園だより

2022-09-26 15:36:00

脳は3階建て

脳は3階建て

 脳は、大まかに言うと3階建てになっています。1階は、首の後ろの辺りにある脳幹で、「生きるための脳」ともいわれています。呼吸、体温、心臓から血液を送り出す心拍、睡眠、覚醒、食欲など、生存に必要なことをつかさどっている、非常に原始的な脳です。

 2階は、脳のほぼ中心にある偏桃体と呼ばれる部分で、喜怒哀楽などの感情をつかさどっています。心が弾むとか、心が痛むという「心」は、この部分です。五感とひとくちにいっても、脳の部位で視覚、聴覚等いろいろ分担されているわけです。2階部分にある偏桃体は、味や匂いの他、喜怒哀楽などにも関係しているので「感じる脳」と呼ばれています。

 3階部分は、額のあたりで、大脳全体の中で特に人間だけが発達しているという前頭前野や前頭連合野です。この部分は、感情をコントロールしたり、意欲的に物事に取り組む、諦めないで頑張るなどといった非認知能力をつかさどる部分です。論理的に物事を判断したり、想像力を働かせたり、人とコミュニケーションをとったり、思いやりとかおもてなしなど、高次機能の感情をつかさどっています。ここは、「考える脳」といわれます。人間として生きていくためには、この3階部分がとても大切ですが、3階が成り立つためには、1階、2階がしっかりしていなければなりません。

 例えば、睡眠不足であれば、ボーッとしたり、イライラしたりして、「感じる脳」が安定しません。そして、「感じる脳」がうまく働かなければ、気持ちを上手にコントロールできず、イライラが爆発するなど、気持ちのよい生活が送れなくなってしまいます。ですから、まずは、基礎部分の1階をぐらつかせないようにする必要があります。

 

「考える脳」を育むには、あそびが重要

 友達と折り合いをつけて何かをしたり、意欲をもって粘り強く何かに取り組んだりする、いわゆる非認知能力を育てるには、この3階建ての3階部分、「考える脳」を育んでいかなければなりません。それには、何よりもあそびが重要です。

 今までの日本の教育では、暗記したり、与えられた問いに対してきちんと答えを言えたりすることが大事だとされることが多かったのですが、現在は、STEAM教育が重視されるようになってきました。STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を統合的に学習すること。それには、非認知能力や自分で考える力が必要です。

 なぜ、あそびが大切かというと、あそびは子どもたちが自分で考えながらつくっていくからです。例えば、泥団子を作るには白い砂が必要であるとか、ここに川を作ればもっとあそびが楽しくなるのではないかとか、ブランコに10数えるまで乗ったら、待っている子と代わってあげようとか、子ども自身が気づいたり工夫したり、考えたり決めたりしていきます。そのように自分で判断して決めていくということが、学びの土台である探究心だとか、考える力、非認知能力を育むためにとても重要なのです。

 また、運動あそびを専門の先生が来てトレーニングする園よりも、自由あそび中心の園のほうが、運動能力が高くなるというデータもあります。先生が来て子どもたちに跳び箱を跳ばせるといっても、全員に跳び箱があって一斉にできるわけではありません。どうしても、待ち時間のほうが長くなります。その間、座って待って動かないということも多いのです。しかし、自由あそびだと、ある子は砂場に行き、ある子はブランコに乗るというふうに、みんながやりたいことをして、常に動いているし、先生に言われたことをするのではなく、一人ひとりが自分で考えて行動しているからです。

(乳幼児の睡眠と脳科学/鈴木みゆき著 げんきNo.192 より)

 

 

2022-07-25 17:58:00

「何とかなる!」因子(前向きと楽観)

「なんとかなる!」因子(前向きと楽観)

 

