一言法話

2023-11-01 21:47:00

106.願いを叶えるために


当院では、毎年11月3日に大般若転読法要を行っています。
真言宗のお寺で行われる法要は、ご先祖様への回向の法要と、様々な願いを仏さまにお届けする祈願の法要があります。
大般若転読法要は祈願の法要です。
コロナ禍の間は、規模を縮小していましたが、今年は以前の形に戻し、僧侶の方々にも十数名参加いただき、盛大に行いたいと思います。
祈願の法要では、檀信徒の方からの願いを書いた添え護摩札を燃やし、その願いを仏さまにお届けする護摩焚きをいたします。
人の願いというものは大小様々ありますが、それらを成就させる(叶える)には何が必要なのでしょうか。
『大日経』というお経の中に『三力偈』というものがあります。

以我功徳力(いがくどきりき)
如来加持力(にょらいかじりき)
及以法界力(ぎゅういほうかいりき)
普供養而住(ふくようにじゅう)

以我功徳力-功徳を得られるような自分自身の努力
如来加持力-如来(仏さま)から与えられるお力
及以法界力-自分を取り巻く環境(縁)
普供養而住-この三つが互いに作用しあい、物事や願いは成就する

願いを叶えるには、その願いを仏さまにお届けするのと同時に、やはり自分自身の努力というものが必要不可欠です。その二つが合わさることにより、自身を取り巻く環境は自然と整ってくるのではないでしょうか。そうしてはじめて私たちの願いは成就するのです。

 

2023-10-16 07:18:00

105.色即是空


暑かった夏もいつの間にか終わりを告げ、朝晩はすっかり寒くなりました。近年の北海道は夏の暑さが長引くようになり、穏やかな秋はあっという間に過ぎ去り、すぐに長い冬を迎えるようになりました。季節の移り変わりは、仏教でいう諸行無常(この世の中のあらゆるものは変化・生滅してとどまらないこと)を私たちに実感させます。

お釈迦さまが説いた教えを弟子たちが伝承し、後に書き記されものがお経ですが、その中で最も有名なものが『般若心経』だといえるでしょう。般若心経は僅か262文字の短いお経ですが、そこには深遠なる仏教の教えが著わされています。この般若心経の中に「色即是空 空即是色」とあります。色(しき)とは、形あるものを表しますが、それらは様々な条件(因や縁)のもとに初めて現象として現れます。つまり永遠に変わらない実体はない、そのことを空(くう)と言うわけです。決まった形として今あるものも条件が変化した時には、その形や現れ方が変わってしまうということです。ですから、春夏秋冬の季節も色即是空だといえます。
しかし、私たちは変わらない実体というものがあるように妄想し、それに固執してしまいがちです。それが様々な執着を生み、その結果、自分自身を苦しめると仏教では説くのです。

ここまで書いてきましたが、これだけでは非常に抽象的でわかりづらかったかと思います。しかし、お大師さまは『般若心経秘鍵』の中で「誦持・講供すれば、則ち苦を抜き楽を与え修習・思惟すれば、則ち道を得、通を起す」とおっしゃっており、般若心経は読み書きするだけでも非常に功徳があるといわれるお経です。
寺茶房では、開店時間内であればいつでも写経ができますし、現在は月に一度、般若心経を中心に読経会(お経を唱える会)を行っています。10月は20日(金)午後1時より行います。どなたでもご参加いただけますので、寺茶房に直接お越しください。

 

2023-10-01 22:11:00

104.団参の意義


9月27日から9月30日までの四日間、当院の檀信徒30名と共に高野山・奈良・京都へ団体参拝に行ってまいりました。お大師さまのご誕生1250年の記念の年に合わせての団参でしたが、テーマは「大人のための修学旅行」。奈良、京都では、東大寺、唐招提寺、東寺といった有名なお寺の他に、新薬師寺、秋篠寺、浄瑠璃寺といった修学旅行の行程には含まれることの少ないお寺にも参拝いたしました。
私自身、高校の修学旅行で東大寺に訪れましたが、その当時に感じた思いとは、当然ですが全く違うものがありました。今回、古くは奈良時代、平安時代に建立され、国宝や重要文化財に指定された建造物の数々、そして計り知れないほどの人々に拝まれ続けてきた仏様を目の当たりにし、感動という一言では表現できない思いの中、帰路につきました。参加された皆様もそれぞれに、様々な思いを抱かれたと思っております。
京都では舞妓さんの可愛らしい舞いを鑑賞したり、嵐山散策をしたりといった大人の楽しみを満喫することもでき、参加された皆様にも大変喜んでいただきました。
参加される皆様に少しでも喜んでいただきたいという思いで、団参を企画するわけですが、団参を組むことの意義はいくつかあると思います。その一つとして、当院をご縁とする方々が一つの団体を組み、各お寺を巡拝し、同じ宿に泊まり、飲食を共にすることにより、互いに親睦を図ることができ、団結感をもって信仰を深めていただくことができるということが挙げられるかと思います。
私自身にとりましても、参加された檀信徒の方々と、いつも以上に語り合える時間を長く過ごすことができ、関係性が深められた気がしております。
これからも団参を企画していきたいと思いますので、その際には興味のある方は是非ご参加下さいますようお願いいたします。

