大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
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「アオイ、その顔、何があったの?」
「いやぁー、たいしたことじゃないんだけど、一人師匠ができた。功夫の達人!」
「ふーん、たいしたことないなら別にいいけど。じゃあ、行きましょうか。」
「あのさオウリン、俺ちょっと成都に行くのは延期して、深圳に少し滞在しなくちゃいけなくなったんだ。どこかいい宿しらないかな。できれば安めでお願いしたいんだけど。」
「えっ、急にどうしたのよ。私友達の働いてるホテルに泊まるんだけどそこでよかったら紹介するけど。深圳に何か用事ができたの。」
「うん、こんなこと言ったらまた驚かせちゃうかもしれないんだけど、昨日あの後、いろいろ考え事していて、四川で探すはずだった人のこと思い浮かべて、助けを求めようとしたら、その人の思いが伝わってきて、『深圳にいる、助けて』って。だからその人を探そうと思って。」
「えーーーーー。あなた・・・・まあ、でも昨日のこともあるし、驚いているけど慌てないわよ。よくわからないことだらけだけど、あなたが嘘をついているとも思えないしね。でっ、深圳のどこにいるって?」
「それは・・・まだ、ちょっとーー、わかりません。とりあえず行ってみてから考えるよ。」
「はぁ、あなた楽天的なのね、まあ、幽霊見たり、テレパシーができて落ち着いていられる当たり、普通じゃないのはわかっていたけど。うん、そうね、あなたみたいに楽天的な性格じゃないとやっていけないわね。そうはいっても『助けて!』ってだれかに狙われてるってことでしょ?あなたほんとに何者なの?っていうか私は一緒にいて大丈夫なのかしら・・・あーーーでもなんかほおっては置けないのよねー。もうやんなっちゃうこんな性格。もういい、わかった。行きましょう。」そう言うとすたすた先に歩いて行ってしまった。それを怒られた弟のように荷物を持ってついていく。
ローウーに行くにはここイーストチムサーチョイ駅から九廣鉄路(KCR)で40分ぐらい。15日間までならビザがいらないので特に何も準備はいらない。ローウーに着いたら歩いて国境を渡る。出国カードに書く滞在先はオウリンに書いてもらおう。香港にサヨナラか。でも近いうちに帰って来よう。バイロンにも話をしたいし、白狼老師にも教えを請いたい。ホウウン、ジンリー、ズーウェイ、みんないい人たちだ。みんなにまた会いたいな。でも今は前を向かなきゃな。さあここから戦いが始まるんだ。
待ってろ紅美!今助けに行くよ!
ラーメンダイバー シーズン1 ダイバーの鼓動 完
次号 シーズン2 ダイバーの血統 始まるよ
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翌朝、気が付くとあのまま眠ってしまったようで、ダイバースーツを握りしめていた。べたべたした体をシャワーですっきりさせると、なんだか気分もすっきりした。まだ6時、オウリンが来るまで、まだ時間がある。散歩でもしようかと、ちょっと外へ出てみると、近くの公園で太極拳をやっている人たちがいた。最近、鬼教官がいないのもあって運動不足なので、ちょっと体を動かそうと思い近くに行ってまねしてみた。ゆったりした動きで簡単そうに見えてこれが難しい。体重移動、というか重心を移動するというか。伸び上がり、踏み込み、呼吸、同時に行うのは達人級だな。紅美に習っている動きと似ているがちょっとちがうかな。でもこの動きを取り入れたらもっと強くなれるのかな。ちょっと復習で紅美に習っている型をやってみた。するとそれを見ていたおじいさんが
「それは、八極拳だな。あんたどこでそれを身に着けた。」
「ああ、四川省の友人に・・・よくわかりますね。おじいさんも功夫を?」
「詠春拳だよ。李小龍もやっていた。あと太極拳もね。」
「李って。ブルース・リーのこと?あれってジークンドウっていうのじゃないの?」
「ああそれは小龍が作ったもので、もともと詠春拳を習っていたんだよ。」
「八極拳は剛の拳だ。柔の太極拳を学び取り入れるといい。ほら構えてごらん。」そういうと俺の前に立った。
