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2020-10-12 20:33:00

dive86

 今までいつまでも寝ていた僕が、みんなより早く起きて家の前の掃除をするようになり、掃除が終わると青嵐の家に行き、一緒に功夫をする。青嵐が教わっているのは八極拳という拳法らしい。僕は見習の見習いなので、まずは体力づくり。山道を走ったり、重たいものを持ち上げたり、足腰を鍛えるらしい。月に何回か町に行って、道場で八極拳を習ってくる青嵐に型を習う。八極拳は相手の向こう、八極まで突き抜けるような打撃を基本とする拳法なので、脚力が非常に大事なんだそうだ。相手に突進するのでそれに耐えうる上半身を作るのも大事。青嵐とぶつかりあっこをして体を鍛える。相手の打撃に耐えうる体を作るらしい。2時間ぐらい稽古をして家に帰る。今度は家の仕事を手伝う。家で使う薪を割る。お父さんに教えてもらってから、僕の仕事になった。これも結構、体力づくりになる。しかし、この訓練も春分の日が近づくと、ある理由からできなくなる。

 うちは、小さいが茶園を経営していて、お父さんが手入れをした茶畑からとれるお茶は、とても評判がよく、『蒙頂甘露』の中でも上級品になる。茶摘みの時期になると家族総出で畑に向かう。僕も小さいころから手伝っている。近所の人たちも、時期になると手伝いに来るぐらいで、早朝から一気に摘まないと味が落ちる、とお父さんは言っていた。春分の前ぐらいから摘み始めるのだが、小さな芽を手摘みするのでそんなに量が取れない。分前(春分の前)のものは味わいも淡いが、夏に向かっていくにしたがいしっかりしてくる。蒙頂甘露は最も歴史のある緑茶で、葉は細く締まっていて、白い産毛があるのが特徴です。高温に沸かしたお湯を少し冷ましてから入れると、何とも言えない甘い香りのするお茶です。飛の家のお店でも使ってもらっているが、うちのお茶は『いいお客さんにしか出さない』と言っていました。僕の自慢です。

 今年も春分の日が近くなり一時訓練は中止。茶摘みが始まる。僕の家は、茶園の入り口から続く道の突き当りにあり、茶園のどこにいても、その道を通っていく人が見える。だから家がもぬけの殻でも泥棒の心配はなく、皆で茶摘みがしていられる。家の隣には殺青(釜炒り)や、揉捻(じゅうねん)(茶葉を揉み、水分の均一化を図るとともに、成分が出やすいようにする。)、乾燥させる作業場がある。お父さんが、殺青をするときは真剣勝負です。どの位の時間炒るかで出来上がりが、変わって来るそうです。揉捻は僕も手伝います。お母さんとお姉ちゃんが教えてくれました。

「いい、行徳。こうやって優しくもんで ”美味しくなーーれ” ”甘ーくなーれ”と思いながら揉むのよ。」

と、お姉ちゃんは言います。お姉ちゃんは一生懸命仕事をしています。僕も見習って呪文のように心の中で唱えながら茶葉を揉みます。そして、乾燥は、ざるに広げて干します。こうして茶葉が出来上がると問屋さんが買い取りに来ます。

大分、暖かくなって来た5月、荷馬車に乗って問屋さんが茶園の道をのぼってきました。

 「こんちわー、今日も暖かいねー。おお、行徳も頑張ってるね。えらいえらい。跡取りがちゃんと仕事を覚えないとな。」

 「おじさん、見てよ。僕こんなに筋肉がついたんだよ。」

僕は、そう言って腕の筋肉を自慢げに見せた。

 「こいつは、すごい。これならお父さんも早く、楽ができそうだな。でも筋肉だけじゃ、お茶はうまくならないから、お父さんの言うことをよく聞くんだよ。」

 「わかってるよ。今日のお茶も、美味しいよ。なんたって、僕とお姉ちゃんが心を込めて揉捻したんだ。だから、うんと高く買っておくれよ。そしたら僕は町の道場に通うんだ。」

