大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive86
今までいつまでも寝ていた僕が、みんなより早く起きて家の前の掃除をするようになり、掃除が終わると青嵐の家に行き、一緒に功夫をする。青嵐が教わっているのは八極拳という拳法らしい。僕は見習の見習いなので、まずは体力づくり。山道を走ったり、重たいものを持ち上げたり、足腰を鍛えるらしい。月に何回か町に行って、道場で八極拳を習ってくる青嵐に型を習う。八極拳は相手の向こう、八極まで突き抜けるような打撃を基本とする拳法なので、脚力が非常に大事なんだそうだ。相手に突進するのでそれに耐えうる上半身を作るのも大事。青嵐とぶつかりあっこをして体を鍛える。相手の打撃に耐えうる体を作るらしい。2時間ぐらい稽古をして家に帰る。今度は家の仕事を手伝う。家で使う薪を割る。お父さんに教えてもらってから、僕の仕事になった。これも結構、体力づくりになる。しかし、この訓練も春分の日が近づくと、ある理由からできなくなる。
うちは、小さいが茶園を経営していて、お父さんが手入れをした茶畑からとれるお茶は、とても評判がよく、『蒙頂甘露』の中でも上級品になる。茶摘みの時期になると家族総出で畑に向かう。僕も小さいころから手伝っている。近所の人たちも、時期になると手伝いに来るぐらいで、早朝から一気に摘まないと味が落ちる、とお父さんは言っていた。春分の前ぐらいから摘み始めるのだが、小さな芽を手摘みするのでそんなに量が取れない。分前(春分の前)のものは味わいも淡いが、夏に向かっていくにしたがいしっかりしてくる。蒙頂甘露は最も歴史のある緑茶で、葉は細く締まっていて、白い産毛があるのが特徴です。高温に沸かしたお湯を少し冷ましてから入れると、何とも言えない甘い香りのするお茶です。飛の家のお店でも使ってもらっているが、うちのお茶は『いいお客さんにしか出さない』と言っていました。僕の自慢です。
今年も春分の日が近くなり一時訓練は中止。茶摘みが始まる。僕の家は、茶園の入り口から続く道の突き当りにあり、茶園のどこにいても、その道を通っていく人が見える。だから家がもぬけの殻でも泥棒の心配はなく、皆で茶摘みがしていられる。家の隣には殺青(釜炒り)や、揉捻(じゅうねん)(茶葉を揉み、水分の均一化を図るとともに、成分が出やすいようにする。)、乾燥させる作業場がある。お父さんが、殺青をするときは真剣勝負です。どの位の時間炒るかで出来上がりが、変わって来るそうです。揉捻は僕も手伝います。お母さんとお姉ちゃんが教えてくれました。
「いい、行徳。こうやって優しくもんで ”美味しくなーーれ” ”甘ーくなーれ”と思いながら揉むのよ。」
と、お姉ちゃんは言います。お姉ちゃんは一生懸命仕事をしています。僕も見習って呪文のように心の中で唱えながら茶葉を揉みます。そして、乾燥は、ざるに広げて干します。こうして茶葉が出来上がると問屋さんが買い取りに来ます。
大分、暖かくなって来た5月、荷馬車に乗って問屋さんが茶園の道をのぼってきました。
「こんちわー、今日も暖かいねー。おお、行徳も頑張ってるね。えらいえらい。跡取りがちゃんと仕事を覚えないとな。」
「おじさん、見てよ。僕こんなに筋肉がついたんだよ。」
僕は、そう言って腕の筋肉を自慢げに見せた。
「こいつは、すごい。これならお父さんも早く、楽ができそうだな。でも筋肉だけじゃ、お茶はうまくならないから、お父さんの言うことをよく聞くんだよ。」
「わかってるよ。今日のお茶も、美味しいよ。なんたって、僕とお姉ちゃんが心を込めて揉捻したんだ。だから、うんと高く買っておくれよ。そしたら僕は町の道場に通うんだ。」
「わかったわかった。行徳は元気だな。じゃあ、自慢のお茶を試させてもらおうかな。」
早速お父さんと作業場に入っていった。僕はお姉ちゃんと荷馬車を引いてきた馬に、水をあげた。お姉ちゃんが馬の首をさすってあげるととても気持ちよさそうにしている。水をたっぷり飲んで一休みって感じだ。少ししたら、お父さんたちが出てきた。お父さんも笑っている。僕が期待を込めた目で見ていると
「おお、行徳。飛び切りうまかったよ。これで道場に通えるかもな。」
おじさんがお父さんの方を見るとお父さんがうなずいていた。やった、これで青嵐と一緒に町の道場に通える。それから僕は週に一回、青嵐と町の道場に通い、武術を習いに行くことになった。
dive87に続く・・・