〇「なんとかなる」の行動原則・・・ポジティブな言葉を増やす

「なんとかなる」とは、前向きと楽観の因子で、ポジティブになることです。ですから、いかにポジティブな言葉を増やすかです。

〇「なんとかなる」因子とポジティブな声掛け

私は、家族とアメリカで暮らしたことがあります。アメリカでは子どもへの声掛けは、例えば坂道で転んだときには「良い経験をしたね」という意味で「グッジョブ」、野球チームで三振したら監督が「ナイストライだ」と言うなど、ポジティブでした。「何々しては駄目」などとネガティブに言うのではなく、「こういうことができたんだね、よかったね」と前向きにポジティブな言葉遣いをすることで、子どもは失敗を恐れなくなり、前向きと楽観の因子は充実します。保護者や保育者はついついネガティブになりがちかもしれませんが、良い方を見てポジティブになることです。そして「今、目の前の小言を言うのと、言わないで伸び伸びさせるのと、どちらが本当にこの子の幸せのために必要か」と、長期的視点を持つこと。「あれをしてはいけません」「これをしてはいけません」と押さえつけるのではなく、自由に伸び伸び育って「なんとかなる」という感覚を持った子どもに育てる、というビジョンです。(中略)

 先回りについては、その子の将来を考えたら、雨が降りそうなときに「傘を持って行きなさい」とまで言うのではなく、「降りそうだよ」という情報だけを伝えて本人に考えさせる。「坂道だから転ばないように」ではなく「ここは、こういうふうになっているよ」と自分で周りを見させて判断を促す。ずぶぬれになったり転んだりした方が、次から傘を持って行く判断のできる子になります。いつも「はい、傘よ」などと言われていたら、大人になってからが本当に心配です。

 アメリカが全て良いとは言いませんが、子育てにおいて子どもを自立させるという発想はアメリカ人の親の方が強いですね。彼らは自分の子どものことを、自分か死んだ後も生きる大切な他人だと思っています。「獅子が我が子を千尋の谷に落とす」話ではないですが、自分の死後もいきいきと生きてもらうために「自立を促すことこそが、本人のためだ」と考えています。

〇怒りのコントロールを

欧米は子どもに対して怒ったら警察に連れていかれてしまう社会になっているのに、日本は遅れた社会で、まだ子どもへのハラスメントが普通に許されている。これは子どもにストレスを与え、本当によくないことです。ですから怒りの感情はコントロールすべきです。

怒りをコントロールする方法として、「6秒待つ」練習があります(6秒ルール)。怒りの感情は反射的に出るものですが、これを6秒間グッと待って「ああ、自分は怒ってしまったなあ」と鎮めることが必要です。6秒間待つと、冷静に自分を上から俯瞰して見ることができます。これを「メタ認知」といい、その練習をすると怒らなくなります。あるいは瞑想も効果的です。瞑想は1~5分ほど。5分間シーッとしていると、怒りを抑える練習になります。6秒間待つことと瞑想に共通するのは、心を落ち着けることです。怒りっぽかった人が瞑想や座禅をしたら怒らなくなった、という話はよく聞きます。怒りっぽい人は、怒ることは抑えて瞑想してみるとよいでしょう。

 (幸福学からみた子どもとの関わり/前野隆司著 げんきNo.191 より)

 

 

2022-06-24 17:52:00

Q:イヤイヤ期の 3歳の長男に ついいら立って しまいます

Q:イヤイヤ期の 3歳の長男に ついいら立って しまいます 

A:子どもの「わがまま」にユーモアで応じるゆとりを

 

2-3歳児の「第一反抗期」に悩むママからの相談です。

本当は子どもは子ども同士で遊ばせるのがいちばん好ましい。お母さん 1人でなんとかしようとするのは大変。子どものエネルギーに太刀打ちできないでしょう。私が保育士の仕事をしていたころは、うちの子は近所の仲間と外で遊び回っていた。今は遊び回っている子どもたちが見られなくて寂しい。そういうわけにいかないのが残念。大人がなるべく関与しないで子ども同士で遊べる環境が必要なのに。

子育てを始めてまだ3年ぐらいのお母さんに、戸惑うことはあってあたり前でしょう。迷ったりイライラしたり、ぶつかったりしながら成長していくのですから。楽しむくらいのゆとりを持ってください。

