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2023-07-01 20:21:00

2023年版「世界のベストレストラン50」が発表。日本は『傳』が21位、『Florilège』が27位

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スペインのバレンシアで開催された授賞式の様子(画像はグラナダ社プレスリリースより)

6月20日、スペインのバレンシアで「世界のベストレストラン50」が発表された。今年で21回目を数える同アワードは、世界の美食家や評論家など1,000人以上の審査員によって選出され、世界のガストロノミーの潮流を決めるとも言われるほど影響力がある。

今年1位の座を獲得したのは、ペルーのリマにある『Central』。欧米以外のレストランが1位を受賞したのは今回が初めてのことである。

ペルーの生態系や古代からの風土を表現したガストロノミーに称賛

同店を率いるシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネス氏は、2009年に『Central』をオープンさせた。2015年には「世界のベストレストラン50」で4位を受賞。その後、2018年にペルー・クスコの高地に海抜3,500mのエコシステムを体験できるレストラン兼研究所『MIL』をオープンさせたほか、妹のマレーナとともにNGOマテル・イニシアティバを設立するなど、他分野の研究者とともにペルー全土の生態系研究に力を注いでいる。

『Central』ではこうした活動の中心的役割を担い、ペルーの多様な生態系や古代から続く在来種の作物、原住民の調理をガストロノミーを通じて表現している。

ヴィルヒリオ氏の唯一の海外店舗、東京・紀尾井町『MAZ(マス)』

その唯一の海外店舗が、なんと日本にある。東京・紀尾井町に昨年7月にオープンした『MAZ(マス)』だ。標高差があるペルーならではの風景と、独自の生態系を表現したコース料理を提供している。ペルーと日本の食文化や風土の親和性を見出し、その類似性や相違点をオリジナリティー溢れる手法で表現していると、美食家や文化人の間で話題となっている。

ヴィルヒリオ・マルティネス唯一の海外店舗『MAZ』の料理(画像はグラナダ社プレスリリースより)

ランキングには『Central』のほかにペルーから3店がランクインし、世界的なペルー料理への注目の高さが見受けられる。これまでに世界一になったレストランはいずれも西欧文化の美意識を表現していたが、今回の『Central』首位獲得によってその潮流に変化が起こりそうだ。西欧文化のみならず、自国の歴史や風土、築いてきた文化を表現するガストロノミーが、より一層活性化することが期待できる。

スペインから最多の6店がランクイン。日本は東京の存在感が強かった

続く2~4位までは、『Disfrutar』(スペイン/バルセロナ)、『Diverxo』(スペイン/マドリード)、『Asador Etxebarri』(スペイン/アトクソンド)と、スペイン勢が占めた。いずれも昨年もTOP10に名を連ねた名店である。スペインからは全6店がランクインしており、圧倒的な強さを示すが、バルセロナ、マドリード、アトクソンド、ゲタリアなど、さまざまな地域からのノミネートに美食の国スペインの厚みが感じられる。

日本のレストランでは、東京・外苑前のモダン懐石として知られる『傅』が最上位の21位。続いて27位に東京・外苑前の日仏フュージョン料理の『Florilège』がランクインした。同店は移転とリニューアルのため、2024年7月20日からしばらく休業することを発表しており、リニューアル後への期待も高まっている。そして、今年の「アジアのベストレストラン50」で2位をマークした、フォーシーズンホテル丸の内にあるフランス料理『Sézanne』は37位にランクイン。いずれも東京からの選出で、世界のフーディーに東京の存在感を示す形になった。

<1〜10位>
1.『Central』(ペルー/リマ)
2.『Disfrutar』(スペイン/バルセロナ)
3.『Diverxo』(スペイン/マドリード)
4.『Asador Etxebarri』(スペイン/アトクソンド)
5.『Alchemist』(デンマーク/コペンハーゲン)
6.『Maido』(ペルー/リマ)
7.『Lido 84』(イタリア/ガルドーネ・リビエラ)
8.『Atomix』(アメリカ/ニューヨーク)
9.『Quintonil』(メキシコ/メキシコシティ)
10.『Table by Bruno Verjus』(フランス/パリ)

