ブログ

2020-04-13 21:54:00

さすらいの2泊目

 今日はこれまた大好きな福井県。

福井に行ったのはもう何度もあるけど、あれはモビリオスパイクを買って初めての冬の旅。

民主党政権下高速道路休日1000円乗り放題という旅好きにはもってこいの日でした。

日曜日24時までに乗れば1000円なので昼の間に用意をしておき、仕事を早めに切り上げ、守山から逃げるように高速に乗った。

予報で知ってはいましたが一宮サービスエリアでひと眠りして出発しようとしたころには雪でした。

この旅はこの先どこまでいけるかわからないので今日泊まる宿も何も決めずに出発していました。

風の吹くまま、気の向くままとはいえできれば富山までいけたらいいねぐらいのことは決めていました。

北陸道に乗り継ぎ木之元インターを過ぎたころには道路は真っ白。スタッドレスでのブレーキの利き、操舵の具合を確かめながら左車線を先行車との車間距離をたっぷり開けて走っていると地元ナンバーの営業車が120キロぐらいでぶち抜いていく。北陸道は幅も広く圧迫感がなく走れるはずなのに緊迫感たっぷりで走行。夕日がきれいに見える刀根パーキングエリアでちょっと休憩。暖房をかけて運転していると温かさで眠くなってくる。どこを見ても真っ白な世界。ワイパーを止めれば車ごと埋もれていくような感覚。

(あー、雪国の人は冬の間この中で暮らしているのか)と思っている脳の半分は雪国といえば断崖で津軽三味線、波しぶきに地面に倒れ『あんたーーあんた―――』と叫び請う髪の乱れた襦袢姿の女を想像する。偏見のようだが、前に富山出身の子が名古屋に来て冬に太陽を見て一言『富山には帰りたくない』と言っていたことを思い出す。そうなるわなぁー。

気を引き締めて雪の山道を走りだす。峠を過ぎると鯖江の町が見えてくる。福井インターを過ぎたあたりからちょっと天気が回復しだしたと思ったとたん、突然の雹。フロントガラスが割れるほどにたたきつける音に恐怖が増すばかり。富山はあきらめ早々に高速を降り下道で北上

8号線を走っていると、大きな観音像を見つけ思わずそちらに向かっていくと。ショッピングセンターがあったので立ち寄りこの辺りの情報収集がてらうろうろしていると、橋立港が近いことを知り、お腹もすいたので海岸方面進路変更。漁師が経営する魚屋兼料理屋を見つけ早速行ってみました。

一階で魚を販売それを2階で調理してくれるというスタイルでした。そこで初めて香箱めし(セイコガニの混ぜご飯のようなもの)の存在を知り注文しまし。うまそうな真鱈の白子も。真鱈というと東北、北海道辺りでは、はえ縄漁が一般的でいっぱいかかるまで放置してあるため鮮度的には刺身レベルではない。その点北陸では刺し網漁でとっているため鮮度がよく刺身で食べることもある。鮮度というか、いわゆる寄生虫の問題。普段内臓にいる虫が魚が死ぬと身のほうに入っていくため、活〆で直ぐに内臓を撤去しなければならない。できれば血と神経も抜くと保存方法としては完璧ですが。もともと鱈は身に水分の多い魚なので足も速い(腐りやすい)。富山ではこの刺身に真鱈の子をばらして乾燥させたものをまぶして食べることが多い。北陸ならではの昆布締めもあるよ。そういうレベルの真鱈白子は色も段違い。そしてうまい。

ちょっと待つとセイコガニとごはんが出てきて、

『ここに醤油とお酢をかけて混ぜると香箱飯になるよと』説明してもらった。

醤油は地元の醤油で甘口のものだった。愛知県に住んでいると知らない人も多いけど九州、中国地方、北陸では甘口の再仕込み醤油を使うことが多い。九州旅行に行くと刺身醤油も甘口のものが一般的だったりしておいしいよね。この再仕込み醤油はアジアでは一般的で食堂なんかではこれの煮詰めた感じのドロッとしたものが置いてあったりする。海南飯(タイではカオマンガイ、シンガポールチキンライス、みんな同じものです)にかけたりもするよ。台湾でも普通に売ってる。金蘭醤油なんてのは有名だよ。

