いは基礎作りです。

神社は堀立式(ほったてしき)

仏閣は礎石式(そせきしき)』

 

・堀立式(ほったてしき)とは、地面に穴を空けて柱を立て、その柱を支えにして建物を築く方法。

 

・礎石式(そせきしき)とは、地盤を固めた後に大きな石を据え、その上に柱を立てて建物を築く方法。

 

日本は古くは堀立式を採用していて、仏教の伝来と共に礎石式の技術がもたらされました。

しかし今でも伊勢神宮は堀立式で社殿が作られています。

出雲大社も17世紀以前は堀立式だったそうで、それ以降は礎石式による建築です。

巨大建築には樹齢2000年級の巨木が使われるのですが、相次ぐ戦や人口の増加により、江戸時代には日本から巨木が姿を消していきました。

もしかしたらそのような理由によって基礎建築の方法を変えざるを得なかったのかもしれません。

 

この話を建築家の知り合いから聞いたのちに、ちょうどテレビ番組で神社の宮大工と仏閣の宮大工の対談を目にしました。

 

(神社の宮大工)

堀立式(ほったてしき)は地面に木を直接触れさせるため、湿気を吸い、どうしても朽ちる。

朽ちるのを覚悟で建て、定期的に遷宮を行うことで技術を次世代に継承していくのです。

『死と再生』という、誰も逃れることのできない運命が語られていると思います。

 

(仏閣の宮大工)

はぁー。面白いですななぁ。

仏閣は礎石式ですから基礎から腐ることはないんですな。その代わり所々朽ちたものを修理して次世代に繋いでいくんですわ。

しかしどちらにせよ、次世代に続いていく

『永遠』をテーマにしているんですなぁ…。

 

 

木と石。

木は、神宮の社殿へと形を変えて心を潤す。

石は、苔むす巌として歌われて心に宿る。

 

どちらも近しい存在として私たちと生きてきた。

ほら、手のひらの中にも…。

翠緑の美しい喫みものを、土の碗が守っている。

永遠を味わった一服でした。

2023-04-02 17:05:00

●増える着物仲間

また一人、また一人とよし庵の着物仲間が増え続けています。

入門されて一年未満の生徒さまがそれぞれお着物をお召しになってご参加くださいました。

 

『わー!〇〇さん綺麗✨』

『□□さん、可愛いっ❣️』

 

着物には力があるといつも思います。

外側からその方の精神をも変えてしまいます。

真っ直ぐに矯正するのでしょうか。

背も伸びるし、血流も良くなるように思います。

そのせいか、お着物をお召しになると皆さまお顔が色白になるように感じられるのです。

半衿が白いから、その白さがお顔に反射しているのかも知れません。

色々な要素が複合的に働いて…

つまりは美しくなられます✨

 

オーラも上がり、お点前も格段に上達されます。

忙しい中、着付けと茶道にお時間を割いてくださる。工藤は感謝の気持ちでいっぱいです。

 

それぞれ茶事やお稽古を事前から楽しみにして、お着物を選んでくださったり、身に纏っておられたのでしょう。

ウキウキする気持ちがこちらにも伝わってきて、嬉しく嬉しく拝見しました。

 

先日、年下の後輩生徒さまに、先輩生徒さまがピッタリと寄り添って

『可愛いわ。可愛いわ💕』

としきりに褒めていらっしゃいました。

本当に可愛かったです😊

そして宗嘉先生が言うには、このように褒めているご本人もまた、より美しくなられるとのこと。

ひとを褒めることは自分を褒めることに繋がると言うのです。

心から誉めている時の表情や言葉は本当に温かいもので、先輩生徒様のオーラの高まりを私も直に感じたのでした。

 

年齢が近かったり、年長者だったりする場合には、褒め言葉は却って失礼になることもあるので控えております。

その代わりアイコンタクトでお伝えします。

先日のお茶事でも、列席者の皆さまはそれぞれお気に入りのお着物をお召しになられて、お茶室に春を運んでくださいました💐

そして皆さま同士で

『うん、うん』

と美しさを認め合っておられたのでした。

敢えて言葉を控えたその姿もまた、大人女性に相応しく美しいものでした。

 

憧れの着物をご自身で好きな時に着る。

その技術を身につけましょう。

よし庵には茶道のための着付け教室もございます。

 

帯結びでお教えしているのは、一重太鼓(名古屋帯)と二重太鼓(袋帯)のみ。

単発ですのでご自身のペースでお好きな回数にお稽古をお申込みいただけます。

・リモートは日曜日の14:00開催。

・対面は火曜日と土曜日の16:00開催。

詳しくはお申込みフォームまたは、公式ラインにてお問い合わせくださいませ😊

 

2023年の4月。

いよいよ新年度が始まりました。

新しい扉を一緒に開きませんか?

よし庵には、様々な和の講座がございます。

リラックスして心から楽しんでいる時にこそ、個々の能力が花開きます🌸

確かな技術と温かい雰囲気を以って皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

《よし庵の講座》

茶道教室

和菓子教室

懐石料理教室

お稽古茶事

着付け教室