「打ってきなさい」
「えっ!いきなりそんな、おじいさん、いくら何でも・・・」
「いいから早く来んか?」
それじゃあと、八極拳の神髄、八極まで打ち抜く肘打ちを入れようと踏み込んだ。するとおじいさんに絡み取られるように威力を受け流される。何が起こっているのかよくわからないうちに、その場に寝ていた。青空が見える。呆気に取られていると、おじいさんが、
「どうじゃ、これが太極拳じゃ。直線的な突きを円の動きで無力化する。そして螺旋の道理により相手を打つ・・・」と言ってとどめの掌底を打とうとしたので
「まいった、まいった、ストップ!請停手!(やめてー)・・・すごいね『老師』(先生) 」
「ははは、どうじゃ、じじーもやるじゃろ。まあ、小人(子供)の突きもまあまあだったが、わしには効かんよ。どうじゃ教えてほしいか?」
「教えてほしいけど、今日深圳に行かなくてはならなくて。残念だけど・・・人を探さなくちゃならなくて。」
「そうか、しかしきっとお前にはそのうち必要な時が来るじゃろうて、その時までにまた来い。わしのことはこのあたりのものに『白狼』と聞けばわかるじゃろうから。探してみろ。おまえの後ろにただならぬものを感じて声をかけてみたが、まだその時ではなさそうじゃの。」
「えっ!なんかわからないけど、ありがとう。白狼じいさん。必ず来るよ。じゃあまた」
そう言って公園を後にした。
ホテルに帰るともうオウリンが来ていた。急いで支度をしチェックアウトをする。さっきの一戦でできた顔の傷を見てオウリンが心配そうに聞いてきた。
dive29に続く・・・
dive27
皆それぞれ思うところがあるのだろう。そのあとの会話はとぎれとぎれだった。バイロンに礼を言い、皆と連絡先を交換し店を後にした。重苦しい雰囲気のまま車に乗るとリーダーらしくホウウンが口を開いた。
「俺たちを通じてバイフォンがアオイをバイロンにあわせたかったんだな。今はあまり聞かないけど話せること・・・俺たちで協力できることがあったらいつでも言ってくれ。香港のことなら俺たちに任せろ。」
「ありがとう、ホウウン、何かあったら必ず連絡するよ。」
ホテルに着くとオウリンが
「じゃあ明日10時ぐらいに迎えに来るわ。寝坊しないでよ!」と無理に笑いながら言った。
「うん。わかった。ジンリー、ズーウェイも今日はありがとう。とても楽しかったよ。香港はとてもいいところだね。君たちがいるから。じゃあ、また。再見(ツァイチェン)」
空元気で手を振って見送り部屋に戻るとどっと疲れの大波が押し寄せる。おいおいおい、まだ初日だぞ。ジミーに相談したいが何をどこから説明していいか、文章にすることも難しいのであきらめた。こんなこと相談されてもなぁ。一人の部屋であれこれと思案するが今の俺の力でできることなど何もないのだということを痛感する以外の答えは出てこない。友達を作るというのは楽しいこともともにできるが、厄介事も一緒に背負うということなんだなぁと改めて思い、背負えないのならばせめて寄り添えるぐらいの覚悟を持とうとひとりベッドに座って香港の夜景に目を向ける。しかしこの街に何人の被害者がいるのだろうか?考えたこともなかったが今までに何人の人たちが犠牲になっていたのだろうか。夜景の先に広がる暗い海の向こうに得体のしれない闇がこちらをうかがいながら霧のようにゆっくりと、そしてまるで植物が根を伸ばすようにじわじわ着実に近づいてきているのを感じた。そしてそれを感じさせないように照らす無数の電飾がかえって不気味さすら覚えさせる。紅美たちはこれを知ったうえでずっと暮らしていたのだろうか?戦おうにも自分たちの力ではあの石を手にすることがかなわないことを知っているジレンマを抱えながら一族で俺の様な者が現れるまでずっと備えてきたのだろうと思うと、追い打ちをかけるように責任が背中に重くのしかかる。耐え切れずにクローゼットにおいてあるダイバースーツの入っているケースを開けもう一人の自分にすがるように手をやる。会社で聞いた社長たちの会話を思い出し、もしもあの村の人たちや寺の人たちがやられてしまったらと最悪のことばかりが頭の中を支配していく。そうなれば俺は一人で戦うのか?巨大な組織と。息の詰まる思いでうつむき両手で頭を抱えようとしたとき思わず手のひらを見た。両の手の十字の加護印に何かを感じ、目を閉じて手を合わせ先祖たちへの祈りにも似た救いを求めた。なぜだか心が穏やかになってゆく。少し落ち着いてくると紅美たちのことを考えた。どこにいるんだ紅美、無事なんだろうか、みんなに会えたんだろうか・・・紅美・・・
