おたより

2022-09-26 12:00:00

「考える脳」

 脳は3階建て

 脳は、大まかに言うと3階建てになっています。1階は、首の後ろの辺りにある脳幹で、「生きるための脳」ともいわれています。呼吸、体温、心臓から血液を送り出す心拍、睡眠、覚醒、食欲など、生存に必要なことをつかさどっている、非常に原始的な脳です。

 2階は、脳のほぼ中心にある偏桃体と呼ばれる部分で、喜怒哀楽などの感情をつかさどっています。心が弾むとか、心が痛むという「心」は、この部分です。五感とひとくちにいっても、脳の部位で視覚、聴覚等いろいろ分担されているわけです。2階部分にある偏桃体は、味や匂いの他、喜怒哀楽などにも関係しているので「感じる脳」と呼ばれています。

 3階部分は、額のあたりで、大脳全体の中で特に人間だけが発達しているという前頭前野や前頭連合野です。この部分は、感情をコントロールしたり、意欲的に物事に取り組む、諦めないで頑張るなどといった非認知能力をつかさどる部分です。論理的に物事を判断したり、想像力を働かせたり、人とコミュニケーションをとったり、思いやりとかおもてなしなど、高次機能の感情をつかさどっています。ここは、「考える脳」といわれます。人間として生きていくためには、この3階部分がとても大切ですが、3階が成り立つためには、1階、2階がしっかりしていなければなりません。

 例えば、睡眠不足であれば、ボーッとしたり、イライラしたりして、「感じる脳」が安定しません。そして、「感じる脳」がうまく働かなければ、気持ちを上手にコントロールできず、イライラが爆発するなど、気持ちのよい生活が送れなくなってしまいます。ですから、まずは、基礎部分の1階をぐらつかせないようにする必要があります。

 

「考える脳」を育むには、あそびが重要

 友達と折り合いをつけて何かをしたり、意欲をもって粘り強く何かに取り組んだりする、いわゆる非認知能力を育てるには、この3階建ての3階部分、「考える脳」を育んでいかなければなりません。それには、何よりもあそびが重要です。

 今までの日本の教育では、暗記したり、与えられた問いに対してきちんと答えを言えたりすることが大事だとされることが多かったのですが、現在は、STEAM教育が重視されるようになってきました。STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を統合的に学習すること。それには、非認知能力や自分で考える力が必要です。

 なぜ、あそびが大切かというと、あそびは子どもたちが自分で考えながらつくっていくからです。例えば、泥団子を作るには白い砂が必要であるとか、ここに川を作ればもっとあそびが楽しくなるのではないかとか、ブランコに10数えるまで乗ったら、待っている子と代わってあげようとか、子ども自身が気づいたり工夫したり、考えたり決めたりしていきます。そのように自分で判断して決めていくということが、学びの土台である探究心だとか、考える力、非認知能力を育むためにとても重要なのです。

 また、運動あそびを専門の先生が来てトレーニングする園よりも、自由あそび中心の園のほうが、運動能力が高くなるというデータもあります。先生が来て子どもたちに跳び箱を跳ばせるといっても、全員に跳び箱があって一斉にできるわけではありません。どうしても、待ち時間のほうが長くなります。その間、座って待って動かないということも多いのです。しかし、自由あそびだと、ある子は砂場に行き、ある子はブランコに乗るというふうに、みんながやりたいことをして、常に動いているし、先生に言われたことをするのではなく、一人ひとりが自分で考えて行動しているからです。

(乳幼児の睡眠と脳科学/鈴木みゆき著 げんきNo.192 より)