 「わかったわかった。行徳は元気だな。じゃあ、自慢のお茶を試させてもらおうかな。」

 早速お父さんと作業場に入っていった。僕はお姉ちゃんと荷馬車を引いてきた馬に、水をあげた。お姉ちゃんが馬の首をさすってあげるととても気持ちよさそうにしている。水をたっぷり飲んで一休みって感じだ。少ししたら、お父さんたちが出てきた。お父さんも笑っている。僕が期待を込めた目で見ていると

「おお、行徳。飛び切りうまかったよ。これで道場に通えるかもな。」

おじさんがお父さんの方を見るとお父さんがうなずいていた。やった、これで青嵐と一緒に町の道場に通える。それから僕は週に一回、青嵐と町の道場に通い、武術を習いに行くことになった。

dive87に続く・・・

 

 

2020-10-11 19:13:00

dive85

 ドン、ドンドンドン、ドン、ドンドンドン

あくる朝、けたたましく戸を叩く音で目を覚ました。いったい何の騒ぎだろうと起きると、村長の声がした。

 「ワシだ、おい、村長の陳だ。起きろ。おい。早く起きろ。」

お母さんが、起きていて扉を開け

 「おはようございます。村長さん。いったい何事ですか、こんなに朝早く。」

 「おお、おはよう。あんたのところ娘に用があってな。昨日うちの娘が変なことを言いだしてな。それで聞きに来たんだ。昨日うちの娘が岩場の上にしか咲かないあの青い花を持っていたもので、あんな危ないところに一人で行ったのかと聞いたら、だんまりでな。これは何かあるなと問いただそうと腕を引き寄せようとしたんだ。すると着物に血がついていた。ははーん、どこかけがをして叱られると思って黙っているのだなと、どこをけがしたんだと見てみてもどこにもけががない。他の者の血かと、これはいかんと問いただしてみたところ、ついに白状した。岩場から落ちてけがをしたが、あんたのところの娘が手をかざして祈ったら、みるみる治ったと言うじゃないか。そんなバカなことを、と言ったが、玲玲は頑として本当だと、泣き出してしまった。もし本当ならすごいことだ。この村に霊能力者が、それも凄腕の。それで確かめに来たんだ。」

 「うちの美雪がですか?村長さんそんなバカなことがあるもんですか。美雪なら昨日も畑仕事をしていましたよ。」

 「いいから、美雪をだせ。直接ワシが聞いてやる。」

そう言ってきかなかった。村長は悪い人ではないのだけれど、昔から強引でみんなこまっていた。僕も起きて様子をうかがっていたらお姉ちゃんが柱の陰で困っていた。僕はお姉ちゃんに

「玲玲のやつ、お姉ちゃんのこと言っちゃったんだ。助けてやったのに、ひどい奴だ。お姉ちゃん、今度は僕がお姉ちゃんを助ける番だ。任せておいて。」

そう言って、村長のところに行った。会わせろ会わせろ、言っている村長の前に立ち

「村長さん、ごめんなさい。実はあの花を取って落ちてけがをしたのは僕なんだ。危ないところに玲玲を連れて行ってごめんなさい。落ちたはずみで玲玲の頭にぶつかって、ちょっとふらふらしていたからあまり覚えてないのかも。僕の鼻血が玲玲の服に着いたなんて知らなかった。お姉ちゃんは、汚れた僕を抱えてきた玲玲を拭いてあげただけです。玲玲に花のことを言うと大人に叱られるから黙っておいてくれ、と頼んだのも僕なんだ。ごめんなさい。玲玲やお姉ちゃんを責めないであげてください。ごめんなさい。」

「・・・・・そ、そうなのか?じゃあ、霊能力者じゃないのか?そうか・・・わかった。そうだよな。そんなことあるわけないか。」

「ごめんなさい。もう危ないことはしません。ごめんなさい。」

僕が何度も謝ると、村長はあきらめてとぼとぼと家の方に帰っていった。よかった。でも、その後、お母さんに危険な場所に行ったことをこっぴどく叱られた。でもお姉ちゃんは、ほっとしていた。そうだ。いつも僕が助けられてばかりなんてだめだ。それは、自然界の法則に反する。お姉ちゃんが言っていた。与えてもらったら、今度は与えなきゃね。だから、お姉ちゃんは僕が守るんだ。そのためには頭もよくなって、強くならなくちゃ。そうだ。青嵐が習っている拳法を教えてもらおう。玲玲に勉強も教えてもらおう。