<11〜20位>
11.『Trèsind Studio』(アラブ首長国連邦/ドバイ)
12.『A Casa do Porco』(ブラジル/サンパウロ)
13.『Pujol』(メキシコ/メキシコシティ)
14.『Odette』(シンガポール)
15.『Le Du』(タイ/バンコク)
16.『Reale』(イタリア/カステル・ディ・サングロ)
17.『Gaggan Anand』(タイ/バンコク)
18.『Steirereck』(オーストリア/ウィーン)
19.『Don Julio』(アルゼンチン/ブエノスアイレス)
20.『Quique Dacosta』(スペイン/デニア)

<21〜30位>
21.『傳』(日本/東京)
22.『Elkano』(スペイン/ゲタリア)
23.『Kol』(イギリス/ロンドン)
24.『Septime』(フランス/パリ)
25.『Belcanto』(ポルトガル/リスボン)
26.『Schloss Schauenstein』(ドイツ/フュルステナウ)
27.『Florilège』(日本/東京)
28.『Kjolle』(ペルー/リマ)
29.『Boragó』(チリ/サンティアゴ)
30.『Frantzén』(スウェーデン/ストックホルム)

<31〜40位>
31.『Mugaritz』(スペイン/サン・セバスティアン)
32.『Hiša Franko』(スロベニア/コバリード)
33.『El Chato』(コロンビア/ボゴタ)
34.『Uliassi』(イタリア/セニガリア)
35.『Ikoyi』(イギリス/ロンドン)
36.『Plénitude』(フランス/パリ)
37.『Sézanne』(日本/東京)
38.『The Clove Club』(イギリス/ロンドン)
39.『The Jane』(ベルギー/アントワープ)
40.『Restaurant Tim Raue』(ドイツ/ベルリン)

<41〜50位>
41.『Le Calandre』(イタリア/ルバノ)
42.『Piazza Duomo』(イタリア/アルバ)
43.『Leo』(コロンビア/ボゴタ)
44.『Le Bernardin』(アメリカ/ニューヨーク)
45.『Nobelhart & Schmutzig』(ドイツ/ベルリン)
46.『Orfali Bros Bistro』(アラブ首長国連邦/ドバイ)
47.『Mayta』(ペルー/リマ)
48.『La Grenouillère』(フランス/ラ・マドレーヌ・スー・モントルイユ)
49.『Rosetta』(メキシコ/メキシコシティ)
50.『The Chairman』(中国/香港)

2023年版「世界のベストレストラン50」が発表。日本は『傳』が21位、『Florilège』が27位 | 飲食店ドットコム ジャーナル (inshokuten.com)

 


2023-06-01 09:24:00

【明日のフードビジネスへの展望】

【第192回】

「ポストコロナ時代のフードビジネス産業界の展望」を確立したならば、その実現に向かっては普通の「マネジメント・パワー」ではなかなか達成することができない。そこで不可欠なのは、「経営者のプロデュース化」であり、そのためには、「心構え」「企業方針の策定」「位置づけ」「個性化戦略」の確立を行うことである。

 

【経営者のプロデュース化】【1】

 一般的に「企業ミッション」や「企業戦略」を確立する場合、組織的には社長直属の「企画室」が担当することが多い。この場合、大企業だとコストをかけて「ビッグ・データ」を活用して、社会的経済的環境を分析して、今後を予測や創造をしている。しかし、コロナショックのような未曽有の「乱気流とカオスの時代」では、まったく機能しないことが証明されてしまった。この傾向は、過去の「乱気流とカオス時代」にもみられたことで、まったく懲りない現象が繰り返されている。