ご飯の上にカニ身、内子、外子をのせこの醤油にお酢を足しかけ混ぜるとあら不思議、まるでカニ寿司。こりゃうまい。なんだこりゃ。北陸万歳。でもこのセイコガニ資源保持のため漁の期間が決まっていて12月いっぱいぐらいまで(以前は1月半ばまでとっていたんだけどね)ほかの地方は規制が緩かったりします。北海道はタラバと毛ガニ以外は興味がないのかな。地元三河地方は渡り蟹以外に興味なし、まあズワイは取れないしね。

さて腹も膨れたころお店のお姉さんに今日泊まるとこ決めてないんだけどどこかいいところないかなーと聞いてみると。地元の人で温泉に行くのはやっぱり山中温泉あとは加賀温泉郷とは言うけれどあんまり行かないって。じゃあということで目指すは山中温泉。

行くまでにいろいろ地元スーパーに立ち寄り、地元の食材、調味料などを物色。キッコーマンに甘口醤油があるなんて初めて知った。北陸でとれる魚はこの時期(夏場は底引きが禁止)ならではのものがいっぱい。代表は赤ガレイ、若狭カレイ、甘エビ、ガスエビ(トラエビ、モサエビとかいろいろ呼び名があります)などで、地元の人は赤ガレイの煮つけなんかには例の甘口醤油のみで煮つけるっていってたよ。スーパーに行ってわからないことはそれを買っていく地元の主婦に片っ端から聞くこと。これ鉄則。

『私、名古屋から来たコックでどうやって使ったらいいかわからないので教えてほしい。』と言えばだいたい教えてくれます。

調味料なんか、どこのメーカーのものが地元の人に好まれているかは棚に置いてある数、種類を見ればわかるし、

『これどっちがおすすめ?』って聞けば『うちは昔からこれだけ。』とか『こっちはあんまりコクがない』とか教えてくれるし、いい人に当たれば他の地元情報も教えてくれる。私たちは1度旅に出るとこういう食品と情報を車いっぱいにして帰ります。そしてそれを休み明けのおすすめ料理として出しています。作っていくうちに自分の身となっていくので次にこのシーズンが来るのが楽しみになります。地元の人が食べているものを作って食べる、地元の人がどうやって暮らしているのかを一瞬でいいから体験する、それこそが旅の醍醐味。この土地の地理、歴史、風土を知り、そこに住む人たちを食を通して理解していくことは中華料理という異国の、されど変化しながら自国の料理となったものを理解していくのと何ら変わりはないのである。それは国境というものを軽々と超えていく料理のすばらしさ、そこには他国のものと複雑に融合していくもの、歴史を超えてその国になくてはならないものになっていくもの、移民たちが運んでいき地元に根付くものなど様々な変化を遂げたものが今日にに残っている。私がやっているのはその線の一点に過ぎないが、新たな変化の起点なのかもしれないと思うと感慨深い。以前に読んだ漫画に『ヒカルの碁』という物語がありまして、サイが消えていく名シーン。『神はこの一局を見せるため 私に千年のときを長らえさせたのだ』というセリフが頭にこだまする(知らない人は読んでみてね)。ちょっと大げさかな。

さて、山中温泉の観光案内所で宿を紹介してもらい1泊。朝、町を散策してみるも雪の平日、観光客も少なく、朝風呂はかえって風邪ひきそうだし早々に出発。永平寺に行ってみようと一本道を走っていくと山の中にポツンとお店、妻がガイドブックに載っていたお揚げ屋さんだという。お店の裏には工場もくっついていてここから発送しているようだ。お客さんはほかにおらず私たちだけ。入ってみると豆腐やさんでしたが大きなお揚げが名物だというので定食を注文してみた。揚げたてを食べてほしいのでちょっと時間がかかるとのこと。待っている間に店内を見ているとお揚げの炊き込みご飯なるものを発見。しかしこれはもっと時間がかかるというので断念。そうこうしている間にお揚げ定食登場。早速一口。

『何だこりゃ!うまい。』

普通のお揚げの大きさ約12倍(体積比)。外は揚げたてでカリッと、中は生揚げとお揚げの中間でじゅわじゅわ。こんなの食べたことない。

福井万歳!!