 

2023-09-16 14:16:00

103.おいあくま さあほとけ


早いものでもう少しで秋のお彼岸ですね。お彼岸を迎え、暑さもひと段落となりますでしょうか.
古来より、お彼岸はご先祖様を偲び、いつも以上にご供養に務める期間であると同時に、自分自身の仏道修行期間だと考えられてきました。
仏道修行などというと、自分には関係ないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。仏の教えとは自らの心が生み出す苦しみを取り除き、安楽(安らかで平穏で楽な状態)に生きるための教えです。よほどひねくれた考えの持ち主ではない限り、誰もが安らかで平穏で楽しい生き方を望むでしょう。
そんな生き方のヒントになるのが、「おいあくま」です。これは旧住友銀行の頭取を長年務められた堀田庄三さんが、社員たちへ訓示として発していた言葉の頭文字を並べたものだと言われています。

お―怒るな  い―威張るな  あ―焦るな  く―腐るな  ま―負けるな

「おいあくま」とは、苦しみを生み出してしまう自らの心への自制の呼びかけです。自分勝手な思いで怒ってはいけない。不遜な態度をとらないようにしなくてはいけない。焦りも禁物。簡単に落ち込んだり、挫折したりして、自分に負けていてはいけない。との叱咤激励の言葉だとも言えるでしょう。
さらにもう一つ。「さあほとけ」という言葉もあります。やはり頭文字を並べたもの。

さ―爽やかに  あ―明るく  ほ―ほのぼのと  と―ときめいて  け―謙虚に

「さあほとけ」とは、安らかで楽しく生きるためには、こうあるべきだという、自らの心へ向かっての呼びかけです。
お彼岸がやってきます。「おいあくま さあほとけ」と自身の心に呼びかけてみる一週間にしてみませんか。そのように努力(修行)したならば、自らの心は光を増し、誰もが望むべき安らかで楽しい日々を過ごせるでしょう。

 

2023-09-01 20:24:00

102.檀信徒に支えられて


先日、北海道の真言宗関係の研修会に参加いたしました。講師は、今となっては当たり前に使われている「終活」という言葉を2009年に提唱された葬儀相談員の市川愛さんです。講演の内容は大変興味深いものでありました。
前半は「檀家さんと理解し合うために」というテーマでのお話。後半は「ある寺院の改善事例」というものでした。

市川さんは消費者を対象に終活と葬儀の知識を広める活動を行っており、寺院関係の方からの相談にも応じているとのことでした。
私も檀家さんと理解し合える関係性を築きたいと常日頃願っております。そのためにはどのような努力をするべきか、ということがこの講演の前半のテーマでした。

市川さんのお父さんは奥さんが亡くなられるまで、全く菩提寺との関りを持たない方だったそうです。しかし、奥さんのお通夜、葬儀、四十九日といったお寺との関りの中で心境に変化が起こり、今ではお寺での法要や行事等を楽しみにお寺に通うようになったといいます。
市川さんは日本のお寺が今までこのように続いてきた理由として、このようにおっしゃいました。
「それは大事な方を亡くした檀家さんが、お寺の僧侶の読経や僧侶との会話等のやりとりによって癒しや救いを得ることが出来てきたからだろう」と。
もちろん、お寺の存在意義は、他にも色々あると思いますが、悲しみに暮れる檀家さんにとって、癒しや救いを得ることのできる存在は非常に大事であると思います。お寺がそういった存在となるよう、僧侶としての日頃の行いや努力というものが大切であり、そういった積み重ねが檀家さんと真に理解し合えることに繋がっていくのだと、市川さんのお話をお聞きし深く感じました。

「檀家」という言葉は、古代インドで使われていたサンスクリット語の「ダーナパティー」が語源です。「ダーナパティー」は「寺や僧を援助する者」といった意味を持ちます。お寺にとって檀家さんはお寺を支えていただける大切な存在です。また、他のお寺の檀家さんでありながらも当院にご縁を持たれ、法要時などにお参りされる信徒の方もいらっしゃいます。そういった檀信徒の支えやおかげにより、お寺は成り立っています。
お寺を支えて下さる檀信徒の皆様と理解を深め合い、皆様の癒しや心の支えとなりうるようなお寺を目指したいと強く思います。

 

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