 こうして、僕の計画は始まった。

dive86に続く・・・・

 

 

2020-10-09 18:07:00

dive84

 美雪姉ちゃんは、時々お花や、木に向かって目をつむり手をかざしてじっとしていることがある。僕は気になって、何をしているのか聞いてみた。

 「お花や木から活力・・・うーーん、あふれてくる力のようなものをもらってるの。それを今度は元気のないものにあげたりしているのよ。この前行徳が助けてあげた鳥も元気がなかったでしょ。だからこうしてもらった力をあげたのよ。木も花も、石や水もみんな、この世界のものは力を与えてくれる。元気なものが与え、元気のないものがそれをもらう。この世界はそうやって回っているの。お姉ちゃんはその手助けをしているの。行徳はぴちぴちのお魚が好きよね。その元気をもらって行徳は大きくなるの。でもバッタみたいに捕まえて遊ぶとかは、ただ元気を奪うだけで、可哀そうでしょ。だから、もうしちゃだめよ。」

「うん、わかった。ねぇ、お姉ちゃん。僕にもできる?僕もお姉ちゃんみたいにやりたい。僕にも教えてお姉ちゃん。」

「うーーーん、これは教えてできるとかいうものじゃないの。ごめんね。お姉ちゃんどうやって教えていいかもわからないの。」

「やだ、やだ。僕もやりたい。やりたい。やりたい。」

「行徳!これは遊びじゃないの。あなたには見えない世界のお仕事なの。だから、わがまま言わないで。お姉ちゃんを困らせないで。」

「うーーーん。わかった。じゃあ、代わりにお話しして。お姉ちゃんのお話大好きなんだ。」

「わかってくれてありがとう。じゃあ、今日は、何のお話がいいかな?昔々の話がいいかな?異国の話がいいかな?それともずっと先の未来の話がいいかな?」

「異国の話がいい。」

「そう。じゃあ、そうね、ここ清の四川よりずっとずっと東の国。日本という国のお話。昔々あるところに・・・・・」

 僕はこうやってお姉ちゃんにいろいろ不思議な話をしてもらって、お姉ちゃんにしか見えない世界のことを想像していた。そして原っぱに遊びに行っては、花に手をかざし、目をつむるというまねをしていた。まったく何にも感じないが、僕もその世界の住人になってお姉ちゃんに近づいた気がした。

 僕も8歳になり、毎日そんな日が続いて楽しかったある日のこと、青嵐や飛も家の仕事の手伝いをしだし、皆で集まって遊ぶことも少なくなり、僕と玲玲だけで原っぱにいた時のことだった。いつものように花を見ていると、玲玲が

「あの川の岩場のところに咲く青いお花が欲しいの。」

と言って川の方へと僕を誘った。僕はお姉ちゃんに、川に行くのはもう少し大きくなってからと止められていたので、やめようと言うが玲玲は一人でいってしまった。そわそわして、どうしたものかと悩んだけれど、玲玲にもしものことがあるといけないので後を追いかけた。

「男のくせに意気地なしなんだから。」

玲玲がぶつぶつ怒りながら歩いている。追いかけるもどんどん岩場の方へ行ってしまう。ドキドキしながら追いかける。危ないよと話しかけるも、その言葉を振り払うように岩場をのぼっていく。手や足を滑らせたらどうしようと下でオロオロしている僕を挑発するように花に向かっていく玲玲。何とか花にたどり着き、花を懐に入れて降りようとした瞬間、岩場の中にいた蛇が出てきた。それに驚いた玲玲が慌てて手を放した。バランスを崩した体を支え切れるほどの腕力は玲玲になかった。2間(約4メートル)ほどの高さから岩場を転げ落ち何とか僕が受け止めたが、僕も倒れてしまった。気が付くと玲玲は頭から血を流し腕を痛めているようだ。僕の体も痛かったけど、玲玲を運ぶ方が先だと思うと何とか動けた。急いで玲玲をおんぶして家に向かい、お姉ちゃんを呼んだ。すると