こういうものがあるって地元の人はうれしいだろうね!このお店、後にテレビにいっぱい出て全国的に有名になるのだけれどこの時はそこまでではなかった。このころ県庁所在地の福井市のでこのお揚げ扱っているところは少なかったが毎年行く度に有名になっていき福井市のどのスーパーに行っても置いてあるようになる。なんやったらここ名古屋高島屋でも売っています。偽物というか類似品もいくつかあるけどやっぱり竹田の谷口屋が一番うまい(ちょいちょい値上げされるので早いうちに食べてみよう、同じ食品関連、原材料費、経費の値上がりには悩まされますなー)。この後何回も福井へ行く間に福井のお揚げ事情、というか大豆食品事情にやけに詳しくなっていくのは言うまでもなく、その昔油が貴重だったころの話、揚げるということはものすごく贅沢なこと、豆腐の保存も含めてこのような文化になったのだろうと思う。スーパーに行くと他県の3倍くらい豆腐関連食品が並ぶ。大豆食品をたくさん食べるおかげか福井は御長寿である。給食のカレーにもお揚げカレーがあるそうだ。うらやましい。ちなみに薄揚げ、中揚げ、厚揚げ、そして一般的なお揚げ、この大きなざぶとん揚げ、がんもも小さいものから特大のものもあり秋冬のお鍋に、春夏はお揚げを焼いておろしポン酢なんて最高。福井にはこのお揚げを焼いて越前そばの上にのせ、そのうえに辛味大根おろしと鰹節をかけて食べるという何ともうまいそばもある。もう一度言わせていただこう。福井万歳!!

山を下ると永平寺に。曹洞宗の総本山、禅寺です。作麼生(ソモサン)、説破です。もともとこの作麼生は中国語の什麼(どう?)と意味の口語です。よく使います。こんなところにも中国が。文化は巡るなー。この寺で日々修行をする僧侶たちの無駄のなき生活を見ると己が恥ずかしい・・・寺の隅々まで雑巾がけでピカピカ。一休さんは臨済宗だけどそんな感じです。珍念さん、木念さんいるのかなー。何十枚の天井にはめられた絵を見て感動。しかし何も悟らないまま食欲に負けて直ちに下山。

 スーパー巡りのために福井市へ行ってみると、福井県に展開する地元スーパーハニー、24時間やってるワイプラザ、アピタエルパ、パリス、産直のある農協など、ここでしか売ってないものがそろってる。これまた九州、四国、北陸地方でよく食べられている親鳥肉もあるよ。福井を拠点にする秋吉があるからね。スーパーにも秋吉の純けいが売ってます。たまらんね。でもやっぱり秋吉は本店片町で食べたほうがうまいよね。あのカウンターで白10純けい10なんて頼んじゃいたいねー。その近くにはソースカツどんで有名なヨーロッパ軒があるよ。メンチカツののったパリ丼なんてのもおつだね。いやいやスーパーだったね。米どころならではなんだけどもちがいっぱい。普通のもち以外につぶつぶのうるち米が入ったこごめもち、大豆入り、黒豆入り、干しえび入り、よもぎ入りの斗棒(とぼ)もち、もち米もやっぱり福井もの、エルパには餅屋が2件も入ってる。餅の田中屋の焼き草大福は必ず買って帰ります。ちょっと小腹がすいたらお餅屋にいくと大根おろしが乗って醤油のかかった餅や、黄な粉餅なんかもあるよ。もちがあるってことはおかきなどの米菓子もいっぱい。米好きにはたまらない光景。地元で有名な米菓子メーカー「よしむら」で1コーナーあります。エルパ、パリスにあるお茶、フルーツを売るお店では、よしむらのお徳用があるよ。

そしてなんといっても冬にしか販売されない水ようかん。普通、水ようかんというとカップに入っていたり缶だったり、ちょっといい和菓子屋は竹筒だったりするけど、福井では平たいボール紙の箱にペロンと入っていて、黒糖たっぷり系が基本スタイル。有名どころで言うと、えがわとか久保田製菓なんかがメジャーどころかな。どこもそれぞれ美味しいよ。でも気をつけなくちゃならないのは水平に運ばないとそのままつるんと大事故になります。汁もこぼれやすいですので必ず平らなところにおいてね。あと賞味期限も短いから欲張って買わないこと。

