一言法話

2023-08-21 07:14:00

101.縁は尽きない


まだまだ蒸し暑い夏が続いています。一昔前でしたら北海道は夏でも30°を超える日は少なく、湿度が低いカラッとした日が多かったものです。お盆を過ぎると秋がもう目の前、といったような涼しい風が吹いたものでしたが、近年はそうでもなくなってきました。やはり地球自体が温暖化してきているということなのでしょうか。

そんな暑い中ではありましたが、お盆にはたくさんの方にお参りをいただきました。小さいお子さんを連れたご家族にもたくさんお越しいただき、本堂でご本尊様に手を合わせ、そして納骨堂にお参りいただきました。

生きている私達もそうですが、自分にとって大事な方にはいつまでも自分という存在を気にかけてもらいたいものです。忘れられたくはないものです。ご先祖様にとってもそれは同じではないでしょうか。自分と縁を持ち、大事な存在であった配偶者や友人、そして自身の子や孫にはいつまでも気にかけてもらいたい。お盆やお彼岸、ご命日といった時にお花やお供物を捧げに納骨堂やお墓に来てくれるということは故人にとってこの上ない喜びでしょう。

人は亡くなったからといって、生前に関係のあった人との縁が尽きるということはありません。
自分の存在に深く関わった故人をもうこの世にいないからといって、気にかけることなく蔑ろにしてしまうことは非常に悲しいことだと言えます。そしてもっと言うならば、それは自分自身の在り方をも否定することと同じだと思うのです。なぜなら自分はご先祖様の命の引き継ぎによって、この世に誕生することができ、関わりをもってくれた方々のおかげによって今の自分というものは成り立っているからです。そういった存在を蔑ろにすることは今の自分をも蔑ろにしてしまうことと同じだとは言えないでしょうか。

是非、皆様におかれましては、これからもご先祖様、ご縁のあった故人へ思いを向けるご供養を大事に行って下さい。そしてご自身のお子さんお孫さんにもその大切さを自らの行動でもってお伝えいただければと願います。

 

2023-08-11 00:08:00

100.新盆とは


この夏、北海道も暑い日が続いていますね。30℃越えが続く中、汗だくになりながら檀家の皆様のご自宅へ、ご回向のお勤めに伺う毎日です。
日光院では札幌の檀家さんへは8月1日から5日まで、小樽の檀家さんへは基本的には1日から6日の命日の方を除いて7日から15日までお盆参り(棚経)に伺います。そして毎年8月6日の午後4時より新盆会を行っています。
新盆会とは新盆を迎えた檀家の皆様方にお集まりいただき、共に故人を偲びお弔いをする法要です。今年は40名以上の檀家さんにご焼香いただき、それぞれの代表の方に灯籠を仏様に献じていただきました。

新盆とは亡くなられた方が初めて迎えるお盆のことを言います。しかし注意しなくてはいけないのは今年亡くなられていても8月13日までに四十九日を終えていない方は来年のお盆が新盆になるということです。今年が新盆の方は令和4年6月26日から令和5年6月25日に亡くなられた方ということになります。
真言宗の教えでは亡くなられた方は七日ごとに様々な仏様から教えをいただき、四十九日をもって正式に本尊大日如来のお浄土(密厳浄土)に迎え入れられます。ですから四十九日の間は、お浄土への道筋の途中にあり、お盆であっても戻ってくることはできないのです。

私は栃木県のあるお寺のお盆参りのお手伝いをしたことがあるのですが、新盆を迎えた方のご自宅にはお盆の間、親戚や町内の方などが数多くお参りに来られ、その度にあらかじめ家族が用意しておいた食事を振る舞うという習わしがありました。
北海道では新盆を迎えるということが特別なことであると思われている方はそれほど多くないと思いますが、新盆は亡くなった方が戻って来られる最初のお盆です。特に丁寧にこのお盆の期間をお過ごし下さい。

 

2023-08-01 17:56:00

99.花火とお盆


先日、小樽では潮まつりが行われました。コロナ禍の間は規模もかなり縮小され行われていましたが、今年は通常通りの開催となり、たくさんの人出となりました。
特に最終日には花火が打ち上げられ、さらに今年は東京ディズニーリゾート40周年記念のスペシャルドローンショーもあり、小樽からの帰りの電車を待つ長蛇の列はもの凄いことになっていたようです。
夏のお祭りの定番となっている花火の打ち上げですが、お盆や、故人への追悼ということにも関係しているということをご存じでしょうか。
京都の大文字焼はお盆に各々の家に戻られた精霊をお送りする送り火であるということはご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、打ち上げ花火にも亡くなった方への鎮魂の意味があるのです。
有名な隅田川花火大会は江戸時代、時の将軍吉宗が当時、病気や凶作、飢饉で多数の死者が出ていたのを憂い、隅田川の水神祭りで大きな花火を打ち上げ死者の御霊を慰め、悪病退散を祈ったのが始まりだと言われています。
小樽の高島でもコロナ禍前までは花火大会が行われていました。この花火大会では地域の故人を偲ぶ追悼花火が行われ、打ち上げ前には会場での放送で故人のエピソードが紹介され、リクエスト曲をBGMに花火の打ち上げを行っていたようです。