そこで、最近の「サクセィシブ・カンパニー」では、「トップ・マネジメント」自らが「企業ミッション」や「企業戦略」の「プロデュース(produce:制作の統括)」を行っている。なぜなら、「企画室」が悪いのではなく、「企業ミッション」や「企業戦略」は「企業ミッション」と同様に「経営者」自身の職務であり、「企画室」は「経営者」が適切に「企業ミッション」や「企業戦略」を確立できるように各種資料を準備や文章化する役割を担うことである。

この意味するところは、「企画室」は「経営者」ではなく、「経営者」自身が「方向性」を示すことが不可欠で、それに元づいて「企画室」が準備や文章化をするのが「経営者のュース化」なのである。

 

[1] 経営者のプロデュース化の心構え

「経営者のプロデュース化の心構え」を確立するならば、「企業の将来像」を描き、「経営者のプロデュース化」の意義を確定して、「名プロデューサー」としての位置づけを行うことである。

(1)企業の将来像を描く

 従来は、「ビジョン」という形で、売上高とか店舗数で表現し、あるいは途方もない「夢」を描くことが多かったが、これでは「経営者」の自己満足で終わっていることが多いのが現実の姿であった。

 しかし、最近の「サクセシィブ・カンパニー」では、自社の置かれる産業分野ばかりでなく、「日本企業の将来像」を「経営者」が描き、みずからが「企業の将来像」を実現するために、「プロデュース」を行っている。

しかも、みずからの「卓越したリーダーシップ」を発揮し、さらに、「スタッフ全員」に徹底させるために、「優れたコミュニケーション」を行って、会社全体が「日本企業の将来像」に向けて邁進している。

(2)経営者のプロデュース化とは

 「企業の社会的役割」「日本企業の将来像」、「企業ミッション」と「企業戦略」を確立するためには、「未来を具現化」することであるから、「経営者」自らが「プロデュース(produce:制作)」しなければ、絶対成しえない。

しかも、重要なことは、「企業戦略」は、「未来価値創造」をすることと、「企業戦略」は、一つでなく、複数確立することで、「乱気流とカオス時代」と「ポスト・コロナ時代」によって「企業戦略」を使い分けるスピーディさか不可欠なのである。

このためには、「経営者」の「創造性」が重要なのである。このためには、「現場重視型アプローチ」を駆使でき、お客様の「課題」の解決と「要望」の発掘を行い、「創造的破壊とイノベーション」ができるのは、「経営者」だけなのである。さらに、重要なことは、「経営者のフロデュース化」を実現できる豊富な「人財」がいることである。

(3)名プロデューサーになるためには

「経営者のプロデューサー化」ということは、「戦略家(プロフェッショナル)」ということに通じる。「企業の将来像」「企業ミッション」「企業戦略」を思考するということは、高い実現能力を持つ「戦略家」になるいということである。

 重要なことは、質の高い「プロデュース」の実現には、自己がみずから「現場重視」の基本的な考え方を重視し、さらに「お客様発」の「課題」の解決と「要望」の発掘と「お客様との参加・共創と企業のサプライスズ」の思想を持たなければならない。

多くの「経営者」は、「現場に聞いてもしょうがない」とか、「お客様に聞いても答えてくれない」という発言をしていることがあるが、これは傲慢な態度としか言えない。つまり、「お客様の本当の心」を把握していないので、「企業」と「お客様」は乖離してしまっているのに気づかない。

「経営者」が「名プロデューサー」になるためには、自らが「お客様」の「ウォッチング」と「インタビュー」をし、「お客様の参加・共創」をし、お客様に「サプライズ」を提供しなければならない。

また、「現場はお客様の代理人」であるので、その声を反映させないと、どんなに素晴らしい「企業の将来像」「企業ミッション」「企業戦略」を策定したとしても、絵に描いたモチにしか過ぎないという簡単なことが理解できていない。

このためには、「経営者」は「卓越したリーダーシップ力」と「優れたコミュニケーション力」を具備するとともに、「スタッフ」には「全員マネジメント戦略」と「エンパワーメント戦略」を具備させなければならない。つまり、こけこそ「共感経営」の真髄なのである。