さあ、では本陣お豆腐コーナーへ行ってみよう。豆腐で有名な織田(おた)という場所はあの信長の一族の故郷らしい。その名も「おたのとうふ」。薄揚げ、中揚げ、厚揚げはメーカーによって厚み、しっとり感、揚げ具合がバラバラ。名前も田舎揚げとか永平寺揚げとか。これは1度食べてみないと自分の好みはわからないでしょう。ここでアドバイス重さで中身の豆腐感、スカスカの揚げ感を判断材料に。もう一つ揚げ感が強いもの、水分が少ないものは冷凍保存しても大丈夫。豆腐感、水分が多いものは冷凍するとすかすかのスポンジ状になってしまいます。高野豆腐(凍り豆腐)みたいなもの。いっぱい買っていって試してね。あとがんもで有名な大野屋なんてのもあります。こうやって豆腐コーナーを見ているとお隣のコーナーに練り物コーナーが見えてくるでしょう。そこで地元メーカー安田蒲鉾の商品が見えてくることでしょう。卵の入ったばくだんなんかが売れ筋です。安田蒲鉾の商品が気に入ったならおすすめは8号線沿いにある福井市場の中にある売り場。アウトレットコーナーがあって午前中早くに行けばお得品が並んでます。ですがここで注意。冬はお鍋、おでんなどが多いためすぐに売り切れます。逆に夏場は遅くまであったりします。

 さあ福井市はそろそろおいとまし、お隣鯖江市に向かいましょう。8号線をそのまま南下していくと眼鏡で有名な鯖江市。走っていくと途中左手に農協の産直があります。ちょっと寄ってみてください。地元の食材があります。おすすめはまたかと思われるかもしれませんがお揚げ。しかし今までとは違う青大豆で作ったもの。風味が違うのでお試しください。あと地元民のおやつ、大豆の揚げ菓子その名も「豆板」。やめられない止まらない一品です。じゃあ鯖江に向かいましょう。

鯖江のおすすめはなんといってもここ「ヨーロッパンキムラヤ」。あの銀座木村屋直系です。福井のスーパーにも結構並んでいるパン屋さんです。お店に並んでいるパンはどれも噛めば噛むほどおいしいパンです。あとここに置いてある北海道のノースファームストックのディップソースはおすすめです。好きなのはブルーチーズディップ。止まらないねー。今はないけど前はパンの耳をごっそり売ってくれて、うちでフレンチ揚げトーストにして食べてました。ほうれん草のパンとかうまいですよ。

さて鯖江のインターの入り口の近くにAコープがあります。最後にここに寄っていきましょう。ここにも産直があります。ここの魚屋さん結構いいのがあります。さてここにはさっきの安田蒲鉾さんが作ってる魚ミンチフライが売ってます。そこでさっきのパン屋で買った食パンを出します。さあフライをパンにはさんで食べてみましょう。なかなかおいしいですよ。高速道中の小腹対策にもってこいですよ。福井の他の情報はまた次回にしておきましょう。行き当たりばったりの旅は何か気になったらすぐに立ち止まってみる。目的はたどり着く「地」ではなくその「旅」自体なのです。たとえたどり着いた宿が最悪で食べたものが最悪でもそれが思い出です。そんなことを誰かと共有(話したりして)してみてください。それもまた楽しい体験になるでしょう。旅は行く前も行った後も続いているんです。たまに「いいところを教えて」と言われます。私の人生とあなたの人生は全く別物です。私が楽しくてもあなたにとっては何が楽しいのか全くもって理解不能でしょう。大量のお揚げを見て目を輝かせるおっさんは端から見たらなんと気持ちの悪いことでしょう。何が好きなのかによって旅なんて何万通りもあるのです。あなたの旅はあなたが作って、その体験談を私に話してください。それは1冊の本を読むがごとく楽しい体験になることでしょう。皆さん旅を楽しんでね。

漂泊の旅は続く・・・・

 

 

 

 

 