「アオイ・・・アオイなの・・今どこ?・・助けてアオイ・・私は今、深圳にいる・・お願い早く来て・・・」
どういうことだ、俺の思いが届いたのか?加護印が熱い。なんだよ!助けてって何があったんだよ。びっくりしてドキドキしながらもう一度手を合わせて念じてみるが答えは返ってこなかった。深圳と言っていた。四川に行く前に深圳で紅美を探さなくちゃ。先ほどまで感じていた恐怖を、この先にある大きな恐怖を直近の紅美を助けるということで上書きして忘れていくようだった。
dive28に続く・・・
dive26
涙ぐむバイロン、あたりを見回すホウウン。バイフォンのことを思い泣くジンリーとズーウェイ、ビール片手にうつむくオウリン。しんとした部屋の片隅に彼女が置き忘れた思いがそこにあるように俺もくうを見つめ考える。どこまで話していいものか、そして彼女もどこかでその黒い石を口にしたのか、黒い思いを受けたのか。知らない間にどんどん広がっている黒い組織に対抗する手段がこんなに力ない俺一人だなんて、俺が行く先々で先祖たちがくれた力が彼女のような人々の思いにこたえ、俺に伝えようと引き寄せているのだろうと思うとその人たちに会うたびに背負っていくであろう人の思いを今しみじみと感じ、その重さにこの先の戦いの深刻さを感じて逃げ場のないことを確認する。そして早く紅美や村長たちを探し、寺に行かなくてはと思い直す。
「アオイ、バイフォンの病は人為的なものなのか?君は『戦う』と言っていたがその者たちがバイフォンを殺したということなのか?しかし、何の恨みがあってあいつを殺したんだ。あいつは人一倍優しい子だった。争いを嫌い、穏やかで点心を作るのが大好きで・・・なあ、なんであいつが狙われたんだ。」
「それは、俺にもわからない。俺の妹もどこでそれを口にしたのかわからない。だがおそらく優しいものほど影響を受けやすいのではないかと・・」
「口にした?食べたってことか?いったい何を食べたらそんなことになるんだ。しかし毒なら検査すればわかるだろう。なあ、アオイ知っているなら教えてくれ。もしもこんなことを止めることができるなら俺も一緒におまえと・・・バイフォンのような悲しい思いはもうたくさんだ。」
「バイロン、君の気持はよくわかるし、俺にとってもありがたいことだけれど、正直、俺一人で決めていいものなのか、さっきからどこまで君たちに話せばいいのか迷っている。話せば確実に巻き込まれるだろう。そりゃあ、どこかでほかのみんなの関係者が被害にあわないとも限らないが・・・相手は平気で殺しに来るような連中だ。」
「じゃあ、君はそいつらをこのままほおっておけというのか?俺は妹を失った。もう関係者だ。聞かないままお前を返すわけにいかない。アオイ、さあ、話してくれ。」
「他の皆も聞けば巻き込まれる。バイロン、今は待ってくれ。バイフォンと先祖たちのこの力が俺を君のところに運んだんだ、いずれ君にも協力してもらわなくてはならないのだろう。だが今は少し時間をくれ。俺にこの力をくれたも人たちが行方不明で安否もさだかでないんだ。そして俺にもまだよくわからないこの力について、ある場所に行かなくてはならないんだ。必ず戻ってくるからその時まで待っていてくれないか。」
バイロンも少し落ち着いてきたようで俺の話を聞いて皆のこと心配そうに見まわし深呼吸をして椅子に座った。皆の張りつめていた空気もバイロンが座ったことで少しづつ解けていったようだ。ジンリーが気を利かせお茶を淹れだした。発酵茶の甘い香りが立ち始めほっとした。広東省の烏龍茶、鳳凰水仙であろうか、紅茶のような香りに先ほどのバイフォンの面影が重なる。
「このお茶バイフォンが大好きだったの、自分の名前と同じ鳳凰の冠を持つこのお茶と自分の作った点心をみんなにふるまっていたわ。彼女の点心は繊細で優しい感じのものが多かった。このお茶を飲むと彼女の点心が恋しいわ。」そう語りかけながらジンリーが皆にお茶を配る。一口飲むとオウリンが、