2022-07-31 13:21:00

幼保研修【R4.8園だより】

 7月11日から15日まで、年長組では「泊まらない保育週間」と題して、普段できない様々なことに挑戦しました。班ごとの秘密基地づくりから始まり、買い物や、園庭でのカレー作り、マスつかみ、夏祭り(肝だめし、射的、うちわ作り、ワニワニパニック、焼きマシュマロ、焼きそば・お好み焼き屋さん、盆踊り)等、普段できないことを思う存分体験しました。
 また、先日、川島小学校の1年生担任の先生が、幼保体験研修として園で一日過ごし、年長の園での生活を見ていかれました。システムの違うこども園と小学校のギャップをいかに埋めて、うまく橋渡しするか、が現在の課題になっているからです。かつては園が小学校に倣っていましたが、最近では小学校が園での子どもたちの姿を見て参考にするよう変化してきています。今回、先生はわらべうたの課業、クラスでの自由遊び、プール遊び、給食の様子などをじっくりと見られました。そして、本園の卒園生たちがいつも聞く姿勢が出来ている理由や、とても友だち思いで仲間を大切にする理由がよく分かった、小学校の他の先生たちにも保育士の関り方や子どもたちの様子を見てもらいたい、と言われました。改めて私たちの保育教育の方向性を確認する良い機会となりました。

2022-07-25 12:00:00

「なんとかなる!」因子(前向きと楽観)

 〇「なんとかなる」の行動原則・・・ポジティブな言葉を増やす

「なんとかなる」とは、前向きと楽観の因子で、ポジティブになることです。ですから、いかにポジティブな言葉を増やすかです。

〇「なんとかなる」因子とポジティブな声掛け

私は、家族とアメリカで暮らしたことがあります。アメリカでは子どもへの声掛けは、例えば坂道で転んだときには「良い経験をしたね」という意味で「グッジョブ」、野球チームで三振したら監督が「ナイストライだ」と言うなど、ポジティブでした。「何々しては駄目」などとネガティブに言うのではなく、「こういうことができたんだね、よかったね」と前向きにポジティブな言葉遣いをすることで、子どもは失敗を恐れなくなり、前向きと楽観の因子は充実します。保護者や保育者はついついネガティブになりがちかもしれませんが、良い方を見てポジティブになることです。そして「今、目の前の小言を言うのと、言わないで伸び伸びさせるのと、どちらが本当にこの子の幸せのために必要か」と、長期的視点を持つこと。「あれをしてはいけません」「これをしてはいけません」と押さえつけるのではなく、自由に伸び伸び育って「なんとかなる」という感覚を持った子どもに育てる、というビジョンです。(中略)

 先回りについては、その子の将来を考えたら、雨が降りそうなときに「傘を持って行きなさい」とまで言うのではなく、「降りそうだよ」という情報だけを伝えて本人に考えさせる。「坂道だから転ばないように」ではなく「ここは、こういうふうになっているよ」と自分で周りを見させて判断を促す。ずぶぬれになったり転んだりした方が、次から傘を持って行く判断のできる子になります。いつも「はい、傘よ」などと言われていたら、大人になってからが本当に心配です。

 アメリカが全て良いとは言いませんが、子育てにおいて子どもを自立させるという発想はアメリカ人の親の方が強いですね。彼らは自分の子どものことを、自分か死んだ後も生きる大切な他人だと思っています。「獅子が我が子を千尋の谷に落とす」話ではないですが、自分の死後もいきいきと生きてもらうために「自立を促すことこそが、本人のためだ」と考えています。

〇怒りのコントロールを

欧米は子どもに対して怒ったら警察に連れていかれてしまう社会になっているのに、日本は遅れた社会で、まだ子どもへのハラスメントが普通に許されている。これは子どもにストレスを与え、本当によくないことです。ですから怒りの感情はコントロールすべきです。

怒りをコントロールする方法として、「6秒待つ」練習があります(6秒ルール)。怒りの感情は反射的に出るものですが、これを6秒間グッと待って「ああ、自分は怒ってしまったなあ」と鎮めることが必要です。6秒間待つと、冷静に自分を上から俯瞰して見ることができます。これを「メタ認知」といい、その練習をすると怒らなくなります。あるいは瞑想も効果的です。瞑想は1~5分ほど。5分間シーッとしていると、怒りを抑える練習になります。6秒間待つことと瞑想に共通するのは、心を落ち着けることです。怒りっぽかった人が瞑想や座禅をしたら怒らなくなった、という話はよく聞きます。怒りっぽい人は、怒ることは抑えて瞑想してみるとよいでしょう。

(幸福学からみた子どもとの関わり/前野隆司著 げんきNo.191 より)

2022-07-22 12:00:00

重要な非認知能力:「自制心」

 

