大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-04-09 22:13:00

さすらいの1泊目

こんにちは、ここでは今までに旅に出て見つけたおいしい食材、お店などを独善的に紹介して行きたいと思います。

初回のご紹介はもう何回行ったでしょうか。大好きな滋賀県、福井県です。

最初は一人旅でした。滋賀愛知川付近の藤居本家(酒蔵)、長浜にまわって鮒ずし、もろこ、木之元を通り福井の小鯛の笹漬けの小浜、三方五湖で鰻を食べて敦賀へ・・・なんて旅でした。

最初は滋賀県の愛知と書いてえちと読む、愛知川の近くを通っていた時に見つけた藤井本家という酒蔵。

まだ25歳くらいの調理師になって5年目のことです。

中華料理ばっかりやってきて、日本人に生まれたのに日本のことをあまり知らなかったので一度旅に出て自分で勉強してみようと思い立ってのことでした。

だって地方の伝統的な食って優れたものが多い。食文化、食の歴史を知りそしてそれを作ることができ、それを新たに中華料理と融合し新たな食文化を作っていくことこそが私の役目だと思います。そして食べた人が歴史や文化を知り、また新しいものを生んでいく。今までの料理の歴史はそうやって紡がれたもの。そのバトンを私なりにアップデートして次の世代に渡していきたい。変化をもっと楽しめるようにもっと日本を知らなければと興味がわいたもの、場所に片っ端から飛びつきました。

その矢先、訪れた酒蔵は8号線を曲がった細い道の神社の手前にありました。なんでその酒蔵に行ったのか、自分でもよくわかりませんが気になって飛び込みました。店の前には麦わら帽をかぶったおばあさんが一人。中に入っておかみさんらしき人に酒蔵を見学できないか訪ねると一人で来た変な若者に怪しさを感じたのでしょう、少し戸惑いながらこちらをみて

『一人でですか?』と聞かれたので、ダメかなーと思っていると後ろからさっきのおばあさんがやってきて

『案内してあげなさい。』と言ってくれた。どうやらこの人が大おかみ。

びっくりしている私に『終わったらちょっと来なさい』といいまたお掃除に。

仕込み樽や酒船などを見せてもらい一通り案内してもらうと大おかみが待っていて奥の座敷に案内された。

田舎の大屋敷の作り、廊下を大おかみの後をついていく。綺麗に手入れされた庭を横手に進むと仏間兼応接間のような20畳ぐらいありそうな部屋に案内され、テーブルをはさんで向かい合い正座。お茶を出され何が始まるのかと緊張していると第一声、

『何でうちに来たの?』

そこで私は今までの調理師経験、これからのこと、日本を知りたいということを一生懸命話した。すると

『あなたのやろうとしていることはとても大事なことです。続けなさい。』だって

しびれたね!全身が震えたね!仏さまに見えたね。

『私は戦前医者でした。兄弟がみんな戦争に行ってしまい仕方なくここを継ぎました。この地方の歴史から教えましょう。』

それから愛知川のこと、藩主のこと、治水のこと,発酵文化のこと、麻がどこからやってきたのか、杜氏はどこから広まったのか、

発酵食品の効能、毒の話、様々なことを一気に教えてくれました。その間に銀行のお偉いさん方が来たのですが

『今大事な話をしている!待っていなさい!』と一括するや、またいろんな話をぽっと来ただけの小僧に一生懸命教えてくれました。いい大人っているもんだなー。今、この時何が大事なことなのかを私の大好きな李白の詩『将進酒』とともに教えてくれる。

聞いたら85歳だって・・・ほんとに申し訳なくて・・身が引き締まりお礼を言い『特別純米酒 欅』というお酒を買ってお店を出ました。欅という名は先ほど教えてもらった当地の藩主が治水のために硬く根を張るこの木を使ったことが由来なのかなーとおもいながら旅先から帰って飲みました。

私は常々思っています。ご縁でいただいたものはすべからく私の次に続く者たちへ。

私から得た幸せがあったならそれを私に返すのではなく、もらったあなたが次の者に与えてほしい。

与えてくれた人にはいつも感謝しています。だからお店に来た人が滋賀県の人だと聞くといつもこの話をし、喜んでいただけるように頑張って調理します。あの大おかみが笑ってくれるように。

漂泊の旅は続く・・・

 

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