 


2023-05-13 13:38:00

ウェンディーズがグーグル製AIチャットボットをドライブスルーに導入

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Shutterstock

米ハンバーガーチェーン大手のウェンディーズは5月9日、ドライブスルーのサービスに人工知能(AI)の導入を開始すると発表した。米国ではマクドナルドやパネラブレッド、ポパイズなどのファストフードチェーンもAIによる自動化を進めている。

ウェンディーズは、グーグルが開発したAIチャットボットをドライブスルーに導入し、自然言語処理(NLP)テクノロジーを用いたエクスペリエンスを顧客に提供する。顧客はチャットボットに話しかけることができ、チャットボットは頻繁に尋ねられる質問に答えることができるようになると同社は述べている。

このテクノロジーはまず、オハイオ州コロンバス地区で6月に導入される予定という。

先週は、Hardee’s(ハーディーズ)とカールスジュニアの親会社も、これらのチェーンのドライブスルーでAIの使用を開始すると発表した。

ウェンディーズは、ドライブスルーの注文プロセスを合理化するファーストフードチェーンのリストに加わることになる。2021年にマクドナルドとIBMは、AI対応の音声システムで顧客のドライブスルー体験を自動化するために提携した。昨年、パネラとポパイズの両社は、音声を用いたAI注文プラットフォーム「Tori」の配備を開始した。チェッカーズ&ラリーズも、一部の店舗で会話型AIシステム「Holly」の利用を開始した。

ファストフード業界は、チャットボットのテクノロジーの不完全な対応によって、すでにいくつかの障害に直面している。業界メディアのRestaurant Dive が報じたBTIGの調査によると、イリノイ州のマクドナルドの24店舗では、ドライブスルーのテクノロジーの精度が 80%台の前半だったという。ある顧客は、TikTokに投稿した動画で、マクドナルドのドライブスルーのAIマシンが、自分の注文と、その隣のレーンの顧客の注文を取り違えてしまった経験を話している。

ウェンディーズは今から50年以上前にドライブスルーを導入し、今では顧客の注文の約80%がドライブスルーからのものだという。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

ウェンディーズがグーグル製AIチャットボットをドライブスルーに導入 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 


2023-05-03 18:19:00

ポストコロナ時代の流通サービス産業の展望(14)

 

[9]マネジメント時代の到来

 「乱気流とカオス時代」は、時の流れに沿うのではなく、自らが潮流をつくりだして、「サクセシイブ・カンパニ-」を確立していかなければならない。重要なことは、「マネジメント時代」を意識して、従来からのお客様の「常連客化」や「新しいお客様の創造」のために「創造的破壊とイノベ-ション」を本格的に推進し、新しい時代を創造していかなければならない。

 

(1)マネジメント時代とは

 

「企業マネジメント」というのは、「管理時代」を脱却して「マネジメント時代」を確立して、常に「創造的破壊とイノベ-ション」によって「マネジメント・パワ-」を「アップスケ-ル」させているという「原理原則」が存在していることを十分認識し、まさに「マネジメント時代」の到来なのである。

 

(2)企業マネジメント体系とは

 

「流通サービス産業界」で一番重要なことは、「企業ミッション」を確立し、さらに社会的経済的環境にスピ-ディに適応するばかりか創造する「企業戦略」と「企業マネジメント計画」の策定を行うことと、「マネジメント・システム計画」を構築するという「企業マネジメント体系」を再構築をすることである。

さらに重要なことは、「企業マネジメント体系」を確立したら、さらに継続的に「アップスケ-ル」をしなければならない。

「企業マネジメント体系」は「企業ミッション」を根幹として、次いで「経営戦略」と「マーケティング戦略」を確立し、これらをベースに「情報マネジメント戦略」「組織マネジメント戦略」「人的資源マネジメント戦略」を確立する。最終的には各戦略を支えていく「資金」が必要で、それらの戦略として「財務マネジメント戦略」を確立していくことが重要である。

