大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-07-04 22:00:00

dive27

皆それぞれ思うところがあるのだろう。そのあとの会話はとぎれとぎれだった。バイロンに礼を言い、皆と連絡先を交換し店を後にした。重苦しい雰囲気のまま車に乗るとリーダーらしくホウウンが口を開いた。

「俺たちを通じてバイフォンがアオイをバイロンにあわせたかったんだな。今はあまり聞かないけど話せること・・・俺たちで協力できることがあったらいつでも言ってくれ。香港のことなら俺たちに任せろ。」

「ありがとう、ホウウン、何かあったら必ず連絡するよ。」

ホテルに着くとオウリンが

「じゃあ明日10時ぐらいに迎えに来るわ。寝坊しないでよ!」と無理に笑いながら言った。

「うん。わかった。ジンリー、ズーウェイも今日はありがとう。とても楽しかったよ。香港はとてもいいところだね。君たちがいるから。じゃあ、また。再見(ツァイチェン)」

空元気で手を振って見送り部屋に戻るとどっと疲れの大波が押し寄せる。おいおいおい、まだ初日だぞ。ジミーに相談したいが何をどこから説明していいか、文章にすることも難しいのであきらめた。こんなこと相談されてもなぁ。一人の部屋であれこれと思案するが今の俺の力でできることなど何もないのだということを痛感する以外の答えは出てこない。友達を作るというのは楽しいこともともにできるが、厄介事も一緒に背負うということなんだなぁと改めて思い、背負えないのならばせめて寄り添えるぐらいの覚悟を持とうとひとりベッドに座って香港の夜景に目を向ける。しかしこの街に何人の被害者がいるのだろうか?考えたこともなかったが今までに何人の人たちが犠牲になっていたのだろうか。夜景の先に広がる暗い海の向こうに得体のしれない闇がこちらをうかがいながら霧のようにゆっくりと、そしてまるで植物が根を伸ばすようにじわじわ着実に近づいてきているのを感じた。そしてそれを感じさせないように照らす無数の電飾がかえって不気味さすら覚えさせる。紅美たちはこれを知ったうえでずっと暮らしていたのだろうか?戦おうにも自分たちの力ではあの石を手にすることがかなわないことを知っているジレンマを抱えながら一族で俺の様な者が現れるまでずっと備えてきたのだろうと思うと、追い打ちをかけるように責任が背中に重くのしかかる。耐え切れずにクローゼットにおいてあるダイバースーツの入っているケースを開けもう一人の自分にすがるように手をやる。会社で聞いた社長たちの会話を思い出し、もしもあの村の人たちや寺の人たちがやられてしまったらと最悪のことばかりが頭の中を支配していく。そうなれば俺は一人で戦うのか?巨大な組織と。息の詰まる思いでうつむき両手で頭を抱えようとしたとき思わず手のひらを見た。両の手の十字の加護印に何かを感じ、目を閉じて手を合わせ先祖たちへの祈りにも似た救いを求めた。なぜだか心が穏やかになってゆく。少し落ち着いてくると紅美たちのことを考えた。どこにいるんだ紅美、無事なんだろうか、みんなに会えたんだろうか・・・紅美・・・

「アオイ・・・アオイなの・・今どこ?・・助けてアオイ・・私は今、深圳にいる・・お願い早く来て・・・」

どういうことだ、俺の思いが届いたのか?加護印が熱い。なんだよ!助けてって何があったんだよ。びっくりしてドキドキしながらもう一度手を合わせて念じてみるが答えは返ってこなかった。深圳と言っていた。四川に行く前に深圳で紅美を探さなくちゃ。先ほどまで感じていた恐怖を、この先にある大きな恐怖を直近の紅美を助けるということで上書きして忘れていくようだった。

dive28に続く・・・

 

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