子どもと向き合おうと頑張るがゆえに、まっすぐすぎる人もいます。もちろん、子どもの言葉に耳を傾けるのは大事ですが、子どもと接するには ユーモアが必要。ユーモアがないと、とても付き合いきれません。あまり腹が立ったら、育児ノートを作って腹の立ったすべてをメモしておいて、20年後に読み返してごらんなさい。 あのころはかわいかったとホロリとするでしょう。

「『毎日、違うお洋服を着てきなさい』と先生に言われた」とお母さんに 言った子がいました。そんなこと、私が言うはずないじゃない(笑)。もし、私がお母さんだったら、「それは困った。あなたのだけでは足りないから、お母さんのお洋服を着ていいわよ」とか、「1年分365枚のお洋服の絵を描いてみたら?」とか提案するわね。案外、それがきっかけで有望なファッションモデルやデザイナーになるかもしれないでしょ。

大真面目で考えてきちんとした「大人の言葉で返す」のも1つの手ね。 「こっちに来ないで!」と言われたら、「はい、行きませんよ」と言えばいい。でも場合によっては、「あなたはそう言うけどね、私は親なのだから何かあったときに子どもを守らないといけない。放っておくわけにはいかないのよ」と説明する。訳がわかろうがわかるまいが、子どもは大人扱いされると認められたとうれしくなるのです。

(ママ、もっと自信をもって/中川李枝子[ぐりとぐらの作者]より)

2022-05-27 15:50:00

Q:「保育園に預けるのはかわいそう」と母に言われたら?

Q:「保育園に預けるのはかわいそう」と母に言われたら?

A:母親になっても、 1人の人間として選択すればいい 

 

-出産後も仕事を続けたいけれど…と不安を感じている方からの質問です。 

「そういう意見もあるんだ」と聞き流しておけばいい

 最近は働く女性が増えていますが、親の世代はまだ母親は専業主婦だった家庭が多いと思います。「女性は家庭に入るべき」という考えを持っている親も少なくないのではないでしようか? 

 私は働くことを選択しましたが、外で働くお母さんと、家庭にいるお母さんとどっちがよい、悪いでない。本人がしたいようにすればいい。母親も人間です。自分の考えに従い、1人の人間として、選択すればいい。

 今は情報が多くて、いろいろな人がいろいろなことを言う。子どもを産む前から身構えてしまう人も多い。上の世代の人には経験者の一家言ある。 納得がいかなかったら、「そういう考えもある」と聞き流しておけばいいの(笑)。 都合のいい意見だけ自分の耳に入れていました(笑)。 

 それに、専業主婦のお母さん全員が、24時間子どもと一緒にいるわけではないでしょう。24時間母と子がべったり過ごすのが100パーセントよいとは思わない。子育てに、「こうしたからこうなった」なんていうはっきりした因果関係はないでしょう。 

 

ー働く女性の先輩として、中川さんが子育てで気をつけていたことを聞かせてください。

 子どもを丈夫にするには親も健康じゃないと 

「子どもの体を丈夫にしておくこと」。子どもの体調が悪いときはそばにいてあげないとかわいそう。 子育てで大事なのは、「睡眠」「食事」「排せつ」。この3つを厳守、最優先。何があってもリズムを崩さないこと。基本的なことだからこそ、子どもの健康に影響します。気をつけるのは子どもの健康だけじゃない。自分の健康も大切。

 丈夫な子どもにするためには、 親も健康じゃないといけませんから。どちらかに無理がかからないよう、 夫婦で協力しあうこと。3人それぞれの生活リズムをお互いに守り、不協和音を起こさないよう心がけました。

 家事において私が全責任を担っていたのは、食事でした。その他は、夫(美術家の中川宗弥氏)も掃除、洗濯などをやってくれました。おむつ替えは夫の方が上手だったぐらい(笑)。子育ては男性も一緒にするものでしょう。

 結婚を機に、住居は職場(みどり保育園)の近くに決めて、夫も自分の 仕事部屋を見つけました。仕事と家事の両立は夫婦でよく考えて、うまくやっていましたよ。2人で協力しながら、家族にとって最善の方法を取るべきでしょう。それは子育てにも通じます。

(ママ、もっと自信をもって/中川李枝子[ぐりとぐらの著者]より)

 

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