2020-04-09 22:13:00

さすらいの1泊目

こんにちは、ここでは今までに旅に出て見つけたおいしい食材、お店などを独善的に紹介して行きたいと思います。

初回のご紹介はもう何回行ったでしょうか。大好きな滋賀県、福井県です。

最初は一人旅でした。滋賀愛知川付近の藤居本家(酒蔵)、長浜にまわって鮒ずし、もろこ、木之元を通り福井の小鯛の笹漬けの小浜、三方五湖で鰻を食べて敦賀へ・・・なんて旅でした。

最初は滋賀県の愛知と書いてえちと読む、愛知川の近くを通っていた時に見つけた藤井本家という酒蔵。

まだ25歳くらいの調理師になって5年目のことです。

中華料理ばっかりやってきて、日本人に生まれたのに日本のことをあまり知らなかったので一度旅に出て自分で勉強してみようと思い立ってのことでした。

だって地方の伝統的な食って優れたものが多い。食文化、食の歴史を知りそしてそれを作ることができ、それを新たに中華料理と融合し新たな食文化を作っていくことこそが私の役目だと思います。そして食べた人が歴史や文化を知り、また新しいものを生んでいく。今までの料理の歴史はそうやって紡がれたもの。そのバトンを私なりにアップデートして次の世代に渡していきたい。変化をもっと楽しめるようにもっと日本を知らなければと興味がわいたもの、場所に片っ端から飛びつきました。

その矢先、訪れた酒蔵は8号線を曲がった細い道の神社の手前にありました。なんでその酒蔵に行ったのか、自分でもよくわかりませんが気になって飛び込みました。店の前には麦わら帽をかぶったおばあさんが一人。中に入っておかみさんらしき人に酒蔵を見学できないか訪ねると一人で来た変な若者に怪しさを感じたのでしょう、少し戸惑いながらこちらをみて

『一人でですか?』と聞かれたので、ダメかなーと思っていると後ろからさっきのおばあさんがやってきて

『案内してあげなさい。』と言ってくれた。どうやらこの人が大おかみ。

びっくりしている私に『終わったらちょっと来なさい』といいまたお掃除に。

仕込み樽や酒船などを見せてもらい一通り案内してもらうと大おかみが待っていて奥の座敷に案内された。

田舎の大屋敷の作り、廊下を大おかみの後をついていく。綺麗に手入れされた庭を横手に進むと仏間兼応接間のような20畳ぐらいありそうな部屋に案内され、テーブルをはさんで向かい合い正座。お茶を出され何が始まるのかと緊張していると第一声、

『何でうちに来たの?』

そこで私は今までの調理師経験、これからのこと、日本を知りたいということを一生懸命話した。すると

『あなたのやろうとしていることはとても大事なことです。続けなさい。』だって

しびれたね!全身が震えたね!仏さまに見えたね。

『私は戦前医者でした。兄弟がみんな戦争に行ってしまい仕方なくここを継ぎました。この地方の歴史から教えましょう。』

それから愛知川のこと、藩主のこと、治水のこと,発酵文化のこと、麻がどこからやってきたのか、杜氏はどこから広まったのか、

発酵食品の効能、毒の話、様々なことを一気に教えてくれました。その間に銀行のお偉いさん方が来たのですが

『今大事な話をしている!待っていなさい!』と一括するや、またいろんな話をぽっと来ただけの小僧に一生懸命教えてくれました。いい大人っているもんだなー。今、この時何が大事なことなのかを私の大好きな李白の詩『将進酒』とともに教えてくれる。

聞いたら85歳だって・・・ほんとに申し訳なくて・・身が引き締まりお礼を言い『特別純米酒 欅』というお酒を買ってお店を出ました。欅という名は先ほど教えてもらった当地の藩主が治水のために硬く根を張るこの木を使ったことが由来なのかなーとおもいながら旅先から帰って飲みました。

私は常々思っています。ご縁でいただいたものはすべからく私の次に続く者たちへ。

私から得た幸せがあったならそれを私に返すのではなく、もらったあなたが次の者に与えてほしい。

与えてくれた人にはいつも感謝しています。だからお店に来た人が滋賀県の人だと聞くといつもこの話をし、喜んでいただけるように頑張って調理します。あの大おかみが笑ってくれるように。

漂泊の旅は続く・・・

 

1
Today's Schedule
2024.05.13 Monday