また、「ポストコロナ時代」を迎えても、次の「乱気流とカオス」を意識して、企業の「DX」「CX」を積極的に推進しなければならない。

 

【企業マネジメント体系】

【企業ミッション】(思想統一の原理原則)

◎現代における企業の役割

◎日本企業の将来像

◎現代経営者の条件

◎経営者のリーダーシップ

◎経営理念の確立

◎ビジョンの確立

◎産業としての位置づけ

◎起業の原理原則の確立

◎起業マネジメントの原理原則の確立

◎店舗マネジメント・システムの確立

◎店舗オペレーションの原理原則の確立

◎フランチャイズ・ビジネスの原理原則の確立

◎経営者育成の原理原則の確立

◎全員マネジメントの確立

◎現場力を重視したマネジメントの確立

◎「DX」と「CX」の展開

◎創造的破壊とイノベーションの積極化

【企業戦略】(企業経営の中長期的な考え方)

◎経営戦略 ◎マ-ケティング戦略

◎情報マネジメント戦略 ◎組織マネジメント戦略 ◎人的資源マネジメント戦略

◎財務マネジメント戦略

【企業マネジメント計画】(期間の計画)

◎マネジメント計画◎マ-ケティング計画◎情報計画◎組織計画◎人的資源計画

◎財務計画

【マネジメント・システム計画】

◎マネジメント・システムの構築・実行・改善

 


2023-05-03 18:18:00

日本の外食企業が香港視察

一挙19社、参入視野に市場理解へ

香港経済貿易代表部(HKETO)と香港政府投資促進署(インベスト香港)は4月24~27日、日本の外食・食品企業の香港視察ミッションを開催した。香港での事業展開を検討する日本企業19社が参加。新型コロナウイルス禍が落ち着いたことを機に、各企業が海外事業の再始動を計画する中、香港の飲食店運営企業とのビジネスマッチングや飲食店の視察などを通じて香港の経営環境への理解を深めた。【菅原真央、蘇子善】

香港経済貿易代表部(HKETO)と香港政府投資促進署(インベスト香港)が日本の外食・食品企業の香港視察ミッションを開催した。写真はビジネスマッチングの様子=26日(NNA撮影)
香港経済貿易代表部(HKETO)と香港政府投資促進署(インベスト香港)が日本の外食・食品企業の香港視察ミッションを開催した。写真はビジネスマッチングの様子=26日(NNA撮影)

ミッションは4日間のプログラムで、飲食店や商業施設の視察、業界関係者との交流、セミナー、ビジネスマッチングなどで構成。和食、洋食、ラーメン、焼き肉、スイーツなどの飲食ブランドを展開する日本企業が参加した。

インベスト香港によると、外食・食品企業のビジネスマッチングはコロナ禍の間もオンラインで行っていたが、対面での開催はコロナ禍後初めてとなる。インベスト香港接客サービス・旅行産業部の黄思敏(シンディー・ウォン)部長は「香港の飲食企業との会議では、日本のブランドを引き入れたいという声がよく上がる」と説明。一方、「日本は新型コロナの影響で円安環境が続いており、経済状況も振るわない。彼らに必要なのは香港でのビジネスチャンスとパートナーだ」と強調した。

■既存店との差別化必要

プログラムのメインであるビジネスマッチングでは、日本ブランドのフランチャイズ(FC)経営などを検討する香港の飲食店運営企業19社が来場し、日本側の各企業と面談を行った。既に多くの日本食レストランがある香港では、新たなブランドを選ぶに当たり、既存店との差別化が重要なポイントとなるようだ。

香港の叙福楼集団(LHグループ)傘下で焼き肉の「牛角」や鍋料理「しゃぶしゃぶ温野菜」をFC経営する「株式会社」は、新たにすしやカフェ、ベーカリーカフェなどのブランドの運営を検討中。譚卓凌(シャーリーン・タム)企業発展コーディネーター(ブランディング)は「香港では日本食レストランは既に飽和状態」と指摘し、香港人の好奇心をいかにつかみ、新鮮さを見つけていくかが課題になるとの見方を示した。