「アオイ、深圳に行くと言っていたけどそこに何かあるの?私でわかるなら案内するわよ。」
「いやそこから四川、成都に行くつもりなんだ。」
dive27に続く・・・
dive25
「アオイ、アオイ・・・」
なんだか遠くから誰かが呼んでいるような気がしたその時、バイロンの後からこっちを見ているうすぼんやりした女の人がいるのに気付いた。優しい感じがバイロンによく似ている。バイロンがみんなと話しているのを気にしながらその女の人のほうを見ると目が合った。一瞬でその人が俺の方に近づき俺の中に入ってくる。まるで霧のように一瞬目の前が真っ白にかすむ。びっくりするのと同時に手がどんどん熱くなってくるのを感じる。面食らっている俺に追い打ちをかけるように映像が飛び込んでくる。それは若い数人の男女の楽しそうに笑っている姿だった。なんだこれ・・・この人たちは・・・ああそうかホウウンやバイロンたちの若い時か?ん!あれさっきの女の人も一緒にいる・・ オウリンもズーウェイもジンリーもいてみんな同じ店の制服を着てるのかなー・・・さっきの女の人は・・とその女の人に集中しているとまるでその人のアルバムを開くように過去の姿が見えてくる。これは・・ああ、どんどんさかのぼっていく・・幼いころの二人が見えてきた・・ああそうかこれはバイロンとこのひとの・・兄弟なのか・・それが分かった瞬間、今度は現在に近くなってくる。どんどん映像が・・・というかこの人の記憶が流れてくる。あれ、ここは病院か・・なんだ・・みんな・・医者たちが悩んでいる・・・あれこの風景どこかで見たような・・この人目を覚まさない・・・ねえ・・ちょっと待って。なあ、おいサクラ、サクラ・・・そうだ病院にいたサクラにそっくりだ。おいおい、どうなってんだよこれ・・・なあ君の名は・・名前を教えてくれ、君は今どこにいる・・・すぐに行くから・・今すぐ行くから…そう叫んだとき心の中で声がした。
『白鳳(バイフォン)・・・・』
すぐに助けに行くから待ってろバイフォン!そう心の中で叫んだ瞬間、元の世界に戻った。
気付くと皆が黙ってこっちを見ている。(えっ!みんなどうしたの?)と思いみんなの方をうかがっていると
「アオイ、お前今『バイフォン』って言ったのか?なぜおまえが知っている。お前何者だ?どうしてお前が俺の妹を知っているんだ?」慌てたバイロンが俺につかみかかって聞いてくる。さっきまでの優しそうな彼とはまるで違う鬼気迫る感じだ。
「そうだアオイ、お前はたまたま飛行機でオウリンに会い、たまたま飲茶屋で俺と会いここに来たはず。なんであったこともない『バイフォン』のことを知っているんだ」ホウウンも動揺している。ズーウェイやジーリンに至っては気味悪がってさっきまでの楽しい宴会が一瞬にして修羅場と化した。
「ちょっと待ってくれ、落ち着いて聞いてくれ、まず、俺は本当にたまたま君たちに会っただけだ。本当だ。信じてくれ。それから聞きたいことが一つ、その『バイフォン』さんは今どこの病院にいるんだ?急がないと・・・」
そう聞いたが誰も何も答えなかった。しばらく沈黙を保っていたがらちが明かないとオウリンが話し出した。
「彼女は2年前に亡くなったわ。そうあなたの言う通り病院でね。原因がわからない病気で‥‥いつもこの6人は一緒だったの。仲のいい2組の兄弟と一人っ子の私とジーリン。でもある時あの子が突然倒れて、少しづつ弱っていってそのまま・・・」
「そうだったのか。なんで俺に知らせてきたのかこれでわかったよ。これは彼女と俺の運命が引き合わせたんだな。言っても信じてもらえないかもしれないけど、俺の妹も同じ病気だった。だがあることをきっかけに治療法を手に入れて今は元気にしている。なんてことだ。俺の研究と修業がもう少し早かったら・・・すまない詳しいことは訳があって今は言えないが、俺はその病気の元と戦うために明日中国本土に行くんだ。それとバイロン、バイフォンがさっき君のことを心配そうに見ていた。そしてみんなのことを俺に教えてくれたんだ。」
「バイフォンが?・・・・ここにいたのか?・・・お前に見えたのか?心配そうにか?俺を見て・・・・そうか・・そうか・・」
dive26に続く・・・