「どうしたの、行徳。まあ!玲玲なんてこと!すぐそこに寝かせなさい。」

そう言うと、玲玲にどこが痛むか聞き、手をかざして祈りだした。お姉ちゃんが

「玲玲、約束して私がやることは絶対他の人に言わないでね。」

そう言って集中している。

その様子を見ていた僕は、家に着いたことでほっとして眠ってしまった。どれくらいたったのだろうか、気が付くとお姉ちゃんが僕にも手をかざしていてくれていた。

「お姉ちゃん、ごめんなさい。玲玲が・・・僕止めたんだけど、聞かなくて・・・ごめんなさい。・・・」

そう言って泣き出す僕をお姉ちゃんがしっかりと抱きしめて

「よく頑張ってここまで運んできたね。えらかったね。もう大丈夫だからね。」

と言ってくれた。叱られると思っていた僕は、ほっとしたのと疲れで泣きながら眠ってしまった。

その後、玲玲は歩けるぐらい元気になったので僕が家までおくっていった。玲玲にはお姉ちゃんに直してもらったことは他の人には絶対言っちゃだめだよと念を押して僕は家に帰った。

dive85に続く・・・・

2020-10-06 08:52:00

dive83 シーズン3『白き光と黒き炎』

 「お姉ちゃん、お庭で鳥さんが倒れてた。治してあげて。」

僕は行徳、6歳。僕には5歳年上のお姉ちゃんがいます。お姉ちゃんは僕にすごく優しくしてくれます。今も何かにぶつかったのか地面に落ちてパタパタしていた鳥さんをお姉ちゃんが治してくれています。お姉ちゃんが手をかざしてお祈りをするとすぐに元気になります。僕の自慢のお姉ちゃんです。でもお姉ちゃんは僕に言います。

 「行徳、このことは絶対誰にも言っちゃだめよ。言ったらもう一緒にいられなくなっちゃうからね。」

僕はなんだかわからないけど、お姉ちゃんがそういうから絶対誰にも言いません。お姉ちゃんがいなくなっちゃうといやだから絶対に言いません。あっ!鳥さん治った。また飛んで行ったよ。よかったね。

 僕は毎日お姉ちゃんと一緒に遊んでいたいけど、お姉ちゃんはお家のお仕事を手伝っているのでそうもいかないから、いつもは近所の子たちと遊んでいる。村長さんのところの一人娘で玲玲(リンリン)と鍛冶屋の兄弟ガキ大将の青嵐(チンラン)、優しい白嵐(バイラン)、中華料理屋の子、太っちょの飛(フェイ)、いつもこの5人で遊んでいる。玲玲はうちのお姉ちゃんが大好きでよく家に来ます。そして僕とも一緒に遊んでいると言うと、青蘭が怒ります。青蘭は玲玲が好きです。でも玲玲はあまり好きではありません。すぐ怒るからいやだって。僕は白嵐と仲良しです。白嵐は虫や動物が好きな男の子で家で飼っている馬の世話をしたりしています。馬も白嵐のことが大好きで小屋に近づくだけで顔を出して脚をガシガシしています。一緒に遊びたいのだと思います。

 今日もいつもの原っぱで遊んでいました。玲玲が花で輪っかを作るというので僕と白嵐が花を探して積んでいると、白嵐がバッタを見つけた。僕も一緒になってバッタを追いかけた。するとバッタが草にとまった、僕の正面だ。バッタがこっちを向いてる。僕が動くとバッタが逃げようとする。動けない。そんな僕を見てバッタがいることに気が付いた白嵐が、バッタの後ろからとびかかろうと構えた。僕はバッタを見たり、白嵐を見たり。ドキドキする。白嵐と僕の目が合った。僕がちょこっとうなずき、バッタに目線を向けた瞬間、ぶわっと白嵐が飛んだ。草むらがバサバサした。バッタはどこだ。バッタ。近くの草むらを見るがいない。あたりの草をけ飛ばすが出てこない。白嵐が起き上がってニヤッとした。捕まえたのだ。なんてこった。取られちゃった。白嵐がバッタに糸を結んで服にとまらせていた。うわーーー!僕も欲しいなー。そう思ってバッタを探していると、