香港の景楽集団(キング・パロット・グループ)傘下で日本式焼き肉店などを経営するKPコンセプトのエミリー・ロー・マーケティングオフィサーは「内装に力を入れていたり、若い女性をターゲットにしたりしている日本企業を見つけたい」とコメントした。若年層に照準を合わせ、交流サイト(SNS)に投稿する写真撮影を意識した内装を重視する考えだ。そうすることで、観光スポットの一つとして中国本土からの旅行客を呼び込むこともできるとみている。

■賃料・人件費は売価でカバー

参加した日本企業も手応えを感じている。香港での飲食店経営で懸念材料となる高い店舗賃料や人件費は、日本より価格を高く設定できたり、他のコストを抑えたりすることで賄えるとの見方だ。

お好み焼きチェーン「千房」を展開する千房ホールディングス(大阪市)は、2018年にオープンした香港の店舗が反政府デモや新型コロナの影響で閉業。新たなFCオーナーを探して再出店を目指す。

事業統括本部グローバル事業部の堀内昭宏課長によると、ビジネスマッチングでは、ベーシックなお好み焼き店ではなく、同社が展開する高級業態のステーキハウスに興味を持つ企業が多かったという。高級業態を海外で展開したことはないが、「ニーズがあるならば、高級業態もチャレンジの一つ」と前向きだ。香港では日本人が想像する以上の価格を設定することができるとし、「賃料をカバーできるだけの売り上げは取れるだろう」と自信を示した。

大分唐揚げ専門店「ジョニーのからあげ」を展開するアスハレコーポレーション(大阪市)は、シンガポール、タイに続く3店目の海外店舗として香港を検討している。執行役員(店舗開発事業部)の森嶋勇次氏によると、海外店舗では調味料のみをパッケージで送り、肉は現地で調達するため、味付けした生肉を全国に手配する日本国内の店舗より原材料コストが抑えられる。香港では、その分を賃料や人件費に回すことになるとみている。

森嶋氏は「唐揚げ単体で店舗を出すのは日本では当たり前だが、香港ではまだまだ。焼き鳥店などとのコラボレーションで出店する形が反応が良さそうだ」と感触を語った。

■関係者が経験を共有

セミナーには香港の飲食業界関係者が登壇し、業界を取り巻く環境や事例について紹介した。

インベスト香港の黄氏は「香港の外食・食品業界の概要とトレンド」というテーマで講演。22年度に香港に拠点を構える域外企業8,978社のうち、日本企業は1,388社に上る。香港の税負担の低さや45カ国・地域と二重課税防止協定(CDTA)を締結していることなどを紹介し、利益を生み出す拠点として最適だと説明した。

また香港の業界トレンドとして◇メニューに気候変動への影響の度合いを示すラベルを記載するなど「食の低炭素化」◇小型店やポップアップショップの増加◇海外からのゲストシェフの訪問再開――などを挙げた。

このほか、日本ブランドの飲食店をFC経営する香港のドリームチームF&Bコンセプツの石健華(ケビン・シー)最高経営責任者(CEO)が日本企業との協業で感じたことを紹介。食文化や信用の築き方に違いがあるとし、「最適なビジネスパートナーを探すことが鍵だ」と話した。

パン・洋菓子製造販売のエーワンベーカリーの楊井元伸・董事長兼CEOは、香港で38年事業を続ける中、事業環境について「進出当時と現在は様変わりしている」と指摘。「進出当時は日本の食べ物が少なかったが、今は日本ブランドが非常に多い。日本日本という考えは捨てて、香港で根付く商品を考えなければならない。マーケティングが大事だ」とアドバイスした。

日本の外食企業が香港視察 - NNA ASIA・香港・サービス

 


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