人生を成功に導くうえで重要だと考えられている非認知能力のひとつは「自制心」です。

「マシュマロ実験」と呼ばれる有名な研究があります。コロンビア大学の心理学者であるミシェル教授は、当時勤務していたスタンフオード大学内の保育園で、186人の4歳児の自制心を次のような方法で計測しました。

まず、子どもにマシュマロを差し出します。次に、「いつ食べてもいいけれども、大人が部屋に戻ってくるまで我慢できればマシュマロを2つ食べられますよ」とだけ伝えて、大人は部屋を退出します(この時点で大人がいつ部屋に戻ってくるかは、子どもにはわかりません)。そして、部屋を出て15分後、大人が戻ってきます。

この結果、186人のうち約3分の1は15分間我慢して2つのマシュマロを手に入れることができましたが、残りの3分の2は我慢できずにマシュマロを食べてしまっていました。その後ミシェル教授は、彼らの人生を追跡して調査を行いました。その結果、彼らが高校生になったときにはかなりの差が生じていることが判明します。

大人が戻ってくるまで我慢して2つのマシュマロを手に入れた子どもは、我慢できずに食べてしまった子どもよりも、SAT(大学進学適性試験)のスコアがずっと高かったのです。

重要な非認知能力:「やり抜く力」

もうひとつの重要な非認知能力として挙げられるのが、「やり扱く力(GRIT)」です。この能力は、ペンシルバニア大学の著名心理学者、ダックワース准教授が「成功を予測できる性質」として発表して以来注目を集めています。ダックワース准教授は、このやり抜く力を「非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」と定義しました。このやり抜く力もまた、「目尊心」を計測したのと同様、調査対象者に12問ほどの質問に答えてもらうことで簡単に数値化できます。陸軍士官学校の訓練に耐え抜くことができる候補生は誰か。英単語の全国スペリングコンテストで最終ラウンドまで残る子どもは誰か。貧困地域に配属された新米教師のうち、学年末にもっとも子どもの学力を上げることができるのは誰か。

それぞれまったく異なる状況で、求められる能力は一見バラバラのようにも思えます。しかし、ダックワース准教授は、「成功する人」を事前にかなり高い精度で予測することができました。「やり抜く力」が高い人は、いずれの状況でも成功する確率が高かったからです。

 

 さらに、ダックワース准教授は、才能とやり抜く力の間には相関関係がないことも明らかにしています。才能があっても「やり抜く力」がないがために、成功に至らない人が少なからずいたのです。      (中室牧子著 『「学力」の経済学』より)

2022-06-30 13:25:00

予測不能な将来を生きる力【R4.7園だより】

 突然の梅雨明けで、一気に真夏がやってきました。外を歩くのもためらわれるほどの高温が続き、熱中症の心配が出てきて、コロナを忘れそうになる状況です。周囲に目を向ければ、ウクライナでの戦争、資源高、円安、物価高騰、電力不足と、私たちは世界の変化に否応なく巻き込まれています。予定調和の時代は遥か彼方へと過ぎ去り、予測が不可能な時代となりました。こうした時代であるからこそ、子どもたちの乳幼児期の過ごし方が重要となってきます。
 先日、汐見稔幸先生の講演を聞いた際、これからの子どもたちに求められる力として4C(① communication-コミュニケーション能力 ② collaboration―協同する力や姿勢 ③ creativity-創造性 ④ critical thinking-批判的思考)が挙げられていました。①~③は納得しますが、④はいかがでしょうか。批判的思考と聞くと、とげとげしく攻撃的なイメージですが、当たり前として受け入れている物事を、一度保留して、「本当にそうなのか?」と自分で考え直すことです。大人は自分の知識や経験を当然のものとして、子どもに押し付けがちです。一方で子どもの世界に対するスタンスは、「どうして?」「なぜ?」に満ちています。未知でこれまでの経験が役に立たない状況に置かれたとき、打つ術が分からず困惑して立ち尽くすのではなく、今の状況はどんな状態なのか、どうしたらここに突破口を見つけられるのか、と立ち向かっていく子どもたちを育てるにはどうしたらよいでしょうか。子どもが元々持つcritical thinkingの萌芽を、大人が「当たり前」でつぶすことなく、一緒になって不思議がって、考えたり調べたりする姿勢が求められます。

 

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