 「あんたたち、何やってるの?花はどうしたの?」

と、玲玲が怒っている。あちゃー、バッタ欲しいけど玲玲怒ってるしなー。そこへ遅れて飛がやってきた。なんだか懐がぱんぱんだ。なんだろうと思ったら、

「父ちゃんがおやつに持って行けって、みんなの分もくれた。」

そう言って懐から真っ白な饅頭を出した。ふかふかだ。飛のところの饅頭はとっても美味しい。僕は、

「飛はいいな。こんなにおいしい饅頭をいつも食べられるなんて。うらやましいよ。」

そう言うと

「うちの父ちゃんの料理は清国で一番だ。毎日美味しいご飯を作ってくれるんだぜ。いいだろ。うらやましいだろ。でも怒ると怖いんだぜ。昨日なんかちょっとお店のものをつまみ食いしたらおしりを何回もぶたれた。」

そう言って下履きを下げておしりを出して僕らに見せた。ぐわははははは、僕たちはそれを見て大笑いをした。ただでさえでかい飛のおしりが2倍にはれていた。するとそれを見た玲玲が、

「女の子の前でおしりを出すなんて、下品だわ。最低。」

と言ってあっちに行ってしまった。でもしっかり饅頭は持って行った。玲玲も飛のところの饅頭が大好きなんだ。

 みんなで饅頭を食べていたら、あっちの川で釣りをしていた青嵐が魚を持ってやってきた。青嵐は釣りが上手でいつもいっぱい釣って来る。

「兄ちゃん今日も大漁だね。飛のところに持っていくの?」

「ああ、今日は大きいのが釣れたから、ちょっと高く買ってもらえるかも。小さいのは行徳にやるよ。」

「いつもありがとう、青嵐。うちのお姉ちゃんも美味しいって喜んでるよ。」

じゃあ、また明日。と言ってみんな家に帰っていく。青嵐たちと飛は飛のお店に、僕と玲玲は僕の家に向かった。なんだか玲玲がむくれている。なんだろう。そう思いながら家に帰るとお姉ちゃんがいた。

 「お帰り!あれ、玲玲どうしたの?」

 「美雪お姉ちゃん。行徳がバッタに夢中になって花を取ってきてくれないから、首飾りにしようと思ってたのに、こんなに短くなっちゃった。」

そう言ってお姉ちゃんに渡した色とりどりの花輪は、頭の上にちょこんと冠のようにのせられた。

 「ありがとう、玲玲。私、とっても嬉しいわ。これからも行徳と仲良くしてやってね。」

 さっきまでむくれていた玲玲が笑っている。そんな玲玲を見て、僕ははっとして肩を掴んだ。

 「どうしたの、行徳」

玲玲がびっくりして僕を見る。パッと肩から手を放し玲玲に見せた。肩にとまっていたバッタを捕まえたのだ。僕は自慢げに見せたのに玲玲は

 「ぎやぁ―ーーーーーーーーーーーー!」

と言って一目散に家に帰っていった。それを笑って見ていたお姉ちゃんが

「行徳、可哀そうだから逃がしてあげなさい。」

と言った。白嵐のより大きかったのになぁ。仕方がないので逃がしてやった。

「お姉ちゃん青嵐がまた魚をくれたよ。」

「あら、じゃあ、今日は行徳の好きな魚のスープにしようか。」

僕の一日はいつもこんな感じだった。

dive84に続く・・・・

 

 

 

 

 

2020-10-02 19:49:00

dive82(シーズン2最終話)

 さあ!本日開店!チャイニーズダイニング呵呵にようこそ。

 私は守山藍生、職業中華料理店オーナーシェフ。そうは見えないかもしれないけど47歳。みんなが、元気になれるような料理を作ります。妻は王麗華、中国生まれの食いしん坊です。甘いもの大好き、笑顔の可愛い、私の大好きな人です。