これからご先祖さまが各々の家に帰ってこられるお盆を迎えます。お盆には盆提灯などの灯火がつきものです。それはどうしてか?ご先祖さまはこのような灯火(明かり)を目印に戻ってこられるからです。
お盆にはご先祖さまが好きだったお食事などをご仏壇にお供えし、戻ってこられている大切な故人と共にゆっくりとした時間をお過ごしください。

 

2023-07-21 09:21:00

98.月参りの大切さ


北海道では月参りといって毎月、檀家さんのお宅にお伺いし(事情により中止されている方もおられますが)、ご仏壇の前でお経を唱え、亡くなられた方へのご回向をいたします。
ご仏壇でのご回向を終えた後、檀家さんと色々な話をさせていただきます。
たわいもないような世間話もしますが、その方の趣味や家族の話、昔の思い出話(青春時代の話や戦後食べ物がなく苦労された話など)を聴かせていただくこともあります。誰でも病気になったり、ケガもしますので、そんな話をお伺いすることもよくあります。一人暮らしの方、遠くにお子さんが移り住んでいらっしゃる方などは、今後の自分の身の振り方、いわゆる終活的な話になることもあります。時には仏教や真言宗の教義の話になったり、中には「人間は死んだ後どうなるのかねぇ?」と真剣に尋ねられることもあります。

お昼の番組の司会を30年以上も続けられたタレントの小堺一機さんはNHKの番組で「話を聴くということは感性を分けてもらうことであり、宝物をいただく感じがする。」とおっしゃっていました。
檀家さんと会話をさせていただくことで、新たな発見をしたり、様々な学びもあります。会話とは会って話すということです。会話をするということは言葉というものを使って、互いが知っている情報やそれぞれの思いというものを交換する作業だといえます。会って目と目を合わせ話しをすることにより言葉だけではなく、心というか魂が通じ合うような瞬間を感じることもあります。
檀家さんそれぞれのご仏壇の前で毎月ご回向するということももちろんそうですが、檀家さんとゆっくりと会話をする機会をいただけるという意味でも月参りはとても大切なことだと思っております。

 

2023-07-11 21:50:00

97.ひとつのことばで


NHKのクローズアップ現代という番組で「言葉のリスク」について様々なことが語られていました。
東京医科歯科大学は都内の自治体と共同で小学1年生の子供がいる親3千人への調査を行いました。
親から頻繁に暴言を吐かれるなど不適切な言動をとられた子供は、身体的な暴力を加えられたり、ネグレクト(育児放棄)された場合と同じくらいのダメージを受けながら育っていくとのことです。その結果、集中できない、誰かに対しいじめをするなどの問題行動を起こす傾向がみられたとのことです。
また、親から不適切な言動を与えられ育った子供のみに見られた傾向としては、他人を思いやる、といったような周りを気遣う気持ちが低くなってしまうということが挙げられていました。
子供の成長にとって親からの受ける言葉というものがどれほど大事なものであるか、そして言葉にはもの凄く大きな力があるのだということをこの番組を見て改めて考えさせられました。
詩人であり作家の北原白秋の「ひとつのことば」という詩があります。

ひとつのことばで けんかして 
ひとつのことばで なかなおり
ひとつのことばで 頭が下がり 
ひとつのことばで 心が痛む
ひとつのことばで 楽しく笑い 
ひとつのことばで 泣かされる
ひとつのことばは それぞれに 
ひとつの心をもっている
きれいなことばは きれいな心 
やさしいことばは やさしい心
ひとつのことばを 大切に 
ひとつのことばを 美しく

私達の日常生活においても、言うまでもなく言葉というものは大事なものです。
誰かの言葉一つで、嫌な気分になったり、逆に心が浮き浮きとしたりもします。
その反対に自分が発した言葉で、誰かを傷つけてしまうこともあれば、落ち込んだ誰かを励ましたり、時には勇気を与えることだってできます。
出来うる限り、心が伴ったやさしくきれいな言葉を発していきたいものです。

 

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