 うちのおすすめを紹介します。まずは豚の角煮。とろとろの角煮は最低三日かけて作っております。できるだけ脂分を抜きうまみを吸い込ませて作った角煮は大変ヘルシーになっております。特製のマスタードソースかけると、またこれがさっぱりしておいしい。角煮には味が2種類あります。正確には3種類ですがもう一つは、またあとでご紹介いたします。一つ目は王道の醤油味。醤油の甘辛は万人に好まれる味です。そして二つ目は香醋味。これは豚の脂身にぴったりな、さっぱり系の香醋を使った甘酢仕立て。一度食べたらやめられない。どちらもご飯にぴったり。3種類と言ったのは三つ目は単品ではなく、ご飯に乗ったタイプだからです。これもみんな大好き角煮カレー。ご飯の上に呵呵オリジナルスパイシーカレーで煮込んだ角煮がごろごろしており、その上にはなんと温泉卵。もう無敵でしょう。

 麺類でおすすめは、なんといっても担々麺。師匠王氏にも認めてもらった濃厚なゴマとナッツのスープにかん水臭の少ないもちもちの中太麺。上に乗るのはシャキシャキの根やひげのない太もやしとニラ。そして甘辛に炒めたミンチがたっぷり。さらに自家製の香り高い自家製辣油。一つ一つ、個性的なものが集まり奏でるハーモニーは得も言われぬ極上の楽園を思わす。一度食べ始めれば、もう一口、もう一口と欲望は最後まで止まらない。余韻を楽しめる一杯に仕上がっております。また、もっと濃厚な極濃スープタイプ、ミンチがゴロゴロ肉に変わったタイプ、カロリーが気になる方にこんにゃく麺タイプもご用意しております。また、師直伝の汁なしタイプには、もっちりした小麦香る全粒粉使用の太麺を使用。こちらは、ふぁっさりごまと砕き落花生がかかった混ぜ混ぜタイプです。こちらにもシャキシャキもやしとニラがのり、ミンチまたはゴロゴロ肉を選ぶことができます。ガツンと辛味を感じたい人にはこちらをお勧め。

さて、看板料理はこのくらいにして、本来の私がおすすめしたいのは、黒板に書かれた日替わりのおすすめ料理。こちらはその日の仕入れによって変わるので、あなたが来る日に何があるかはわかりませんが、とにかくその日に一番食べた方が良いのはここに書かれた料理たち。約30年中華料理に携わり、四季折々、日本各地を旅していろんな食材に触れてきた私ならではの料理が此処にあります。他のどの店でも食べることができない料理です。どれを食べても間違いのないものに仕上げております。あなたが来た日に次に来た時にはもうありません。それこそがその料理との運命の出会いです。旬が過ぎたら、仕入れの時に悪天候だったらもう2度と出会えないかもしれません。しかし、そんな素晴らしい出会いがあるお店にあなたは行きたくないですか。いつもの物も美味しい。今日だけのものはもっと美味しい。食べることが大好きな私がこの時期美味しいこの料理で皆さんに元気になって呵呵(アハハ!)と笑ってほしいと思い、毎日考えて作る黒板のおすすめ料理、一度お試しを。

 長々と説明してきましたが、食べるのが大好きな人、食いしん坊なあなたを満足させたいという思いでやっております。あなたが御来店くださることを心よりお待ちしております。

あ、最初のお客様がいらっしゃった。

「いらっしゃいませ!」

名古屋市守山区川北町にちょっと変わった中華料理が船出をいたしました。さて一体この先どうなるのやら、この続きはシーズン?になるのやら・・・・

シーズン2『ダイバーの血統』終了

次回シーズン3『白き光と黒き炎』が始まります。

ここまで読んでいただいている皆様、誠にありがとうございます。

ぶっちゃけこの作品は面白いですか?書いてる本人はノリノリで(時折登場人物に感情移入しすぎて泣きながら)書いておりますが、皆さんは楽しいのでしょうか?毎日ブログ書くのって闇に向かってボールを投げるがごとく、誰がどんな反応をしているのか全く分からないので、何となく不安になるものです。たまにはキャッチボールもしたいものです。何か、コメントいただけたらと思っております。でも、それによってストーリーが変わるわけではないんですけどね。お手すきでしたらお願いいたします。何せ当方初めて小説なるものをかいております。至らない点いろいろあると思いますが、ご指導よろしくお願いいたします。

                          

                                                   呵呵大将  

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